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一章四話

001-004.


いざ対戦となると心がザワザワする、その最大の原因が対戦相手のワシザキさんの容姿が、某ギャンブル漫画の登場人物っぽいからだ、一応美形ではあるがアゴと鼻が尖ってからで少し身構えてしまうが、見た目よりは中身は害がない様だ、ただ、中々のお喋りの人の様で、私達が歴史を学びたいと言うとゲームそっちのけで語り始めた。


そんなワシザキさんを制する人が現れる、例のミヤモトさんだ。


「今日は勝負の為に集まったはずだ、お喋りはそれぐらいにしてとっとと始めようぜ」


まさかとは思ったがやっぱりミヤモトさんは私達の事よりもゲームがしたいらしい、紹介する口実でこのゲームに誘って来た彼だが、その様子は単純にゲームを楽しんでいた、そして、今の言動、少々腹が立ったが私も今ので腹が決まった、今まで散々ボコられた復讐をこの場で果たすのだ。


参加人数五人のゲームが今幕を開けた。


開始早々、マナミさんも私と同じ意図を持っている事が分かる、ミヤモトさんに対する攻めがやたらと厳しいのだ、だが、私も負けてはいない執拗にミヤモトさんを追い詰めて凹ませていく、結果的に今回の勝負はミナコさんの勝利に終わりミヤモトさんが断トツで最下位だ、私達は復讐を果たし次からは普通に楽しんだ。


明けて次の日、今日の試合にはミナコさんとミヤモトさんが参加するので闘技場に向かう、ワシザキさんは遊び相手が居ないので書庫に籠り文献の翻訳に励むらしい、だが、私達への協力は約束してくれて、神話を翻訳した文書を貸してくれた。


翌日、私とマナミさんはミナコさんのお供で闘技場に向かい、闘技用幻体を作る作業の参考にする。


闘いは序盤からかなり白熱した物が続いている、命の危険の無い闘いは無茶無謀がまかり通りかなり派手な闘いが多い、また、見た目と強さが一致していない事も多く、巨大なドラゴンが犬に噛まれて敗北する馬鹿げた試合もあったが、ここの人間は慣れたもので賭けでは犬の方が人気があった。


そんなこんなで試合は進み、ミヤモトさんの出番となった、彼の幻体は二刀流の剣豪で苗字が同じなのでよく調べていたからイメージしやすいからだと言っていた、対するは鎧を纏った女騎士、派手な羽根飾りの兜と長槍を持っているのでヴァルキリーなのかも知れない、こちらは幻体師自体も女性なので参考になりそうだ。


試合開始直後から、長槍のレンジを保つヴァルキリーに対して、流石の剣豪も押され気味だ、幾ら文献などで調べては見ても今の人間は実際の剣豪の闘い方など誰も見た事ないので全てはイメージの及ぶ範囲の物になるのだろう。


対してヴァルキリーは違う、人間技ではとても不可能な速度で何度も突きを繰り出し会場を沸かせている、だが、見た目程の威力は無い様で剣豪に深いダメージを与えている感じは無い。


そんな状況に苛立ちを覚えていたのだろう、一際深い突きが繰り出されると剣豪は大きく飛び退く、そして、その瞬間、私は高速の突きの正体らしき物に気が付いた。


歴史小説で槍の突きには虚と実があり、実を見極める事が重要だという記述が有ったが、あの高速の突きは全てが虚実なのだ、深く突き出した穂先に届かぬ位置で突きが繰り出されているから間違い無い、あの技は幻影との複合技で攻撃自体はそれ程の数を繰り出している訳では無さそうだ。


私はその正体に気付けたが、実際に正面から受けている者は違うのだろう、正面からでは突きの長短など解り難くミヤモトさんの苦戦は続く。


そして剣豪は諦めた様に両手の刀を投げ捨てると今度はその手に舟の櫂を出現させる、巌流島のアレであるが、考え方は正しいと思う二刀流のままでは相手に届かず全く有効打を放っていないからだ。


大振りを警戒して槍を立てたヴァルキリーに対して、剣豪は予想外の攻撃を繰り出す、なんと櫂を突き出して来たのだ。


これに意表を突かれたヴァルキリーは鎧で弾く事を選択して正面からから受ける、だが、これが間違いだった、鎧に当たって櫂の先端が砕けたのに、鎧を突き破って背中から穂先が突き出る、なんと、あの櫂の先端には槍の穂先が仕込んであったのだ。


そんなの有りかよとは思うが、幻術で穂先をカモフラージュしていた相手に対してはどっちもどっちの様な気がする、そして、私は理解する、こういう騙し合いが幻体闘技の真髄だと。


勝敗はその一撃で決した様だった、幻体なので痛みは無い筈だが、一杯喰わされたダメージは大きかったらしくヴァルキリーの幻体はその姿を消失させてしまう、そして、ミヤモトさんの勝利が確定し、したり顔で戻ってくる。


「卑怯者め」


ミヤモトさんに対しては、だんだん容赦が無くなってきた私である。


「そこはキスで迎えてくれるのが礼儀だろ、何せ俺は華麗な逆転劇を演じたヒーローなんだぜ」


「あんなセコイ事する人はヒーローになんてなれません、奴らはもっと脳筋です、そして、全身タイツ着用です」


「それはアメリカ人の話だろうが」


「けど、卑怯な手を使わないのは万国共通だと思いますけど」


「まぁ、ヒーローは諦めて勝者って事で良いよ」


「卑怯な勝者ですね」


「それは相手も似た様な者だろ」


「対戦相手は関係ありません、貴方が卑怯な事には変わりありませんから・・・・・・不毛ですね」


「確かに、でも、参考にはなっただろ」


「そこはありがとうございます、どんな相手でも舐めてかかるなって事ですね」


「ああ、それで十分だ」


話がひと段落ついたところでミナコさんが立ち上がる。


「さぁ、次は私の番です、大怪獣バトルになりますよ」


そう言って彼女は観覧席を後にする。



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