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一章三話

001-003.


ここに来てまだ一週間も経っていないが相部屋のミナコさんのお陰で色々とこの世界の事が解ってくる、この世界の人間に課せられた指名は女神を楽しませる事らしく、奇抜な事をする人間程評価されているらしい。


その代表例が幻体師で実際変わり者揃いだ、それは幻体にも現れおり奇抜な物が多く、カンベさんのマッチョなんかは大人しい部類に入る、対照的に人間的には普通っぽくおとなしそうなミナコさんの幻体は羽根の生えたタコバージョンのクトゥルフで幻体闘技で圧倒的な戦績を誇っているが実は未だランクは低いままだ。


何故ミナコさんのランクが低いかというとDランクへの昇格条件は幻体の維持力が要求されている為である、幾ら強力な幻体を有していても持続時間が短くては冒険者としては不十分とされる為、未だに寄宿舎暮らしが続いているらしい、最も女神はそんなミナコさんを評価しているらしく専用個室暮らしなども許してはいるらしいが彼女の方からそれを断っているらしい。


寄宿舎での暮らしに慣れそれなりに楽しいのだが、外の世界にも興味が出てくる、ミナコの話によると、この世界は俗に言うファンタジー世界、基本的には中世ヨーロッパの様な社会だが人類の明確な敵である混沌勢というものが存在しておりこれを討伐する事が冒険者の主な仕事らしい、それって只の傭兵じゃねとは思うが、お宝一杯のダンジョンなども点在しており探索稼業を重視する者も多い、お宝アイテムの中には元世界へのチート転生券が有るという噂もあり、それを狙っている者は探索に精を出しているという事だ。


だが冒険者稼業には危険も多いので、冒険を諦めて街に住み着いて幻体闘技だけで生計を立てているもの居るが生活は苦しいらしい、ミナコさん曰くランクをDに上げてしまうと寄宿舎に居られなくなるので安易に上げなくとも良いとの話だが、みんな外の世界に希望を抱いてランクを上げて出て行ってしまうらしい。


そんなミナコさんお勧めの方法はEランクのまま幻体闘技で名前を売って、自分に会う優秀なパーティーのスカウトを待つという方法だ。


実は幻体は複数持つ事が可能で持続力の短い幻体を昇格試験で使って居れば、寄宿舎に留まる事が可能なのだ、そして、冒険に適した幻体を複数具現化出来る様になってから冒険に出るなり闘技で稼ぐなりの選択をすれば良いとの事だ。


だが、それには高い難題もある、食と住は保障されているものの支給された衣服以外は自分で調達する必要がある、ミナコさんの様に幻体闘技でガッポリ稼げれば問題無いのだが、ここに来たばっかりの人間ではそう上手くいかない、自分より先輩で長く幻体を使ってきた人間が大多数の存在する中で闘技に参加する事も結構難しく、稼げない。


だが、幸い幻体師の冒険者需要は高く、文字通りの裸一貫のまま衣食住と引き換えに寄宿舎を後にするのだ。


ミナコさんを相棒に出来た自分は幸運だったと思う、彼女は幻体闘技で稼ぐ方法を編み出しておりその方法を惜しげ無く教えてくれる、具体的には魅せるという事らしい、彼女の言う魅せるとは勝つことでは無い、面白い試合をするという事だ、その為にはまず魅せる幻体を作る事が重要になってくる。


ミナコさん自身は魅せる幻体を意識して作った訳でなく、好きでイメージしやすい幻体を製作した為にクトゥルフを生み出したが、それは強力であるが故に用途に問題を持った物だった、実際に巨大で持続時間の短いクトゥルフは冒険には不向きと解っていたので彼女もそれ向けの幻体を生み出してはいるのだが、闘技で難無く稼げているのでランクを上げていないという話だ。


また、ギルド側も闘技の目玉として人気のあるミナコさんには常に出場して欲しい為に現状が維持されている、最も今のところEランク闘技者として寄宿舎暮らしを許されているのはミナコさんだけで、他の者が真似しようとしても許されないという話だ。


そういう訳で色々と説明を受けたが、今度は実際に闘技用の幻体を作成する事にする、ここではミナコさんからのアドバイスを参考にして、マナミさんとペアの幻体の作成に挑戦する事にする。


新人の私達が出場の機会を多く得るには最初からペアを組んで、格上の相手との対戦を狙った方が明らかに出場する機会が多いらしい、中でも女性ペアはそれだけである程度の人気があり稼ぐのに有利だという話だ。


そして、次に考えるのはペアに適した幻体を作る事だ、女性ペアが人気があるのは述べたがその法則は幻体であっても当てはまり、女性型幻体を使う女性ペアが人気があるのでその様な幻体を練り込んでいく。


ここで重要だと教えられたのは実際に動く原理を理解して作る事のようだ、関節や筋肉の動きをより明確にイメージできれば、その分だけ強い幻体と成るらしい、具体的に言うなら光線剣より日本刀の方が強い、確かに光線剣は鋼鉄すら容易く切り裂いているが何で切れるかのイメージが連想出来にくいので威力が出ない、対して日本刀は鋭い刃が物体を切断するイメージを明確に想像できるので再現度が高くなるという訳だ。


マナミさんの相方は冒険者になる事に決めているらしく、色々なパーティと面談して行き先を模索中らしい、その為、彼女は私達と行動する事が多い、最近は何時も講習の後に私達三人は部屋に篭って幻体のイメージを固めていった。


ミナコさんは此の生活が長いのと女神から沢山のギフトを授かっているお陰で来客が多い。


文明レベルが中世のこの世界には電子機器など無く、その代わりに元世界のアナログゲームや漫画などが召還された者達の主な娯楽となっている。


ミナコさんが授かったギフトは主に元世界のアナログゲームで、中でもクトゥルフ関係の品々はかなりの物だ、元々アナログゲームにはクトゥルフモチーフの物が多いらしくミナコさんの私物はかなりの物だ、TRPGからボードゲームまで各種の品揃えで、私達達の部屋はこの世界のクトゥルフ文化の聖地となっている。


そのお陰で来客も多く、情報収集には持ってこいの環境となっている、そして、そんな環境に置かれている私とマナミさんは当然の様に毒され、クトゥルフ神話魔法少女というイカレタ創造物を生み出そうとしていた。


「やっぱり、旧支配者の加護を受けた少女達が戦う設定で良いと思うんですよ」


「私も、そう思います、邪神の力ってやっぱり燃えますよね」


そんな会話に話を咲かせていると、たまたま訪れていたミナコさんの友人であるミヤモトさんからツッコミが入る。


「旧支配者と女性って、ある意味相性悪いよ、傾向として落とし子孕む作品多いからね」


「確かにそうですね、クトゥルフ世界は女性に厳しい世界ですからね、ライトな層ならそれでも良いかも知れませんが、私達にとっては微妙ですね」


クトゥルフ好きなミナコさんも、私達のアイデアには否定的らしい。


「ならお二人はどういう幻体ならウケると思いますか」


「冒険者としてこの世界の人間と触れ合った者の感想としては、ここの人間達は自らの神話を凄く大切にしている、幻体師がパーティメンバーとして人気が有るのは女神の祝福を受けてるってのが実際に大きいと思う、だから、ここの神話をモチーフにしたキャラ作りをした方がウケると俺は思う」


「確かに、神話とか歴史は有りだと思います、コンテンツを作る上での解り易さってのは重要だと思いますね、クトゥルフは面白いですけど、元世界でハメるのは大変でした、だから、解り易いファンタジーのTRPGから誘って、クトゥルフに誘導してましたね」


「最近のヒットコンテンツにも言えるだろ、実在した英霊は解り易いって」


「確かに、偉人って憧れる人が結構います、そして、解りやすい」


「クトゥルフをモチーフにしても、所詮はうちわネタに過ぎないからな、解る人には解るでは万人受けはしないからな、それにここの歴史を学ぶのは有意義な事だぞ、結構、日々の会話とかで引用されてて、解らずに困るから」


「そういうものなんですか、私、この世界の人と余り繋がり無いから初めて知りました」


「日本人って、宗教観無いからな、実利あんま無いし外国の狂信者なんか理解出来ないし、でも、この世界の神ってちゃんと奇跡使うんだよね、召喚だけじゃ無く、神聖魔法もちゃんとある、俺も癒しの魔法で命救われた事あるし」


「なら、私も感謝しないと、ミヤモトさんは数少ない私の理解者ですから」


「なるほど、万人に受けた方が良いですか、確かにその通りだと思います、けど、ここの神話ってどうすれば学べるんですか」


「そこは心配しなくてもいいですよ、ギルドには翻訳好きな人が居て色々と翻訳してますから、幸い彼はお友達です、直ぐにゲームに誘って紹介しますね」


「奴を誘うとなればアレだな、となるとお嬢ちゃん達を鍛えないと」

「そうなんですよね、彼は流れを重視しますから長考を嫌います、だから、貴女達には今からやるゲームに慣れて貰った方がスムーズに事が進むと思います」


その後、ミヤモトさんを交えてのゲーム大会が始まった、彼のハシャギ方を見ると遊びたいが為にワザと誘導したのでは無いのかと疑いたくなるが、私達も十分に楽しめたので、これはこれでアリだと思う、楽しみ流れ学ぶ事が長続きの秘訣とは言うけどこんな学習ならばずっと続いていられそうだ。


それから数日、次の幻体闘技に参加する予定だったミヤモトさんと共に私達は翻訳好きの人が好きなゲームの熟練を上げていった、確かにこのゲームは慣れていないと難しいゲームで楽しくプレイする為に熟練が必要だというのも嘘では無かった。


そして、幻体闘技を翌日に控えた夜に本番が訪れた、例の翻訳者はワシザキさんと言って、少し小難しい感じの人だが、この人もミナコさんと同じで得意な才能を評価されギルド住まいを許されている人らしい、確かにこの世界を知る上でこういう人は確かに必要だと思うし、私達も恩恵を受けようとしている。



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