表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

一章二話

001-002.


四日目に私達は街に繰り出して見る事にする、面倒見がいいミナコさんにお願いして、私とマナミさんの三人での外出だ、ウミちゃんとシドウ君も誘って見たがそれぞれやりたい事があるらしくやんわりと断られた。


そこはまさに異国の情景で、石造り建物で作られた中世都市だ、道路を含めて街全体が石造りで慣れないせいで何か落ち着かない、ミナコさも最初はそうだったと言っていたのでチョット安心した。


石畳を進んで運河まで出ると、直ぐ近くに市場が立っている、水運を使った物流が行われている様で市場の商品の種類は多い、見た事ある様なものから全く見当の付かない物まで色々会ったが、お目当ての品は服の生地だ、ミナコさんが持っていた生地で作ったマナミさんの洋服はこの世界の女性が着る一般的なデザインと違って着やすい、そう、この世界の女性用衣服を着るのは抵抗を感じてしまうのだ。


一般的な洋服は、真ん中に穴の空いた生地に頭を通して身体を包み込んで紐で留めるシンプルな作りだが、問題は紐の位置だ、胸の下に紐を通して結ぶ構造は必要以上にバストが強調され、昔流行ったエロ制服の飲食店のようだ。


祝福のお陰で見せても恥ずかしくない体にはなったが、胸を強調されるエロ衣装を日常的に着るにはまだまだ慣れない、ここの暮らしが長い人は慣れたという人もいるが、ミナコさん言わせると自分に自身が出来て露出に目覚めただけと言っている。


街に出てみると周囲の人々は全く衣装に興味を示さず普通なのだが、異世界組の男達は明らかに違う、目を逸らそうとする者からガン見する者まで反応は様々だが、この世界の暮らしが長いカンベさんでも十分意識している事はよく分かる。


そういう訳で生地の露店を物色していく、正直言って納得出来る品質の物は中々無く、有ってもかなりの値段だ、それでもこの世界の衣装を着る気にも慣れず、かなり予算をオーバーして妥協出来る水準の物を買い込んでいく。


結果的に私とマナミさんは支度金の半分以上を生地につぎ込みそうになったが、ミナコさんが助けてくれた、ミナコさんが自分の買った生地の残りを使ってもいいと言ってくれたのだ。


ミナコさんからはかなり稼いでいるが使う所が余り無いという話を色々聞かされていたし、相部屋の私はミナコさんの遊び相手になっていたのでそのお返しだと諭されてありがたくその行為に甘える事にした。


その後、寄宿舎に帰って三人で服のデザインを考えたりしながら初めの休日を終えた。


五日目、今日も私達三人は街に繰り出したが、今回のメインはミナコさんだ、今日は週一回の幻体闘技の開場日で、そこにミナコさんも参加するのだ、ローマのコロッセオのような闘技場にやってきた私達二人はその熱気に圧倒されるが、金を賭けている為に毎回白熱しているらしい。


私達は幻体師専用の特等席で闘いを観戦するが、なかなか面白い物である、幻体同士が闘う為に演出が派手で、負けた時にはわざわざ爆発する特撮みたいな事をするものまでいるが、操る幻体師にはダメージが無いので闘技とは言っても演劇の様でもある。


また、対戦形式も様々で一対一から複数対複数、中には一対多数の闘いも行われていた、そして、何より面白かったのが幻体の姿だ、幻体師の嗜好を反映して二次元キャラっぽいものが多く、現実では色々とあり得ない様なキャラ対戦が多く観ていて単純に楽しい、今回は初めてなのでお金は賭けなかったが、気に入った幻体がいれば賭けてみるのもありかもしれない。


面白かった為か時が経つのが早く、いよいよ最後の試合が始まる、その出場者はミナコさんで彼女はこれでかなり稼いでいるらしい、その為一対三のハンディキャップマッチが組まれて色々な勝敗パターンに賭けれるようにはなっているが、ミナコさんが勝つというのが一番人気が高い、逆に三人が全員生き残ってミナコさんが負ける掛け率が一番低く大穴になっていてミナコさんの人気は圧倒的だ。


頑張ってくるねと言って席を立ったミナコさんに私達以外の幻体師からブーイングが起こる、ミナコさんの実力がそれほどなのかと感心していると、彼女の幻体を見て思わず納得してしまう、ミナコさんの私物からなんとなく予想はしていたが異質な存在感を持つ異形が顕現する。


旧支配者、サブカルに詳しい人ならよく知っている存在がコロッセオに降臨する、TRPGならSANチェックをやらないといけない状況だがみんな慣れているせいで喝采が起こるが私は見逃さない、観覧席にいる何人かがちゃんと十面ダイスを二個振っているのを。


そうしてミナコさんの準備が終わると、今度は対戦相手の幻体が発現していく、全員が同じ型で青くてエイみたいなロボットが三体だ、ネタが解っている幻体師達は笑っているが、この世界の観客達は結構同様している、確かに異形デザインのアレが三体も出て来ては例えクトゥルフといえども負けるかも知れない、そう感じさせる異形さが確かにあのデザインにはある。


そして闘いが始まる、アレ三体は変形して上空に飛び発つと三方に広がると上空に巨大な網が広がる、まさかあの戦法を実際に目に出来るのも感動ものだがタコを網で捉えてという凝った演出も馬鹿馬鹿しくて良い。


彼等三人はそうゆう事ができるエンターテイナーだったのでトリを任されたのかと感心していると、クトゥルフを網に捉えて電流を流し始める、すると辺りには芳ばしい匂いが流れて来てクトゥルフの身体が赤く染まって行く、茹でダコかよと思わず突っ込んでしまったが、三人は容赦しない。


三方に分かれたまま地上に降り立つと一斉に背中のキャノンで砲撃を始める、網に捕らわれ電流で焼かれた旧支配者の命運も尽きたかと思っていると、一体に黒い液体が降りかかる、クトゥルフは健在で墨を吐いたのだ、でも、墨だろと思っていると様子が変だ。


アレの特徴的な尖った頭が丸まっていき、溶けていく、あの墨は溶解液でもあったのだ。


「ラムサス!」


観覧席の誰かが叫んだ、まったくコイツ等は。


そして、反撃は続く、今度は他の機体の下の地面が盛り上がり、触手が這い出し絡め取っていくその力は圧倒的で数秒で押し潰されてしまう。


「ダンケル!」


それは無かった筈だ。


残った最期の一機は間合いを取るべく変形して再び上空に飛び発つが辺りは黒い霧に覆われている、あの墨を撒いて周りの観客は平気なのかなと心配していると霧を突き破って無数の触手の槍が突き刺さる、エイは平べったいから突き刺さる所がなかなか様になったがそれでジ・エンドだった。


オッズの予想通りの結果だったが、殆どの観客達は満足そうだった、掛け金はショーの代金だと考えればそれ程損をした気にならないのだろう、そしてなんと無く解るのはミナコさんがちゃんと演出していたという事だ、演出が有ったからこそ赤く染まり芳ばしい匂いが流れてきたのだろう。


「お疲れ様でした」


観客席に戻って来たミナコさんに労いの言葉を掛ける、マナミさんはネタが解っていない様で危なかったですねと感想を漏らしていたがネタの通じる私達はお互いに笑顔だ。


「私、向こうの世界で見た事無かったんですよね、こっちに来てから本で知ったんですけど、劇場版見とけば良かったな」


「アレってマニア受け悪いけど、リアル世代じゃない人にとっては有り難いと思います、なかなか昔のアニメ全話って見れないですから」


「そうですよね、私達も深夜アニメ劇場版が総集編でガッカリしますけど、後の世代の人にとっては有り難いんでしょうね、そもそも人気が無いと劇場化しませんし」


「総集編で微妙に設定かわって、新作見てアレってなる奴も有りますよね」


解る内容に変わったのでマナミさんも参戦してくる。


その後、寄宿舎に着いても三人で劇場アニメについて盛り上がって楽しい休日は終了した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ