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一章一話

001―001.


「女神の奴め、またガチャを引きやがったな」


最初に聞こえたのは不機嫌そうな男の声だった、未だ眩い光に目が眩んで状況は良く分からないが、その声に全く聞き覚えが無いのは確かだ。


「お、今度の奴は見た目だけなら当たりの様だな、戦力としては使えなくても別の所で活躍出来そうだぜ」


多分、私の他にも誰かいるのだろう、私の容姿は決して褒められるようなものではなく人よりも子豚に例えられる方が多いぐらいだ。


「姉ちゃんもついてねぇな、ようこそイカレタ世界へ」


眼に映る手の形が違う、私の手はもっと肉付きが良くて指も短いのに初めて見る手が写っている、試しに握ってみるが思い通りに動くので私の手には間違い無さそうだが。


「どうやら姉ちゃんも大分変わっちまったようだな、女神の祝福って奴で前とは変わる奴も結構いるんだよ、けど、心配すんな祝福だけにみんな美形になってる」


だいぶ目が馴染んで声を掛けてきた男の姿を確認出来る、男の言葉が本当かどうかは分からないがワイルドな感じがする美形だ。


「俺のナリも今はこんなだが、ここに来る前は四十過ぎで体重100キロ越えのデブ親父だったんだぜ」


「とてもそう見えません、二十歳過ぎのチョイ悪いって感じですよ」


「容姿に自信が出たせいか、立派な陽キャになっちまったんだよ」


「それはそうとここってどこですか、話の流れから考えると異世界召喚ですか」


「話が早くて助かるよ、姉ちゃんもアッチ系だったな、だいたいここに呼ばれる奴はアッチ系の奴ばっかりだからな」


「やっぱり異世界なんですか、けど、女神ガチャって・・・・・私達女神に呼ばれたって事ですよね」


「その通りだな、女神は俺たちに特殊な能力を与える代わりに、色々やってくれと言っている、早い話が冒険者って奴だが、そこから成り上がりも可能だから領主になった奴とかもいる」


話の途中だったが、近くの床に魔法陣が浮かび上がり眩い光が溢れてくる。


「また、お客様が来やがったな、他の話は次の奴と纏めてするからちょっと待ってろ」


その後、女神のガチャは続き合計で11人の人間が召喚された、案内役のワイルド男子カンベさんによると10回引くとオマケで一回引けるから大概11人召喚が多いらしい、本当にソシャゲのガチャの様で呆れてしまうが、同じ仲間が多いのは心強い、もっとも、アッチ系の常か変な奴が多いけど。


男女比でいうと7対4で男性が圧倒的に多い、年齢も見た目も二十歳ぐらいの人間が多いが私の事例から考えても当てにならないと思う、もし、知人がいても美化された容姿と若返った年齢のせいで見分ける自信がない。


変わった所では中学生ぐらいの少年がいるが、美化の影響かニキビなどない美しい肌で現実の中坊とは違う清潔感がある、目付きは少し悪いがそこが何か気に掛かる、私はショタの気は無かったはずだがその少年には何故か引かれてしまった。


一応の自己紹介がそれぞれ行われたが、はっきり言って異常な奴が多い、誇大妄想を表す奴や、名前以外何も言わない奴など、社会不適合者が三人ほどいたが他はコミュニュケーションが取れる人間の様だ。


自己紹介の後はカンベさんに少し待つように言われて私達はその場に残された、そこはヨーロッパの聖堂の様な場所だが正面には人間の三倍ぐらいのサイズの女性の像がある、あれが女神像なんだろうなと見つめていると声を掛けられた。


「なんか変な事になっちゃいましたね、異世界召喚なんて空想の産物だと思ってましたけど」


話し掛けてきたのは二十歳ぐらいの女性だ、丸顔で髪を束ねていて結構可愛いのだが、来ている衣服が野暮ったいスェットスーツだ、部屋着のまま無理矢理連れ出された感じで可哀想だが、どうこう言える状態ではない、何せ私も学生時代のジャージ着用なのだ、その上ジャージ自体はデブサイズのままですっかり延びきったウエストを括ってずれないようにしている。


「お互い災難でしたよね、特に格好が・・・・・・」


女性の中で私達二人の出で立ちは特に酷い、一人は学生服でもう一人はスーツ、確かにこの状況では私に話し掛けるのは妥当な判断だ。


「ですよね、せっかく綺麗になれたのにこんなの最悪です、さっさと着替えたいですよね」


「着替えたいのは同意しますけど、少し怖い気がします、カンベさんの服見ると服飾レベル低そうですから」


そうなので有る、カンベさんが着ていた服はとてもファッショナブルとは言い難く、野暮ったいものだった、目の前の女神像の姿はほとんど全裸で大事な部分に布を巻きつけているだけだ、着替えといってあんな物が出て来たとしたら正直ジャージの方がマシだ。


「確かに、でも無いなら作ればいいじゃ無いですかね」


「もしかしてコスプレイヤー」


「作るのは好きなんですけど、自分では着れないですね、滑稽な姿になるのが解ってますから」


「けど、今のマナミさんのなら結構可愛いので行けそうです、ニチアサのやつでも行けますよ」


「作った事ありますよ、自分では着れなかったけど」


「あれって一度は来てみたいけど、現実考えるとね」


「はい、ハムみたいなお腹なんて晒せませんよ」


「マナミさんもウエスト大きかった方なんですか、私は服見れば解ると思いますけど」


「はい、結構プニってました」


「そう聞くと親しみ湧きます」


「私もそうです」


話がひと段落ついたところで、丁度カンベさんが帰ってくる、お供に胸が強調された恥ずかしい服をきた女性を二人連れて。


デザインはアレだが顔が綻ぶ、服のデザインはまともじゃないがまともな生地が存在する事が解ったからだ、このままマナミさんと仲良くなっていけばちゃんとした服にありつけるだろう。


女達は分厚い台帳を持ってきており召喚者達に名前を書かせて行く、署名するページには見慣れない文字で何か書かれている、この文字でここが異世界というのを実感させてくれる、そして、女神の信者と思われる女達の顔は非凡だ、自らの信者ではなくよそ者を美形に祝福する女神に対してよく愛想を尽かさないのかとは思うが、宗教の刷り込みの為仕方ないのだろう。


一番始めに召喚された私の署名が終わると小さな袋が渡される、ジャラジャラと音の鳴るそれはファンタジーでは定番のアイテムの支度金のようだ、気になって中を覗いてみると硬貨が結構入っている。


期待通りの物に笑みが零れる私を見て、目の会ったカンベさんがニンマリと微笑む。


その後全員が署名を終えて支度金を受け取るとカンベさんが話す。


「その金は教会からの物で、君らの当座の生活費になる、住処と食事は支給するが、着るものまでは用意出来ない、自分らの調達してくれ、金額は50万ぐらいだと思ってくれ、だが、繊維産業が遅れているここでは衣服はかなり高価だ、俺の服でも3万ぐらいするぞ」


あんな100円でも着たく無いような服が3万もするとは、私はこの時現代文明の偉大さを実感したのだ。


その後、私達は召喚先の女神神殿から、幻体師ギルドという学校のような建物へと連れて来られる、元は寄宿舎だったらしいので学校の寮のような建物でカンベさんよるとここで使い物になるまで幻体師としての学習を受けるらしい。


食堂に集められ色々と説明されたが、幻体師とは早い話がスタンド使いの様なものらしい、自分イメージした物を具現化させ戦闘に利用するクラスで召喚された異世界人にしかなれない職業らしい、参考までにカンベさんの幻体も見せて貰ったがムキムキのマッチョ巨人で何処と無く某世紀末漫画のキャラに似ていた。


粗方の説明が終わった後は部屋分けが行われた、元寄宿舎なだけあって相部屋で指導役を兼ねた先輩召喚者と一緒に技を磨かないといけないらしい。


私の相方はミナコさんという女性で、この人も女神の祝福のお陰か結構美形だ、本人曰く冒険者としての才能が無くここの暮らしが結構長いので色々聞いてくれとの事だ、因みにミナコさん幻体師クラスはEクラス、最低ランクだが次のDクラスに昇格出来るとここを出て冒険者にならないといけないらしい、あとカンベさんはAランクだがここにいる訳はギルドの指導員だからという話だ。


粗方相方が決まったようだが、例の小年、名前はシドウ君が溢れてしまった、基本同性同士のコンビが組まれるのだが、今回は男性の数が多過ぎて相方の男性が埋まってしまったのだ、仕方が無いので例外的にギルド職員でもある女性がコンビを務める事になった、少年の彼は見た目道理の年齢でまだ年が若いので大丈夫だろうとの判断だったが、正直羨ましい。


また、寄宿舎では恥ずかしいデザインの制服と部屋着が支給され、長年連れ添った学校ジャージとお別れした。


召喚初日はそうやって更けていく、慣れない暮らしに緊張したが意外と疲れたのかあっさりと眠くなり、十分な休息が取れた、後で聞いた話しによるとこの寄宿舎の殆どの部屋には消灯時間になるとスリープの魔法が発動されるらしく寄宿生に強制的な安らぎが提供されるらしい、流石異世界。


あくる日、昨日あっさり眠れたお陰か目覚めは爽快だ、相方ミナコさんに連れられて食堂にやってきた私は味付けは微妙だが量は十分な食事を頂き、その後、昨日の召喚者たちとカンベさんの講義を受ける。


彼の講義はアバウトではあるが要点は押さえられているので解り易い、スタンドとは行ってもイメージの具現化なので最初は馴染み深いものから始めてだんだんと複雑化させて行けばいいらしく、シドウくんはこの日の内にあちらの世界で飼っていた愛犬の幻体を作り出していた。


それからの日々はイメージを具現化に費やした、私の才能は平均的な様で三日目で好きなアニメキャラの幻体化に成功した、その後はそれを動かす訓練を行い、段々と上達していった。


普通、同じ環境で学ぶ者同士は段々と打ち解けて行く、明らかに接しにくい二人は共に孤立したままだったが、誇大妄想狂の奴は話して見るとそれ程悪い奴では無く、結構話すようになった。


一番中がいいのは初めに打ち解けたマナミさんで、服飾の得意な彼女はその才能を十分と発揮して早くして人気者になっている。


幻体師としての才能に恵まれたシドウ君は、私よりずっと先に進んでいて解らない事をよく教えてくれる、正直、カンベさんよりも的確な教え方で彼の存在のお陰で平均よりは高い水準で私達は上達しているらしい。


学生服を着ていた、ウミちゃんは服装通りの女子高生で二番目の若さだ、かなり腐が入っていてもっぱらの被害書はシドウ君だ、彼女の妄想では色々な男性を攻めているらしい。


スーツの女性はトウコさん、キツイ性格で負けず嫌いだ、幻体師としての成績は二番手だが、シドウ君との差は大き過ぎる、もし、彼がいなければ増長した彼女のせいで今より悪い環境になっていたと予想出来るのでシドウ君には感謝だ。


残りの男供については正直関わりたくない、アニオタ三人衆で好きなアニメキャラを脱がしては下らない議論で白熱している。


そして四日目、今日と明日は訓練が休みらしい、普通この世界は週休一日だが幻体師ギルドは元世界通りに週休二日で運営されている、もっと週休二日なのは建前でこの世界の休養日は幻体師にとっては最も稼げる日でも有るらしい。




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