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10分で胸キュン恋愛短編集

恋の試練は突然に。

作者: ニコ・タケナカ

「ねぇ、私のどこが好き?」

(来たっ!!)

オレはその質問にドキッとし、食べていたお昼の弁当が喉につかえそうになった。

心拍数が跳ね上がり、緊張から瞬時に手に汗をかいて湿っぽさを感じる。

そんな動揺を悟られないよう、平静を装いすぐさま応えた。


「え~、そんな急に聞かれても沢山ありすぎて、すぐには答えられないよ」

これは予防線だ。

応えるのにもたついていると彼女の機嫌を損ねかねないので最初に言っておかねばならない。これまでの経験からひねり出したオレの策だ。

”沢山ありすぎて”と言うところがポイントだ。これで答えるのにもたもたしても、彼女は焦らされているように感じて時間稼ぎができる。


オレ達が付き合い始めて半年が過ぎた。

彼女は時々、自分のどこが好きかを聞いてくる。甘えているつもりなのだろうか?

最初のうちはオレも可愛く思えて、その質問に喜んで答えていた。


彼女の全てがいとおしく感じていたし、オレの答えに彼女もまんざらでもない様子で照れながら更に甘えてきたからだ。

誰かに聞かれていたら恥ずかしくて死んでしまいそうなセリフも、二人だけの時に耳元でささやいた。


だが、その甘い時間も最初のうちだけだ。

半年もすれば何であんなにこっ恥ずかしいセリフを言ったんだろうと、後悔してくる。一人で思い返した時、これが若気の至りかと高校生ながらに思った。


別に彼女の事が嫌いになったとか、そういう訳じゃない。

好きな気持ちに変わりはないけど、初めての彼女という事もあり溢れかえっていた思いが時間を経た事で落ち着きを取り戻したといったところか。


「ねぇ、早くぅ」

彼女は甘えた声を出し、ニコニコしながらこちらを見ている。

「ん~・・・・・・フフッ」

はっきり言って何も思い浮かばない!追い詰められた状況にもかかわらず、逆にそれが可笑しく感じて笑ってしまった。

「ふふふっ」

彼女もじれったい様子で笑った。


彼女のいいところは沢山ある。

オレの事を見つめてくるつぶらな瞳だとか、撫でると心地いいサラサラの髪だとか、触れるとやわらかい肌だとか、ぷっくりとした唇だとか・・・・・・だがそれらはもう言い尽くした。

ネタ切れなのだ。


前に聞かれた時は、「笑顔が可愛いところ」と答えたら、真顔で「それ、前に聞いた」と言われた。

オレが言ったことを全部覚えてるのか!?

あの時は、不機嫌になった彼女をなだめるのに苦労した。可愛いから可愛いと言っただけなのになぜこんなに気を遣わなくてはいけないのか?少し理不尽さを感じる。


そもそも、そんな無尽蔵に良い所が出てくるはずがない。

オレなんて学校の進路調査で、自分の長所を書く欄に”我慢強いところ”と、散々考えて一言書いただけだというのに。


「ねぇ・・・・・・」

あまり待たせると彼女が怒ってしまう。ならばと、オレは彼女に質問し返した。

「逆に、オレの好きなところはどこなのさ」

「今は、私が聞いてるの」

バッサリ切り捨てられた。

まるで刃物を首に当てられている様なヒリヒリとした感覚が背筋を駆け抜けた。


彼女はオレにはもったいないくらい、いい子だ。

今日もオレの為にお弁当を作ってきてくれた。定番の卵焼きに、から揚げ、それに彩を考えて野菜も添えられて見た目にも気を遣っている。ただ、その野菜をどけて唐揚げをあと2、3個詰めてくれれば言うことは無いのだが・・・・・・文句など言っては罰が当たるというものだ。

母親じゃあるまいし、高校生の彼女が朝早くに起きてオレの為に手作りしてくれたのかと思うと泣けてくる。


ただ、困った事もある。

手作り弁当はもちろんうれしいのだけれど、教室では恥ずかしくて食べられない。

オレは辺りに目を配った。

ここは本校舎から別棟へ向かう通路の脇だ。お昼のこの時間なら通行する生徒も少なく、人目は気にならない。


「ねぇ、どこ見てるの?」

よそ見しているオレの顔を彼女が覗き込む。

「ああ、ゴメン。まだ休み時間、大丈夫かなって思って」

「まだ大丈夫だよ。・・・・・・さっきから、あまり食べてないね。嫌いなものあった?」

「ううん!大丈夫。君が作ってくれたんだから、嫌いなものなんてないよ」

彼女の方はオレとは別にタマゴサンドを作ってきて、先に食べ終えている。オレは彼女の視線を感じながら唐揚げを頬張った。


「ふふふ・・・・・・ねえ、私が食べさせてあげよっか?」

「いや、いいよ。恥ずかしいから」

二人きりなら構わないがちょうど女子生徒が一人、別棟に向かって歩いて行くのが見えた。

「もーぉ」

残念そうな声を漏らしてから、彼女はニッコリ笑った。

彼女にはワザといちゃついている所を他人に見せびらかすような、そんな素振りがある気がする。


オレ達が付き合い始めた当初は、クラスのみんなに付き合っていることを秘密にしておこうと約束していた。

しかし、数日もしないうちにバレていた。

彼女が友達にそれとなく話してしまったそうだ。バレてしまうと彼女はもう隠す必要もないと考えたのか、堂々とオレにくっついて回るようになった。

彼女とイチャイチャするのは望むところだ。ただ、それを男友達に茶化されるのが耐えられない。彼女の方はというと茶化されても気にも留めず嬉しそうに笑っているのだ。


彼女はオレとのやり取りを、女友達に逐一報告しているのではないかと疑っている。

それというのも、クラスの女子からの視線が何か含みを持ったものに思えてしょうがないのだ。オレがささやいた甘い言葉をキャッキャ言いながら自慢でもしたのだろうか?もしそうなら、恥ずかしくて死んでしまいそうだ・・・・・・

だがオレに女子たちのネットワークを防ぐすべなんてない。100歩譲って女子たちの間で恋話のネタにされるのはいい。けど、それがオレの男友達の方にも広がるのは勘弁してほしい。オレにも男のメンツというものがあるのだ。

だからこうして茶化されないよう、お弁当を作ってきてくれた日には誰もいない場所で食べるようにしている。


「ねぇ、さっきの続きは?」

彼女がまた甘えた声で聞く。

「んー・・・・・・」

やめてほしい事なら今思い浮かんだ。けど、それを口にしてしまったらこの恋は一気に冷めてしまう気がする。


オレは残っていた弁当をかき込んだ。

「お弁当が美味しいところかな」

なにも思い浮かばなかったので、仕方なくお弁当の感想を口にした。

「ちょっと!それって私じゃなくお弁当が好きって事?」

彼女の声色が変わった。


オレは慌てて取り繕った。

「違う!ちがうよっ!キミがオレの為に一生懸命お弁当を作ってくれてるところが好きって事だよ」

オレの言葉に納得したのか、眉間に寄せていたシワはたちまち消えた。

「私も、おいしそうに食べてくれるキミが好き!」

彼女は満面の笑顔をオレに見せてくれた。


(ちくしょう!オレが本当に好きなのはその笑顔だよ!!)

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