神の奇跡
時が来た。階段を下りる。居間には家族が揃っていた。
今日は日曜日のようだ。まだ学生であるはずの妹がいる。その妹が不思議なものを見る目でこちらを見る。
まぁ不名誉な兄であることには違いないしなぁ。
遥か昔の事のようだが成績が優秀だと言うことを小耳にはさんだことがある。
「少し出掛けてくる。夕食の時には帰る。」
家の中がざわめいたような気がしたが気にしない。俺は家を出た。太陽の眩しさと輝きに心を奪われていた。
俺は公園へ向かっていた。人目につかない場所に行くように言われていたからだ。俺には思い当たる場所がひとつしかない。公園のトイレ。そこは汚く、薄汚い。公園で遊んでいる子どもが近くの友達の家にトイレを借りに行くレベルだ。そこなら誰にも気づかれないだろう。トイレの個室に入り、鍵を閉める。トイレの窓に神Keyを掲げる。その刹那光に満ちた。
例の場所にいた。奥にはやつがいる。こちらに向かってきて言った。
「来てくれて嬉しいよ。今日は君に僕の仕事を教えよ
う。」
????口調が違う。前回の“the 神”って感じではない。
「ん?どうしたんだい?僕の顔に何かついているかい?
そ・れ・と・もボクに惚れちゃったのかい?」
「ちげーよ。話し方だよ。どうしたんだよ。」
「あーそれね。日本語っていろいろあるじゃん。せっかく日本語
しゃべるからいろいろ試そうと思ってね。」
「今日はこれですか…」
「正解♪」
俺は今後大変な目に遭うと確信した。
「仕事って何してるんですか?」
「うん。僕の仕事は迷えるヒューマンたちに奇跡をプレゼントす
るのさ。」
「……例えばどんな?」
「苦労している人や絶望の中にいる人にゆめへのキップをあげる
さ。」
うぜぇ
「他には何かあるんですか?」
「う~ん。後は君みたいなヒューマンを見守ることかな♪」
うん、うざい♪
「ところで君には将来どんな仕事につきたいとかあるのかな?
ヒューマンの世界で♪」
「いや、特には…」
唐突な質問に戸惑ってしまった。少し考えようかなと思ったとき。
「まだ君はキッズだからしかながないね☆」
殺せるものなら殺したい☆
その後もウザいやつの話を聞いていた。
「うん。今日はありがとう。もう帰る時間だね。」
「はい……」
俺は神Keyを掲げた。最後にやつが何か言っていたような気がしたが気のせいだろう。
公園のトイレにいた。日が傾きトイレがオレンジに染まる。外に出ると子どもたちが親につれられて帰るところだった。
「あれっ?」
見慣れた背中がある。小さい頃公園でよく見ていた…どれだけ時が過ぎても、どれだけ俺が堕ちても変わらないものがそこにあった。妹がこちらに気づき罵声を浴びせてきた。
「夕食の時間だから早く帰れよ引きニート!」
久しぶりの会話これは奇跡かもしれない。少しずつ夜が近づいていたが、俺の気分は晴れ渡っていた。




