神への道
俺は求人サイトで不思議なものを見つけた。
「ちょっとワシのために時間を捧げてくれんかの~」
明らかにおかしい。引きニートの俺でもわかる。
宛先もなければ住所もない。
―いったいどこで何をするんだ?―
そんなことを思っていると下の余白に文字が現れた。
「ヘイ!そこのユー!来てくれないカイ?」
ガタッ
思わず椅子から立ってしまった。これは恐怖だ。ネトゲでゾンビに囲まれたときにもおぼえなかった感情。後ろを向いても誰もいない。しかしそれ以上にワクワクしていた。ネトゲ以上の臨場感。俺は恐怖に臆することなく次に出てきた指示にしたがっていた。
俺の名前は神木英夫。中二から引きこもる四年目。その頃の俺は政治に興味があった。政治の知識がない同級生をバカにしているうちに友達がいなくなっていた。そして大人と対等にいられる世界に来たわけだ。自分の意見を真面目に聞いてくれて答えてくれる世界に。そして気づいたらネトゲにはまっていた。そして今に至る。いつものように過去を振り返っているうちに準備が整った。といっても近くの公園に来ただけだが…
真夜中の公園は静かだった。昼間は子ども声でうるさいのが嘘のようだ。草木はわずかな風に揺れ、どこからともなく虫の声がする。
―秋になったのか―
しばらく外に出ていなかったので気づかなかった。大きく深呼吸をした。秋の空気が体を中から洗う。また大きく息を吸う。
「俺を雇ってくださーい」
叫んだ。虫の声を黙らせるほど、草木のさざめきを静めるほど、世界の中心が俺になったと錯覚するほどに。その刹那光に包まれて俺は目をつむった。




