いじめはいけないことです6
2度目の集会があった日の放課後、部活に入っていない女子生徒たちが教室で雑談をしていた。
「これ、誰が持っていく?」
「こういうの先生が持って行ってくれると助かるんだけどな」
「ねぇ栄下さん、持って行ってくれない?仲よかったでしょ」
1人離れて携帯を見つめる別の女子生徒、栄下千夏に声をかける。
「いいよ、どうせ行くつもりだったし。ノート?プリント?」
「ファイル、色々入ってる。よろしく頼んだ」
「頼まれた。誰も行かないの?」
視線をかわすが言葉はない。
「いいよ、1人で行く。そんな気はしてた」
また明日、と言い残して教室を去り、停学になった生徒、小谷叶の家へと足を向ける。
道中、今回の事件について色々と考えていた。
正直あれはやりすぎてたよな。止めるのもわからんでもない。私は絶対止めないけど。
小谷叶と仲の良かった彼女は事件の当日、担任の教師と話をした。
「あの子そんなに悪くないと思うんですよね」
「何か聞いてるか?どんな様子だった?」
事情聴取が始まったので、わかってはいたが少し呆れた。
「本人からはなにも聞いてないです。いじめはいつもよりかなりハードでした。多分それで。ちょっと引いてる子もいたし」
「なるほど。具体的にどんないじめだったか聞いても大丈夫?」
「いいですよ、まず服を剥がされてました。ビンタまでは良かったんですけどお腹とか殴り始めちゃって。あ、動画撮ってる子もいたな」
「それ見せてもらったほうがはやいかな、まあいいや。それで?」
「多分何発かみぞおちに入ったところだと思うんですけど、そこで止めに行ってました」
「ふむ」
教師はあごをさすり、ため息をついた。
「昔のいじめはもっと酷かったんだぞ。なんせいじめられてるやつが自殺を選ぶぐらいだ。世界全部が敵にみえるらしい」
「はあ、そうですか」
こんな話をしても仕方ないな、と教師は謝った。
そんな会話を思い出しながら歩き続ける。
私がもうちょっとうまく弁解できてたら停学はなかったのかな。
考えたが、すぐに諦めた。1年の3学期にいじめられてから、色々とこだわらなくなった。1人でいるとどうしても思考が消極的になっていくことに気付いた。
「視線をあげると気分も上がるらしいよ」
自宅で暇をしているであろう親友の言葉を思い出し、歩調を早めた。