いじめはいけないことです3
新入生にとって二度目になる全校集会で語られたことは、二年生の間ではほとんど周知のことであった。
いじめを止めた生徒がいた。そしてその生徒の停学が決定したので、ほかのみんなは気をつけるように、というのが大体のところである。
学校関係者は新年度早々のこの忌まわしき事態の収束に追われていた。
保護者の1人によって報道機関に大袈裟に語られそうになったところを、校長先生の見事な手腕によって回避したらしい。
ともあれひとまずはことなきを得たし、1年生への「みせしめ」としての効果も多少は期待できる。というのが職員方の見解である。
一方でことの発端となった二年一組の教室では全校集会の後にクラス会議が開かれた。議題は「なぜこのようなことが起きてしまったのか」
会議とはいえ中学生、各々言いたい放題だ。
「なぜもなにも、あいつの頭がおかしいんだろ。普通とめるか?」
「どうでもいいでーす」
「先生、過去に同じようなことはなかったんですか?」
「今そんな昔の話しても意味なくない?」
「これ宿題とかになるやつ?」
「それはまじでうざい」
「はいちょっと静かに」
教師が会議の進まなさに苛立つように手を鳴らす。
「一旦話すので聞いてくれ。まず、過去に同じことはなかったのかという声が上がっていたな。言ってしまうとありました。そのときも生徒は停学、今回もこれにならった形になる。あと宿題になるか心配してるやつ、それは先生にはわかりません。なるとしたら学年単位か、学校単位だな」
一部生徒からささやかなブーイングがあったが、教師は続ける。
「とりあえずは集会でも言っていたが、みんなはしないように、ってことだ。正直それだけで先生は助かります。今日はこのくらいにしておこう。よし、終わり!残りの時間は自習!宿題やるやつはやっていいぞー」
そういうと担任の教師はせかせかと出ていき、教室にはいつも通りの空気が流れた。
自習になった教室で、生徒達は会議の続きをする。
なぜ止めたのかわからない、止めるべきではなかったという否定派と、止めるのもわからないでもないという半肯定派に分かれていた。
「あそこで止めたら学級会の意味ないじゃん、というかそもそも制度の意味がない」
「そうは言っても限度があるってことでしょ、何のためのルールかって話」
そんな不毛なやりとりが続くが、当然結論は出ない。
生徒だけになったとみるなり携帯を確認していた一人の女子生徒だけがどちらにも属さず、少し違うことを考えていた。