いじめはいけないことです2
新年度が始まって三週間ほど過ぎ、学年の変化にも慣れてきた頃、早くも二度目の全校集会が開かれることになった。
職員室は対応に追われ、学校全体がなにやら騒がしいピリピリとした空気に包まれている。
二年一組の教室は、廊下側の一番後ろの席が空いていた。その一つ前の席では、黒縁の眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒が昼休みを満喫しながら、友人らしき生徒と話している。
「ありえない。ついこの間始業式があったばかりなのにまた集会なんて。よりによってなんでこんなやつのいるクラスに」
後ろの空席に視線を向けながら、吐き捨てるように言う。
「仕組みってものをわかってない。僕らはもう中二だぞ。やり方ってものがあるだろう」
「ほんとだよな、最悪だよ。なんなら俺のときにやってほしかった」
「馬鹿なことを言うな、不謹慎だぞ」
「冗談だよ、難しい言葉使うなよな。これだから真面目ちゃんはダメだ。まあいいや、ちょっと行ってくる」
眼鏡の生徒と話していた茶髪の生徒はそう言って、教室のちょうど反対側、窓側の一番前の席に座る体格のいい男子生徒のところへ向かう。途中、自分の筆箱を手に取ると、机で頬杖をつく男子生徒の側頭部へ、それを振り抜いた。
パンッ。
教室内の空気が変わる。全員が同じ方向をみる。なにが起こったのかを理解した者は、便乗を始める。
いじめが始まった。
雑巾を投げつけ、椅子や机を蹴り、教科書やノートにセンスのない落書きをする。
いじめを受ける男子生徒はなにも言うことはなく、ただその場で耐え、チャイムが鳴るのを待つ。
教室は騒がしくなり、普段の話し声なら聞き取ることもままならない。
傍観している生徒もまた、ただ時が過ぎるのを待つ。
いじめ行為はじわじわと激しくなり、男子生徒が椅子から落ちたところで、チャイムが鳴った。
担任の教師が戻り、皆を席につかせると、騒がしさの残る中で特に気にする様子もなく話を始める。
「今日はこれから全校集会です。始業式のときと同じで体育館に行くので、また廊下に出て並んでください」