introduction
人口爆発への対抗策として、近未来を予感させた計画が、かつて存在しました。
――人口フロート利用計画です。
宮城県、石巻海岸の沖、およそ十キロメートル離れた地点に、陸からは完全に独立した巨大な人工島を建設し、その上に超高密度な自給自足都市を育成する――
そんな夢のような計画が発表されたのが西暦2022年。当時、大規模スポーツ大会を無事終了させた、日本中の人々が次に興奮した対象でした。
あらゆる企業が、人工島建設会社に出資し、人工島が完成して最初の居住者となるための抽選は、日本でもめったに叩き出すことのないような倍率を記録。
その波は海外にも、すぐに響きわたります。
先進国だろうが発展途上国だろうが関係なしに、自分の国が我先に、と完成を早めるべく突貫工事してあらそったのです。
長い工事の期間、各国がしのぎを削るなかで最も早く、それなりのものを作り上げたのは日本です。作業こそ遅れたものの、やはりその正確な技術によって、一切の事故を起こさず済みました。
そうして、人類で初めて、陸とのつながりがない人工的空間が生まれます。
時は、2053年。
人呼んで、新世紀。またの名を、気づかぬ悲劇の始まり――
華々(はなばな)しく入島式はとりおこなわれ、白熱した建設ラッシュをおこした世界中の皆も含めて、その完成を盛大に祝福しました。島は大きさこそ東京23区のうちのどれかひとつ程度だったものの、高密度な街区にはあらゆる設備。その地価はみるみるうちに上昇していきます。
――次のページにある恐怖の発見が、人々の記憶に染み込むまでは。
だれもこんな未来なんて、想像しえなかったでしょう。できるはずがありませんでした。
(新新改訂13版、中学校歴史教科書出典)
http://estar.jp/.pc/work/novel/24195646/%E8%A9%A0%E3%81%86%E5%BD%BC%E5%A5%B3%E3%81%A8%E9%9C%8A%E7%B4%9A%E8%A7%A3%E4%BD%93%E6%97%A5%E8%AA%8C?_ck_=1
以上にも掲載