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第5話〈鳳月海人、 “竜”に出会う〉

「うぉわぁああああっ!?」

「きゃあああっ!?」

「あはははは!!」


 三者三様の反応。

ただいま、 地上3階より直角に急降下中。

胃からなにかが込み上げてくる感覚があった。

考えてる暇は、 ない。


「ッ……………!?」


 咄嗟に、 横に並んで一緒に落下している二人を抱えて着地しようとしたその時、 視界が青くなった。


「……は?」


 だが、 “なぜか”落下速度が遅くなり、 安全に着地することができた。

俺は、 へたり、 と腰を落とす。


「なんだ……? いったい何が」

「リル様ぁっ!! あれほど言ったのに……ッ」

「まぁ、 いいではないかセーレン」

「よくないから言ってるんですよ!!」


 混乱する俺を無視する形でリヴァイアさんと潮見さんがもめている。

……ちょっと待ってくれ。

なんだこれは。

意味がわからん。


 俺は、この二人の落下した衝撃をまとめて引き受けるつもりでいた。 でも……それどころか俺一人にすら、 なんの衝撃も来なかった。


何が起きた?

こいつらは何を知ってるんだ?

っていうかこいつら知り合いだったのか?


……考えれば考えるほどわけがわからなくなってくる。


『お、 おい! 破壊神が転校生を道ずれに飛び降りたぞ!?』

『え!? あのリヴァイアとかいう女子に手引っ張られてなかったか?』


上の方からみんなが騒ぐ声が聞こえてきた。

呆けてる場合じゃないな……とりあえず、 ここから離れないとヤバそうだ。


「二人とも、 俺についてきてくれ」

「え? あ……、 はい! そうですよね、 すみません」

「おー、 案内頼むぞ!」


 潮見さんは一応俺の意図を理解してくれたようだ。 リヴァイアさんは全くわかっていないみたいだが……。

 前はは学校を囲う塀、 つまり校舎裏だ。 上からの視線を撒けば落ち着いて話ができるだろう。

十中八九こいつらが今の現状を起こしたはずだ、 二人の会話を聞いててそう確信する。


いったい、 なんなんだ?


◇◇◇◇◇◇



「えっと……ここは?」

「体育館裏」

「オオーッ! ここが体育館裏かぁ、 何をするところなんだ?」


 二人を連れて来た場所は、 不良の溜まり場、 淫行が行われたり行われなかったりする、 体育館裏だ。

俺はタバコなんか吸わないし、 カツアゲなんかしたこともないので、ここを使うときがくるとは思わなかった。 端からみれば完璧に、 女子からカツアゲしようとしている不良だろうが……、 今はそんなの気にしている場合じゃない。


「……、 何を知ってるのか全部話せ」


 威圧的に、 本題に入る。

基本的に俺はこんな感じだから、 申し訳なくは思うが、 直せないのだからそこはどうしようもない。


「えっと……、 その、 ですね」


 やはり言えないことがあるのか、 顔を俺から背ける潮見さん。 俺にとっては日常だから別に悲しくもなんともない、 ……傷ついてなんかいない。

……まぁいい。 こっちはそう簡単に口を割らないことは分かっていた。

それよりも……。


「向こうに水の匂いがするぞ! でも、 なんか不味そうだ……」


 こっち、 リヴァイアさん。

こいつなら多分、 いらない情報も含めて全部口から溢れて来るはずだ。 少し接しただけでわかってしまうくらい単純なのが逆に怖いぐらいだな。


「リヴァイア……さん。 お前ら、 何をしたんだ?」


 他の人からしたら少し違和感が残りそうなセリフだろう。 『さん』づけしてるのに『お前』って矛盾してるな……と、 過去に知り合いに言われたことがある。


実は、 俺は人を呼び捨てにして呼べない。

これはまぁ、 外的要因トラウマのせいなのだが……。 でも『お前』、 とか『こいつ』、 みたいな呼び方ならできるという、 なんとも中途半端なトラウマだ。

呼び捨てよりも失礼な気がするけど……。


そんなことも相まって不思議なセリフ回しとなってしまうわけだが……。

さて、 それよりこいつはどうでてくる?


俺はリヴァイアさんを見据えた。

向こうも俺をじぃっと見つめてくる。


そして、


「……鳳月海人、」

「お……おう」


とても神妙な顔をして、 俺の名を呼ぶ。

こいつがこんな顔をするとは予想してなかった……一体何が語られるの……



「あそこは、 何があるんだ?」


……か?


リヴァイアさんが指を差して睨む方向は俺の真後ろ。 あーっと……、 あれは、 夏の代名詞と言ったら過言になるかもしれないが……。


「プール、 だが。 そうじゃなくて……」

「プール!? プールってなんだっ! あそこ、 たくさん水があるよな? 」

「あぁ……うん。 」


プールのこともしらないのか?

っていうか、 そう言えば、 こいつどこから来たんだっけ……。 海底とか言ってた気がするが、そんなわけないしな。


「よーし! 行こう、 セーレン!」

「え? は、 はい」


思い出して見ると、 おかしな言動が多いな、 こいつ、 外人なのに流暢りゅうちょうに日本語を話すし、 いや、 それは別にそんなおかしくないのか? でも、 確実に何かあるはず……、 あ?


「おい! お前ら、 どこいくって―」


「うわあ……、 久しく見るぞ! こんなにたくさんの水!!」

「本当ですね~、 でも、 ちょっと汚れてますね……」


もう入ってるし!

つーか、 あいつら、 柵の前にある立ち入り禁止の文字が見えんのか!! ……いや、 読めないのか? どっちにしろ早くあそこから出さんと、 俺が怒られる。


仕方ないので俺も柵を飛び越える。

2メートルどころか俺の身長、 175㎝にも届かないくらい低いから、 女子でもひょいッと越えられるわけだ。

プールへの数段しかない階段を上り、 プールを覗く、 と。


「お前らなぁ、 俺の話を聞い………………………………………………………………は?」



過去最高クラスの、 タイムラグが俺の頭に生じた。



ざぱぁっ、 と、 水が、 盛り上がり。

“何か”が、 現れた。



それは、 RPGゲームとか、 漫画とか、 そういう空想にでてくる生物に、 似ている。

口先の方が尖り、 耳のような物が顔の横についている。 その体には魚のように鱗があり、 そして、 蛇のように長く……。


まるで、



「……“ドラゴン”」



とりあえず、 誰か俺を現実に戻してほしい、 そう思った。



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