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終焉記  作者: 剣友会
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戦乱の行方

「核戦争後に滅び行く母なる大地を見限って月へと逃げた彼らが今度は国土回復運動、聖戦を掲げ僕たち地球人を目の敵とし、戦争を挑んでくる。とんだ滑稽譚だよ、これは」

 小さく肩を揺らしながら

「前座はいい。我々〝リュケイオン〟が傭兵集団であることはお前もよく知っている筈だ。」

「エデンの園、楽園、桃源郷、アルビオン、オリンピア││何だか解るかい?」

「新人類が所構わず作り上げた宇宙植民島の名称だろ、それがどうした?」

 青年はそこで一口茶を啜り、

「││虚神兵が完成したらしい」

 一拍の間を置いて一息に言い切った。

 途端、場の空気が張り詰める。

「そう、単一の思考回路を備えている言わば進化する大型兵器」

「飛竜型十体に海竜型十体、巨人型十体。早ければ次の戦争で投入されるだろう。製造工程を簡易短縮化させ、大量生産に入る目処もたっているそうだ」

「ただ今回我々が踏み切った理由はそれだけじゃない」

 ほぅ、と興味を示し顔を上げた鬼龍を見据え、青年は続けた。

「中立を公言するオティシア共和國において軍部主導で行われていた合成獣人の作成、〝ウロボロス計画〟は確かに存在した」

「で?」

 続きを促す旧友を一瞥し、鬼龍は事務的な報告を続行した。

「ああ、依頼通り第一から第二十二実験区画及び関連施設の破壊、総責任者アンリッシュ・マクレイン博士の殺害は完遂した。

「ああ、この資料によれば合成獣化手術の成功確率は一割、詰まり十人に一人しか成功しないわけだ」

「千年前││旧世紀、第三次世界大戦、核戦争が始まる前にこの母なる大地から追放された者たち、嘗て

「神聖アドリアーネ帝国との戦争、同じく地球から追放され月と其の周辺に宇宙人工島を、

「よく言う。異族との間に起きた二十年戦争でアル、お前の有するヘルシング機関第三兵器開発部門及びその子会社ディアボロス商会は唸る程の金が舞い込んだだろう」

「プルトゥー機関、メメント・モリ計画は完全に凍結されたもう二度とあの残酷非道な計画が日の目を見ることはないだろう」

「でも、驚いたよ、国家先導で十億人の民を実験動物に人工的屍喰鬼の開発、更には合成獣人の研究を行っていたとは言え自分の母国を壊滅させるとはね」

「オティシア共和国が開発した人型生体兵器〝虚神兵〟、ここ十年で新たに造設された水空陸三用超弩級航空艦艇、世界に跋扈する魔獣、浮遊大陸に暗黒海、ウロボロス計画、

「僕には世界が戦乱を望んでいるようにしか思えませんが、世界屈指の傭兵集団である君たち〝鎮魂歌〟には其方のほうが好ましいのでは?」

「唯でさえ、帝国との戦争が長期化の兆しを見せ、異族とエデンの園との紛争、さらに新人類が敵になるといえば洒落じゃ済まないからね。混血の狂王、鬼龍にこそ頼みたい」

「ああ、気をつけてね、あの辺りは第三種危険区域だから生息する魔獣も格CC級以上だから。まぁ、君なら例え浮遊大陸や暗黒海に住む格SS級の魔獣相手でも引けは取らないだろうけど」

「最近、各国で多発している屍喰鬼による民間人襲撃事件、

「君と不倶戴天の仇敵である〝理想郷〟連中のように戦機と機甲兵装を使用しながらこの世から紛争根絶、出来もしない夢物語を掲げる事もしなければ、〝タルタロス〟に巣食う暗殺者教団如く無闇矢鱈に血を求めるわけでもない。金を積まれた分だけ、それ以上でもそれ以下でもないクライアントとの関係、それが一番でしょう?」

「帝国に支配服従を約束された祖国を奪還するためでもない、メメント・モリ計画で現在に蘇った三百人の英雄を」

「今回の依頼は帝国領一望監視施設に囚われた我が国最高峰頭脳の奪還作戦だ。依頼料は二〇〇万㌦、受けてくれるね」

 〝鎮魂歌〟は世界屈指の強さを誇る傭兵集団の名称であると伴に総員二五〇名が搭乗する中型航空艦艇の名でもある。

 

「アル」

「何?」


「鼠が三匹」

緩慢な動作で咀嚼されていく肉片を眺めながら鬼龍は思考に耽る。彼が脳裏に思い描いていたのは、あの日、核戦争が勃発した西暦二〇五〇年から幾星霜にも思える今日への軌跡だった。

「ヘルシング機関が創り上げた近距離戦闘特化型、接近戦では最強無比の半生体兵器、我がコルネリウス機関の技術の結晶、近代科学の粋を極めた最高の機体、その名も〝竜鬼〟だ」

 鬼と龍の姿を合わせ持つ紅蓮の機体が目前にあった。バイク、時計。

「一応、戦機の部類に入るからね」

「本来立案されていた魔術と科学の融合体である新型兵器創造計画の十機である冥王、闘神、歌姫、軍神、全能神、海皇、太陽王、創造神、魔煌、竜鬼が一体だ」

「気をつけてね、十機の中でも冥王と太陽王の二機は理想郷に渡ったらしいから」

「変形や合体はしないのか?」

「合体はしないけど変形はするよ、言っただろう?この機体は一から十まで君の為に作成、調整してある、セキュリティ以前に操縦席内部で搭乗者に掛かる重力は五十倍だ。幾ら強化人間だろうが改造人間だろうが、完全自立型アンドロイドでも耐えられるか怪しいものさ」

「その点、君なら操縦者の加重を考慮しなくていいから比較的設計が楽だったよ。只管、強力な部品を組み込んで行けばいいからね」

「鎮魂歌艦長、鬼龍専用機体さ」

 間違いなく、常人が乗れば例え専用スーツを身に着けていた処で数秒で即死するだろう。紅蓮の合金で覆われた真紅の巨体を見上げた。

「新型の十機が同時開発されたんだ」


「これも新型の戦機だ。君の機体に比較すると幾分性能は落ちるが、それでもそこいらの量産型の十や二十、一掃できる能力を備えているよ。蒼龍、飛燕、月読さ」

「機甲兵装は必要としないのか?」

「ああ、不必要だ。それと、動力源だが」

「戦機や他の第七世代機体と異なりこの〝竜鬼〟は搭乗者の生命力を糧に起動する」

「君の体細胞を培養して創り上げた生体兵器」


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