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マイ・ナインストーリーズ #1

作者: 渡瀬 千尋

はじめて書きます。

みなさんのご期待に沿えればよいのですが。

火の色は愉しかった。

レイ・ブラッドベリは華氏451度でそう綴った。知性を忌み嫌い、道徳と文化を捨てた世界で育った主人公の目に、本を薪にして燃え盛る炎はさぞ愉快に見えたことだろう。

しかし、知性を、知識を愛するまともな世界で育った私の目にはすこしも愉しくなく、野蛮な行為として映った。目の前で、自分が毎日手に取り読んでいた本たちが、父の手によって灯油に浸されバーナーで焼き払われるのを私は唇を噛みしめ、黙って見ていることしかできなかった。

最後まで灰になるまいと耐え続けていた太宰の人間失格が燃え尽きるのを見届けると、父は振り向かずに言った。

「許せ、生きる為だ」

このときになってはじめて私は自分自身が涙を流していることに気づく。涙をこぼすまいと見上げた空は青く澄みわたり、そこへ何本か黒い煙が昇っていく。

禁書法が制定された次の日の朝の出来事だった。

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