夢6
目が覚めた。
覚めたけれど、もうちょっとだけ、夢と微睡みと暖かさが可愛いお菓子箱にちんまりと詰め合わせになったみたいなこの時間を、味わっていたかった。
「……起きましたの、ジャスティーナ?」
ロザリンデは、もう起きていたようだ。
「まだ……寝てます……」
「寝てる人は、寝てるなんて言いませんわよ」
「……」
「今更黙ってもダメですわ」
私はロザリンデの柔らかな体に手を伸ばし、その暖かさを堪能する。
「……もうちょっとだけ」
「あらあら。
まったく、これが〈世界の破壊者〉、魔術師ユスティナとは思えませんわね」
「〈世界の破壊者〉の営業時間は朝9時から夕方5時までです」
「そんなの初めて聞きましたわ」
ロザリンデは鈴を転がすような声で笑うと、するりと私の抱擁を解いて、ベッドから降りた。
「もうすぐ、朝食の時間ですわよ。
わたくし、先に降りて、準備して参りますわね」
私はさっきまでロザリンデが被っていた毛布をたぐりよせ、その極上の肌触りと、かすかに残る彼女の香りを抱きしめる。
「……この毛布、ロージィのいい匂いがする」
「まあ。じゃあ、もう少しそうしてなさい、ジャスティーナ。
朝食の支度ができたら、呼びに来ますからね」
返事代わりに、毛布に頭をうずめる。あふれる多幸感。
パタリ、と静かにドアが閉められる。
……ん?
そこで突然、私の脳内で警報が鳴った。
んん?
……あっ!!
突然の「気付き」に、眠気が吹き飛ぶ。私は慌てて飛び起き、ベッドの上に散らかっていた部屋着を身につけると、キッチンへと急いだ。
このままだと、朝食は謎料理界の巨匠ロザリンデによる、超アレンジ料理になる。
それも悪いとは言わないが……いや、悪い。あれは議論の余地なく悪い。
「待って、ロージィ! 私も手伝う! 手伝わせて!」
そう叫びながら、私は階段を駆け下りていく。




