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もしかして:大事件

最近長い話が続いたので本日は短めに……

 宮森おばさんからは、その後メールで「そちらの時間で今日の20:00から、Skypeチャットでいいかしら?」という連絡が来たので、「了解です」と4文字返信。

 テスト期間も近いということで、放課後の生徒会室は人もまばら。演劇鑑賞会まわりの企画書と仕事分担表はざっくりと仕上げたので、星野先輩にチェックしてもらう。

「明日には確認して戻します」と言われたので、ご配慮に感謝しながら今日は早上がり。星野先輩なら1時間かからずチェックできちゃうだろうし、「確認が終わるまで待ってください」と言われてもおかしくない、わりと切羽詰まった案件だけど、できれば試験勉強もしたい。


 いやしかし、星野先輩は、いつ勉強してるんですかね……?


 寮に戻ったその足で寮食に向かい、きつねうどんで晩御飯を済ます。食堂でいつも女子会を開いているグループが、いつの間にかエマちゃんを中心にした勉強会に模様替えしていて、やっぱりエマちゃん本気なんだなあ、と感心。

 食べ終わって食器を下げてから、コーヒーのラージサイズを2つ注文して、携帯用マイ魔法瓶に詰めてもらう。これにて夜の支度は万全。


 部屋に戻って、ジャージに着替えようと思ったけれど、8時から宮森おばさんとのSkype会談があるのを思い出して、ちょっとマシな私服に着替える。宮森おばさんが「Skypeチャット」というときは、つまりビデオチャットのことなので、上半身だけでも格好を整えないと。ついでに壁の黒○ス・ポスターも、PCのインカメラに写り込まない壁面に張替え。

 インカムも用意して、準備万端になったところで、夜7時。

 1時間暇になった。


 いや、暇じゃないし。

 カバンからノートを取り出し、本日の授業の復習。親切な先生が「ここテストに出るよ」宣言をいくつかしているので、その部分を個別にまとめなおす。暗記系の教科はこれをやっておくかどうかで、だいぶ変わる。


 作業しているうちに、夢中になっていたようだ。ふよよん、と気の抜けた音がノートPCから鳴り響く。Skypeの着信だ。発信元は宮森学長。


 私はノートを片付け、着信ボタンをクリック。少しラグったのち、お仕事モードできっちり固めた宮森学長の姿が画面に現れた。背景を見るに、ホテルの部屋からの通信っぽい。インカムをUSBのポートに差し込んで、音声チェック。


「こんばんわ。声、大丈夫ですか? ここの無線LAN、少し弱いみたい」

「大丈夫です。こちらの声、大丈夫です?」

「大丈夫みたいね」

「よかった。そちらはお昼なんですね」

「サマータイムだから、こっちはちょうど午後1時。フランクフルトはいい天気ですよ。そっちはどうです?」

「もう暑いくらいです」


 話すべきことは決まっているのに、天気の話題から入るのが、仕事モードのおばさんらしい。


「じゃあ、あなたも試験勉強で忙しいでしょうし、手早く要件を話しましょう。

 まず最初に、謝罪からです。悪いとは思ったのですけど、あなたの『ユスティナ・ノート』、スキャンしたものを、メールしてもらいました。ひと通り、目も通してます。そうしなくてはいけない事情があったのです。

 でも、事後承諾になってしまったのは、弁解の余地もありません。すみませんでした」


 うへえ。あれ、読まれたのかー。

 ちょっとばかり、顔が青ざめる……青ざめたけれど、いよいよこれは、普通の状況じゃあない。「ユスティナ」って、海外出張先でまで、急いで内容を確認すべきと判断されるような、そんなキーワードなの?


「――いえ、その、とても恥ずかしいですが……読まれて困ることも書いてないですし、構いませんよ」


 慎重に、言葉を選びながら、返答。


「本当に、ごめんなさい。それから、事情を説明する前に、ひとつ質問させてください。

 あのノートは、高梨さんが自分で考えて書いたものですか?

 それとも、お母さんに何か聞いたりしましたか?」


 きた。最大の謎ポイントだ。

 メールをもらったときからずっとこの点について考えたり、思い出したりしているが、「ユスティナ・ノート」を書いていた頃(つまり小学生の頃)、特に内容について母に喋ったり、逆に、母が話してくれることを内容に反映させたりは、していないはずだ。


「あのノートに書いたお話は、完全に私が自分で作ったものです。

 もちろん、当時読んでいた類似作品の影響はあちこちに出ていると思いますが、母には見せたことも話したこともないですし、母のしてくれた話を盛り込んだりもしていません」


 高森おばさんは、「そう」と呟くと、何度も頷いた。おばさんが、深く何かを考えているときの仕草。


「――分かりました。そろそろ、あなたも知っておいたほうがいいでしょうから、お話します。

 ただし、いくつかの名前は、伏せます。まだこの話は、完全に片がついたとは言えない部分があるからです。あなたが18歳になったら、関係者を集めて、そこですべてを教えます。それでいいですか?」


 ぞくり、と寒気。そんなとんでもない話と、「ユスティナ」が、どう絡んでいるというのか。

 でも、ここは頷くしかない。君子危うきに近寄らず、深くは聞かないというのも手だが、そんなことをしたら不眠症になってしまう。


 宮森おばさんは、もう一度、深く頷くと、ゆっくりと話し始めた。

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