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*2* 出会い

――・・・もう二時間近くこのままだろうか。

相変わらずここには誰も来ない。

と、いうか来たのにもかかわらず気づかなかったのかもしれない。

なぜかというと・・つい、そう、「つい」眠ってしまった・・。


そろそろ起きるか・・。

起き上がろうとしたが本能ではまだここにいたいらしく、しつこく体が動かない。

「ウーーーーーー・・・。」

すると、ふいに目の前が真っ暗になった。


・・・雲?雲が太陽にかかったから、ここ一帯が少し暗いのか??

そんな事を考えてまた、安心感に浸る。


・・・だが・・妙に変だ。

一向に明るくなる気配が無いし、明るくならない。

あ・・もしかして・・・・い、いやそれはありえない・・

そんな非現実的な事はうううううう受け入れないぞっ!

そんな事を考えてぎゅっと目をつぶった。

すると今度はさっきよりも暗くなった。だんだん焦り始めてくる。

だ、大丈夫だ俺。今までの武勇伝を思い出すのだっ・・・・って

何もねえじゃねーか!俺!!

とか何とか思いながら一人で突っ込んでみる。

さっきまで暑くて汗まで出てきていたのが、今度は冷汗まででてきてしまった。


刻々と時間は経っている。

この砂浜にずっと緊張が走っている。

あー・・・もう俺、無理かも。頭どうかなっちまう・・。

そして、ついに我慢できなくなって目をおそるおそる開けた。

・・・・・いや、現実逃避をしてはいけないと思ったのかもしれない。



「ぬぅおおおぉ!?って、デゥエタアアアアァーーーーッ!!!」「きゃっ!」

・・・・・・居た。

この世の物ではない、得体の知れないものが、居た。

深夜はすっこけながらも一目散に自転車の方へと走った。

そりゃもう走った。死ぬ気で走った。オリンピックで黒人のランナーと同レベルぐらいの速さで走った。

あと一歩で自転車!という所で何か違和感を感じた。

・・・あれ?さっきの何かこの世の物ではない得体の知れないものが「きゃっ!」とか言わなかったか?

おそるおそるペースをゆるめて後ろを振り返って見る。

すると、そこには「この世の物ではない得体の知れないもの」・・なんかではなく、

深夜と同年代くらいの普通に「得体の知れている」女の子だった。





「・・・・・・あ。」




   ***



「本っ当にすませんですた。」

彼女のペースに合わせて自転車をひいてた。

もう何回言ったか分からないお詫び・・・謝罪のコトバ・・・。

しかも咬んだ。咬み咬みだ。

んでもって制服はびっしょびしょ。

それなのに彼女はプッと吹き出して笑った。

「あっはは!おっもしろいなぁ。あ、そういえばまだ名前言ってなかったし聞いてないよね、

私は渡邉優姫(わたなべゆうき)っ。」

「あー・・・そだそだ。俺は――・・・」

「・・・俺は?」

「・・・・・何だっけ。」

「プッ・・・アハハハハ!!」

マジボケした。彼女、優姫て言う子はまた笑い出した。

よく笑う子だなぁー・・。

とか考えながら横目で彼女を見やる。優姫はお腹を抱えて苦しそうに笑っている。

あ・・。

よく見れば結構肌は白く、髪は肩よりも長い。ぱっちりした瞳、少し垂れ目だけど。

すごく整った顔立ちだ。

・・・何ていうんだろう・・・「ビジン」?

あー・・そんな感じだ。よくクラスの男共が言ってるやつ、

「ビジン」とか「カワイイ」とか。俺は興味ないからよく分からないけど。

ともかく一言でいうと・・その「ビジン」と言うやつだった。

ん・・?あり?

まじまじと良く見ると気になることが浮かんだ。

何で彼女は、制服なのだろう?

そして・・・何処かで見た事があるような気がする・・。

すると、

「で?何で深夜はあんなとこに居たの?」

ようやく笑いが止まったが目には涙を浮かべている。

「え・・名前。」

優姫は次の言葉を悟ったのか彼の胸を指差した。

・・あぁ、名札。

彼の納得した顔をみて優姫がにっこりと笑った。すごく綺麗に笑っていた。

だが、その時俺は「何で笑ってるんだ?」としか思っていなかった。

こんなに綺麗に笑っているのに・・・。


「あ、ところで優姫・・・渡邉さん?は何故に制服であんなとこにいたのでしょーか?」

少し固まりながら言っていた。

「え?あ、優姫でいいからね。あとその質問、先に私が言ったんだけどね・・まぁ良いけど。

・・・・・制服なのはー・・・・サボっちゃった・・からかな?」

「へぇー・・。」「あ、でも初めてだよ?これが初めてだからね!?」

意外だなーとか思ってる深夜に必死に訴えてくる彼女。何だか笑えた。

「あ、何で笑ってるの?」

・・また笑える。優姫は顔が真っ赤っかだ。

「あー・・ごめんさい、なさい。まぁ・・うん、俺もサボっちゃったーみたいなだから。」

あ。自分の事喋るなんて・・いつも適当に答えているのに・・

しかも初対面の人。

あんまり人に自分の事を喋らないので反射的に自分の口に手を押さえてしまった。

でも、あまり彼女は気にしてない様子だった。

「?どうかした?・・あ、っていうかさ、サボっちゃったんだよねっ仲間だよ!仲間!」

「あ、でも初めてだよ?これが初めてだからね!?」

つい彼女の口調をマネして言ってしまった。優姫は「何それー・・」とか言って一瞬顔を強張らせたが、すぐにゆるめてまた笑い出した。

大げさなくらい笑っていたが、全然うるさく感じなかった。




―――佐藤 深夜(サトウシンヤ)。未だに初恋の「は」の字も知らない十四歳。中二。

趣味は・・特には無いけど無理やりやらされたピアノって事で。




―――渡邉 優姫(ワタナベユウキ)。一応初恋は知っている十四歳。中二。趣味は・・同じくピアノ。




え・・・・



ピアノ?あ、もしかして・・・・・・・






――・・・そう。これが僕らの出会いだった。









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