*1* 海
ザァァーーーーーン―――・・・・。
海の波のオトがやけに耳に響く。
***
午後一時半。
真っ青な空。白い雲が一つ、二つ、三つ・・・・・
そして真っ青なウミ。
よく・・だかは知らないけど、小さい子達が『海と空ではどっちの方が青いか。』とか言って話し合ってるのを見かける事がある。
別にどーでも良いけど俺は空だと思うなー・・・
そんな事を考えながら海の方ヘと自転車をこぐ。
ペースを上げたりゆるめたり・・。それにしても暑い。
まぁ夏だから仕様が無いことだが、でも、これはもう、暑いって問題じゃないだろう・・。
キコキコキコ.....
本当に暑いとか言い様のない暑さ。
そんな真夏の暑さの中を自転車のペースを速め、ゆるめ、こぎながら約二十分。
やっと目的地に着いた。
「や、やっと・・ついたぁーー・・・ッ。」
とか言ってすばやく自転車から飛び降りて走り出す。
「あ。自転車ー・・・。」
とか思っても結局そのまま倒しっ放し。
誰もいない砂浜の上を思いっきり走る。
ぃよぅしっ!じゅんびたいそーしゅーりょー!
只がむしゃらに突っ走っただけの「じゅんびたいそー」と思えない行動を「準備体操」とムリヤリ思いこんだ。
そして青い、淡い水の方へと近づく。そこで・・
「あ。」
ようやく自分が身に着けている衣類の格好に気づいた。
半袖のYシャツと黒いスーツの様なズボンの制服・・・。
もしここに自分以外の誰かが居たとしたら必ずこう思うだろう。
――・・・あぁ、こいつ学校をサボったんだな・・・、と。
そう、学校をサボった。しかも、中学校。
まだ早いと思ったが・・・大丈夫だろう。
成績だって特に悪くない、むしろ良い方だ。授業中だって居眠りした事無いし、提出物だってちゃんとあげている!ココはちょっと自慢。
そしてそして何といっても・・・・「せーとかいやくいん」。
そう、「せーとかいやくいん」。
これでも結構真面目君な俺。
だから、いきなり「朝から頭痛が酷かったので・・早退します」・・とか何とか言った時は誰も疑う人なんて居なかった。
サボった理由・・・・そんなものは特に無い。
ちょっとやってみたかった好奇心とココへ来たかっただけ。
そんなこんなでもうどうしようも無かったから豪快に制服の裾をまくり上げた。
・・・・結局制服で海に入ろうとするし、自転車はそのままだし、
「じゅんびたいそー」もろくにやらないし・・・・もうぐちゃぐちゃだ。
だが、もう過ぎてしまった事。
そうして彼は、青く淡く漂うモノの上に大の字で仰向けに倒れこんだ。
バッシャァァーーンッッ・・・。
――ふぅ・・・・たまにはこんなのも良いかもな。
そうして手を空にかざしてみる。
すぐ手の側にある雲がつかめそう。・・でもつかめない。分かってるけど・・・。
そうしているとさっきまでジリジリと自分の皮膚を焼きつけていた太陽の日が何だか穏やかになってきた様な気がする。
すごく心地よくなって目をつむった。
「スーーー・・・・・・ハーーー・・。」
大きく息をすってゆっくりとはきだす。
・・・・・何だか眠くなってきた。
寝るのは、好きだ。
というか夢を見る事、か?
非現実的な事がありのまま普通に受け止められる。
何だか、面白い。
あぁ、もういっそこのまま眠っていたい。
そーすりゃもう起きなくて済むし、あんなのも弾かなくて済むんだぁー・・。
どんどん気が遠くなってくる。
あ。
そういえば俺の名前って・・・なんだっけ?
こう、心地よくなると何もかも記憶があいまいになってくる。
あ・・・思い出した・・・・
サトウ・・・シンヤ。
そ、佐藤深夜
14歳。中2。
誕生日とかは・・どうでも良いけど。
あ、そうそうフツーはこの後趣味とか言うんだよな。
趣味・・・・・まぁ特には無いけど・・・ムリヤリやらされた、『ピアノ』とか?
・・・・うん。
そーだ。