第8話:無理ゲーすぎて草、いや魔界の頂点とかマ!?
『……おい。起きろバカ人間。いつまで寝ている』
窓から差し込む朝日に照らされ、凛愛は不機嫌そうにまぶたを震わせた。
耳に届くのは、朝から不必要なまでに響く極上の低音ボイス。
「うぁ、イケボ……んぅ……あと五ふぅん。ログインボーナス……受け取らなきゃ……」
『受け取るのは3日後、あの変人エルフの所だろうが。さっさと起きろ!』
「……はっ!? そうじゃん! チュンペー、あたしの相棒、没収中だったわ!」
ガバッと跳ね起きた凛愛は、寝癖全開ボサボサの金髪を振り乱しながら、昨夜の記憶を整理する。
そうだ、ここは異世界。
隣にいるのは、昨日「クロウなんとか」だかなんだか名乗っていた気がするが……寝たら忘れた。
今は、生意気なイケボ雀のチュンペーだ。
「ねえチュンペー?昨日言ってた契約の話だけどさ……結局あたし、何をすればいいわけ? 協力するって言っちゃったし、一応聞いといてあげる」
チュンペーは凛愛の肩に飛び乗ると、真剣なトーンで告げた。
『極めて単純だ。貴様がこの世界の魔界へ乗り込み、七大貴族を力で、あるいは知略で制し、その頂点――すなわち次期魔王として君臨することだ』
「…………は?」
凛愛の思考が数秒フリーズした。
「……え、待って。魔界のトップ? あたしが? ゴミステだし、運動会は基本見学だった、このあたしが……魔王になるってコト?」
『そうだ。我が弟アザエルから出された条件だ。連れてきた人間を王にしてみせろ、とな。それが成れば我が呪いも解け、貴様も元の世界へ帰れる』
「……無理無理無理! 詰んだ! はいアンインストール! ガチの無理ゲーじゃん! 攻略サイトないの!? 難易度設定プロ過ぎて草!一気に最高難易度まで飛んだんだけどぉ!?」
絶望してベッドに突っ伏す凛愛。
運10だけで生き抜いてきたギャルにとって、魔界制覇はあまりにも現実味がない。
『……騒ぐな。今すぐやれとは言わん。およそ一年後、魔界にある魔界エリート学院へ七大貴族の跡目たちが集う。そこへ貴様を特別枠で入学させる。それまでに使い物になるよう、我が鍛え上げてやる』
「一年後に……魔界の学校へ入学……? てか、魔界に学校あんの?ウケるんだけど!……え、つまり、一年かけて修行するってコト?」
『そうだ。まずは解析が終わるまでの三日間で、最低限の準備を整える。装備を固め、知識を詰め込む。いいか、バカ人間。貴様を我らの悲願を成すに足る存在へ作り変えるのが我の役目だ』
「……えっ、チュンペーに、あたしが、ガチで詰められるんだ……」
凛愛の脳内で、黒髪ロングの冷徹なイケメンが「立て、バカ人間。修行の時間だ」と冷たく見下ろしてくるビジョンが浮かぶ。
「ヤバ……詰められるとか、ちょっと……ゾクゾクしてきた……❤︎」
『何をニヤついている、気持ちの悪い。まずは市場へ行くぞ……おい、その前に手持ちを確認しろ。昨日の残りはいくらだ』
凛愛はスクールバッグのポケットをガサゴソと探り、小銭をベッドにぶちまけた。
「えーっと……昨日拾った金貨が三枚っしょ? で、あの闇市場のババアに巻物で金貨一枚ボッタクられたじゃん? あとは宿代で銅貨15枚出したから……」
指を折って数える凛愛の横で、チュンペーが呆れたように鳴いた。
『……金貨1枚、銀貨9枚、銅貨85枚か。巻物に金貨一枚は痛手だったが、致し方なかった』
「うわ、意外と減ってんじゃん……オワタ。でも、あたしが最強キャラになるための投資っしょ?
おっしゃ〜!一年後の魔界入学目指して、まずは課金(お買い物)しに行こ〜!」
凛愛は鏡の前でカラコンを入れ直し、ボッサボサの髪の毛と、ネイルのツヤを確認する…….ため息。
たとえ魔王への道が無理ゲーでも、最強の相棒と一緒に楽しむのも悪くない。
凛愛はスクールバッグを肩にかけ、意気揚々と部屋を飛び出した。
「銅貨おっも!」
現在のステータス
名前:星凛愛
状態:やる気スイッチON(M気質覚醒中)
所持金:金貨1枚、銀貨9枚、銅貨85枚
目標:一年後の魔界学院入学、および魔界七大貴族の制覇




