第19話:初ファイアで爆上げ!からの……!?
バイト終わりの翠霧の森。
エルドリンの手で魔改造されたスマホを手に、凛愛は勝ち確の予感に震えていた。
「……よし!やるよー?」
『……落ち着いて集中しろ、魔力を手のひらに集めて、スマホを触媒として通す』
エルドリン曰く魔力0でも、意識を集中させれば微量の魔力が生まれる。
それをスマホを通して増幅させることで、初級魔法が使えるという。
「ねえ、見て!スマホがマジで杖代わりになるとかエモすぎ!魔法といえば……やっぱ火っしょ!火ぃ出ろ!ファイア〜!」
全く反応しない。
「あれぇ……発音かな〜?Fire!」
と叫んだ瞬間、画面からピンポン球くらいの小さな火がぽわんと浮かんだ。
「!……出たぁぁ!マジで魔法出た!あたし、ついに異世界ヒロインとしての第一歩、踏み出しちゃった感じ!?神展開なんですけどぉ!」
はしゃぎまくってスマホを振り回した、次の瞬間。
パキィィィン!
指にはめていた魔力反応の指輪が、粉々に砕け散った。
「え、待って……あたしの魔力、覚醒しすぎて指輪が耐えきれなかった系!? 覚醒イベント来ちゃった!?」
浮かれるあたしの隣で、チュンペーが聞いたこともないような冷たい、地を這うような声で言った。
『……来る』
「え……?」
大気が震え、森の木々がざわめき出す。
目の前の地面に、どす黒い赤色をした爆炎の魔法陣が展開された。
そこから溢れ出したのは、立っているだけで全身の毛穴が閉じるような、圧倒的な殺意と威圧感。
「っ……え……」
腰が抜けた。震えが止まらない。
魔法陣の中から現れたのは、逆立つような髪と、全てを見下すような黄金の瞳を持つ男。
「アザエルの言っていた特別枠とは…お前か?オレは魔界七大貴族の一角、竜族ドラグリア家、次期当主グラディアスだ」
あまりの恐怖に、声すら出ない。
心臓の音が耳元でうるさく鳴り響く。
『…落ち着け……おそらく貴様を見定めに来たのだろう』
チュンペーの声が遠く感じる。
グラディアスは凛愛をゴミのように一瞥して、静かに語り出した。
「500年前、クロウヴァルドが消えてから、魔界を統べる者は不在。後釜が決まらぬまま、混迷だけが続いた。七大貴族が互いを牽制し合い、誰も動かぬ……つまらぬ時代だ」
(……ム、ムリ……こんなの勝てるわけないじゃん……)
「そこへ、人間を含めた魔王の座の奪い合いが始まると聞いた。どんな者が来るかと思っていたが……」
グラディアスがふっと目を細め、凛愛の顔を覗き込んできた。
「……偶然か? 貴様、どこかで……」
彼が何かを言いかけた、その時!
「ココだねっ!吾輩が参上したよぉ!!」
「リア!大丈夫かい!?」
森の奥から、血相を変えてエルドリンとアルメリアが駆けつけた!
「あ、あ……アルメリア……さん……っ」
凛愛はアルメリアにしがみつき、堪えていた涙がブワッと溢れ出した。
「スンゴイ魔力反応で計測器がイカれてしまってねぇ!キミの身に何かあったのではと、参じたまでだよ!やったね!吾輩!!」
「やったね!じゃないよ、バカッ!」
アルメリアさんがエルドリンさんを怒鳴りつけながら、あたしの背中を優しくさすってくれる。その温かさに、ようやく息ができた。
グラディアスはそれを見て、興味を失ったように踵を返した。
「……まあ、いい、楽しみにしているぞ……特別枠よ」
轟音と共に爆炎が上がり、彼は一瞬で姿を消した。
あたしは震える手で、スマホをぎゅっと握りしめた。
ゴミステとか……そんなこと言ってる場合じゃない。
魔界、マジで命がいくつあっても足りない気がした……。
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• 状態: メンタル崩壊寸前(でも生存確認)
• 解放機能: スマホの魔法触媒化(初期魔法「ファイア」成功)
• ロストアイテム: 魔力反応の指輪(砕損)
• 遭遇: 魔界七大貴族・竜族グラディアス
• 謎: グラディアスの「どこかで……」という言葉の意味は……?




