第17話:情報屋を探せ! 外縁区、マジ怖いんですけど……でも行く!
「あ、あの……ミリナちゃんっ!」
商業区の露店に転がり込んできた凛愛を見て、ミリナが目を丸くした。
「わ、お姉さん!? どうしたの、息切れてるじゃん」
「スマホ、盗られた……! さっき大通りで、誰かにぶつかられて……気づいたらなくなってて……マジでありえないんだけどぉ!!」
「え!? いつも手に持ってるあの黒いヤツ?」
「そう! あれないとあたしの人生ログアウト同然なんだけど! ミリナちゃん、こういう時ってどうしたらいい!? 誰か頼れる人いないのぉ!?」
ミリナは少し考えてから、人差し指を立てた。
「……外縁区に、情報屋さんがいるよ。シェイドって人」
「情報屋? なにそれ、攻略サイトのリアル版的な?」
「…うん?アヴェントリアのことなら何でも知ってるって話。盗品の流れとかも全部把握してるらしいよ。ただ……タダじゃないし、外縁区だから、ちょっと怖いところにいるんだよね……」
凛愛はごくりと唾を飲んだ。
「外縁区……あの、治安死んでるって噂の……?」
「お姉さん一人で行くの? 大丈夫?」
「……チュンペーがいるから、たぶん大丈夫……たぶん。……いや、絶対取り返すし!」
『……たぶん、ではない。大丈夫だ』
チュンペーが頭の上から短く告げる。赤いマフラーがふわりと揺れた。
ミリナがそれに気づいて、ぱあっと顔を輝かせた。
「あ! チュンペーちゃん、マフラーしてる! めちゃくちゃカワイイ!!」
『……チチッ!(小娘がッ!)』
「あはっ、怒ってる! でもカワイイ!!」
「でしょ!? あたしが貢いだ……じゃなくて、作ってもらったんだよ! ……って、今そんな話じゃなかった! シェイドさんってどこにいるの!?」
「外縁区の東、路地の奥だよ。気をつけてね、お姉さん!」
商業区を抜け、外縁区に入った途端、空気が一変した。
石畳はボロボロ、建物は煤けていて、路地の奥が真っ暗。壁にもたれた男たちが、ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
「……こわっ。無理、人見知りのキャパ超えてるんですけどぉ……」
『……俯いて歩け。目を合わせるな』
「は、はい……了解……」
凛愛は言われた通り、視線を地面に固定して早歩きした。
(ねえチュンペー、シェイドって人、スマホのこと知ってるかな?)
『……知っている可能性は高い。あの手の人間は、街の呼吸すら把握しているからな』
(監視カメラ並みの精度じゃん……。でも、お高いんでしょ?)
『?……内容による。スマホの行方程度なら銀貨二枚ほどではないか』
(銀貨二枚!? 痛すぎ……! あたしのバイト代が飛んでいくんですけどぉ……でも、相棒には代えられないし……あー!ウザぁ!)
路地の奥。
看板もない建物の前に、フードを深く被った男がいた。
ダークエルフ特有の暗い肌。目が合った瞬間、男がにこりと笑った。
「……これはこれは。珍しいお客さんで。あっしに何か御用で?」
低くてなめらかな声。
愛想はいいけど、目の奥が全然笑ってなくてマジで怖い。
「あ……えっと……シェイドさん、ですか……? ミリナちゃんから聞いて……きました……」
「ほう、ミリナちゃん……でお嬢さん、今日はどんな情報を?」
凛愛は震える手をぎゅっと握って、精一杯の勇気を出した。
「……さっき大通りで、黒い板……スマホを盗まれました。誰が盗ったか、今どこにあるか……教えてください」
シェイドの眉がぴくりと動いた。
「……黒い板。ほう。……今日の昼過ぎ、それを持っていったのはラグの子たちですね」
「ラグ……?」
「外縁区の盗賊頭でさあ。盗んだ金をスラムに配る義賊気取りですが……まあ、盗みは盗み。銀貨二枚で、居場所を教えましょう」
凛愛はチュンペーをちらりと見た。チュンペーが小さく頷く。
「……払います。はい」
銀貨二枚を渡すと、シェイドはにこりと笑った。
「毎度。ラグなら今頃、外縁区の廃墟になった宿屋の裏にいるはずですよ。あの子、板の正体がわからなくて持て余してるはずです。筋を通せば話は聞く奴ですよ」
「……ありがとうございます」
立ち去ろうとする凛愛の背中に、シェイドの声が届く。
「お嬢さん。あの黒い板、だいぶ有名になってますよ。随分と……面白いものを持ち歩いてる」
「……誰から聞いたんですか」
「情報屋ですので」
ニヤリと笑う男を背に、凛愛はそそくさとその場を離れた。
路地を出て、凛愛は「ふぅー……」と深呼吸した。
「……あいつ、マジで何者? 底が見えなさすぎて鳥肌立ったんですけどぉ……」
『……そういう人間だ。だが情報は正確だろう。行くぞ、ラグのところへ』
「うん……ねえチュンペー」
『なんだ』
「チュンペーが一緒で、ガチでよかった。一人だったら石化して詰んでたし」
『……当然だ。我がいなければ貴様は外縁区の肥やしになっていたな』
「言い方! でもまあ……ありがと、行こ!」
赤いマフラーを揺らして、チュンペーは凛愛の髪に潜り込んだ。スマホ奪還まで、あと少し。
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• 状態: 緊張で手汗ヤバいけど、犯人特定でやる気モード
• 出費: 銀貨2枚(情報料)ウザっ
• 目的地: 外縁区の廃墟宿屋(犯人・ラグとの接触)




