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第16話:チュンペーにアクセ買ってあげたら、スマホ盗られたんですけど!?

その日の午後。


バイトを終えた凛愛は、商業区の大通りをふらふらと歩いていた。

「……ねえチュンペー、あたしずっと思ってたんだけど」


『なんだ』


「チュンペーって、毎日あたしの髪に潜り込んで、肩に乗って……ずっと一緒にいるじゃん。なのに、何もつけてないの寂しくない? あたしはネイルもカラコンもアクセも全部揃えてるのに、チュンペーは素のままで……なんか、ギャルの相棒失格なんですけどぉ!」


『……我は雀だぞ。装飾品など必要ない』


「必要とか関係なくない!? 盛りたいじゃん、アクセ! あたしが選ぶから! 絶対似合うって、一回信じてみてよぉ。ね? ダメ?」


『……ダメだ』


「……ハイ却下。チュンペーがイヤって言っても、あたしが勝手に買うから。決まりー!」


『……貴様、聞く気がないなら最初から問うなと言っただろうが』


チュンペーが頭を小突いてくるが、凛愛は競歩並みのスピードで歩いていた。


ミワナ・ハイガーメント工房は、カラフルな布や革が詰まった賑やかな場所だった。


「ここも、来てみたかったんだよね〜♪」


カウンターには、ガタイのいいドワーフの女性。凛愛は人見知りを発動しつつも、推し(チュンペー)のために勇気を振り絞る。


「あ、ぇっと……こ、こんにちは……この子に、マフラー……作ってほしくて。赤い、ちっちゃいやつ……お願いできますか……」


女性はチュンペーをしげしげと眺めて、ニカッと笑った。


「雀ちゃんにかい! 面白いねぇ。汚れがつかない魔法加工込みで、銅貨15枚でどうだい?」


「安っ! 神! お願いします!!」


『……勝手に決めるな。我の威厳が……』


チュンペーの抗議をスルーして待つこと十分。こぢんまりとした赤いマフラーが完成した。


「うわぁ……! めっちゃカワイイ……!」


凛愛は目を輝かせながら、チュンペーの首にそっとマフラーを巻く。

「似合う! 超絶似合ってる! このふわふわ感、優勝なんですけどぉ!!」


『……離せ、バカ人間。……むぐっ』


「離さないし! もう一個、これつけてあげたいの!」


凛愛はスクールバッグをごそごそと漁って、奥底から小さなハート型のチャームを取り出した。


「これ、あたしの世界ですごくお気に入りだったやつ。チュンペーに、ネックレスにしてつけてあげたくて……ハートのチャーム、カワイイじゃん?」


元の世界から持ってきた、唯一のジュエリー。

それをチュンペーに捧げる。凛愛なりの、最大の信頼の証だった。


『……ハート? 何故ハートなんだ。我の威厳が……』


「あたしが好きだから! あたしの一番お気に入りを、チュンペーにあげるの!特別だよ?」


『……それは我の意見を聞いていないぞ……まあ、好きにしろ』


女性が笑いをこらえながら、細い革紐にチャームを通してくれた。


「はい、できたよ。かけてあげな」


赤いマフラーに、キラキラ揺れるハートのチャーム。凛愛の一番のお気に入り。


「……完璧すぎる……!! チュンペー、マジで世界一カワイイ……!! 写真撮りたい! スマホないけど!」


『……フン。好きにしろ』


文句を言いつつも、チュンペーは逃げなかった。ハートのチャームが、その小さな胸元で揺れている。


「……似合ってるよ!本当に」


凛愛が顔を近づけて囁くと、チュンペーはそっぽを向いた。


『……好きにしろ、バカ人間』


いつもより、少しだけ声が柔らかかった気がする。

工房を出て、凛愛は鼻歌まじりに歩いた。


「えへへ、チュンペー、実は気に入ってるでしょ? 鏡見せたいわぁ」


『……話しかけるな……照れてなどいない』


「照れてるじゃん❤︎ 羽がふわってなってるよ?」


『……風のせいだ』


「ほ〜、無風なんですけどぉ〜?」


二人がそんなやり取りをしていた、その時だった。

人混みの中で、肩が誰かと強くぶつかった。


「あ、すみま……せ」

振り返ったが、相手はもう雑踏に消えていた。


何事もなかったように歩き出して、数秒後。

「……あれ」

習慣でポケットに手を入れた……ない。

「……え」

もう一度、奥まで探る……ない。


バッグの中もひっくり返した。

……どこにも、ない。


「……ない!? スマホ、ないんだけど!!!」


『……落ち着け』


「落ち着けるわけないじゃん!! あたしの相棒! あたしの命!! さっきのぶつかってきた奴!? どこ!? チュンペー、見てた!?」


『……我もアクセに気を取られていた……不覚。だが焦っても見つからん、情報を集めるぞ』


「サイアク……絶対、取り返す……せっかくチュンペーデコってサイコーの気分だったのに!!」


凛愛の目が、これまでにないほど鋭くなった。

チュンペーが赤いマフラーを揺らして、凛愛の髪の中に深く潜り込む。


『……行くぞ、バカ人間。』


「……うん、とつげきー!」


今度は、いつもより力強く頷いた。


現在のステータス

• 名前: 星凛愛ホシ・リア

• 状態: 激おこモード(スマホ盗難により怒りMAX)

• 新アイテム: チュンペー専用マフラー&お気に入りのハートネックレス(装着済み)

• 所持金: 金貨1枚、銀貨14枚、銅貨40枚(出費引き済み)

• 次の目的地: 外縁区の情報屋(スマホ奪還作戦開始)

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