第12話:装備ガチャとギャルの目利き、キラキラ市場で散財したいっ!
翌朝。
木漏れ日亭の朝食は、素朴なパンとスープだった。
「……んぅ……普通に、めっちゃおいしい……」
「嬉しいねぇ、うちは料理だけは自信があるんだよ。もう一杯どうだい?」
マーサの問いかけに、凛愛は一瞬ビクッとして俯いた。
「……ぁ、ぃ、いただきます……マーサさん、ガチで神……」
蚊の鳴くような声で答え、スープの皿を差し出す。
『……相変わらず慣れん相手にはビビっているな…食ったらさっさと動くぞ。今日は市場で装備を揃える』
チュンペーが凛愛の頭の上から、パンくずを狙うように首を伸ばした。
「はいはい、わかってますってぇ……あ、チュンペーも食べる? パンちぎってあげよっか?」
『……我は雀だ。虫でも啄めば済む』
「え、かわいそ……虫より絶対パンのほうがおいしいじゃん。ほら、ちょっとだけ食べなよー?」
『……いらん』
(……食べてるじゃん、こっそり食べてるじゃん!)
凛愛は心の中で叫んだ。マーサがいる前で大声は出せない。
(クチバシにパンくずついてるじゃん。……かわいすぎなんですけどぉ!)
マーサが目を細めながらスープのおかわりをよそってくれた。
「あなたたち本当に仲が良いねえ」
「はぃ…もぉ、ほんと…えへへ」
チュンペーが「チチッ!」と短く鳴いた。
商業区の朝市は、昨日より人が多かった。
朝の光を浴びて、露店のガラス瓶がきらきらと輝いている。魔石のランプが柔らかく灯り、色とりどりの布が風にたなびく。
「……うわぁ……」
凛愛は立ち止まって、その光景をまるごと目に焼きつける。
「……なんか、涙でてきたぁ……あたし」
『……急に何だ』
「だってさぁ、なんか……ここ、ガチでいいなって。みんな元気で……こういう場所でお店出したら絶対楽しいじゃん。住みたいかも、ココぉ」
『……貴様の目的は元の世界に帰ることだろうが』
「わかってるって! 帰りたい気持ちも本当だし、でも……ちょっとだけ、そう思っただけじゃん……ダメ?」
『……しらん』
「……否定しないんだ? チュンペー、意外と優しいトコあるよね」
『うるさい、いいか、今日の予算は銅貨50枚以内だ。それ以上は使うな』
「え、少なくない!? 50枚って何が買えるの? 回復薬とか買ったら終わりじゃん!」
『残りは修行と消耗品に回す。資金管理は基本だ。戦争も商売も、金がなければ始まらん』
「え、なんか意外。チュンペー、実はデキるビジネスマンじゃん……あ、じゃ〜、あそこ行っていい?」
凛愛が指さしたのは、宝石と魔石が並ぶ水晶取引所の前の露店だった。
『……装備の話だろうが。五分だぞ』
「やった! チュンペー最高!」
取引所前の露店には、大小さまざまな魔石が並んでいた。凛愛は人見知りを一時的に忘れるほど目を皿のようにして、一つ一つを光にかざす。
「……えと、これ、なんです? 虹色に光ってる……めっちゃカワイイ……」
「それは虹蛍石ですよ、素材ですが…お嬢さん。銅貨8枚です」
白髪のエルフの店主にそう言われ、凛愛は即答した。
「……買う」
『おい待て』
「イイじゃん! 素材にもなるし! チュンペーだってアクセ揃えろって言ったじゃん!綺麗だしっ!」
『……一個だけだぞ』
さらに隣の露店で、凛愛の足が止まった。
「……! チュンペー、見て。この指輪、めっちゃ細工が細かくてカワイイ。銅貨19枚……安くない!? えっ待って、誰が作ったのこれ!?」
「お目が高い。それは魔力感知の指輪です。危険な魔力が近づくと、石の色が変わるんですよ」
「センサー付きアクセ!? 実用的すぎてヤバい。おしゃれなのに強いとか、あたしのために作られたやつじゃん!」
『……それは……悪くないな』
「チュンペーも認めた! 買う!」
その後、凛愛は市場を歩き回り、チュンペーに怒られながらも厳選を重ねた。
購入したのは、虹蛍石一個(銅貨8枚)、魔力感知の指輪(銅貨19枚)、回復薬の小瓶二本(銅貨10枚)。
合計、銅貨37枚。
「……ギリ予算内! やった! 節約したじゃん!」
『三枚余っただけだ』
「節約は節約じゃん! 褒めてよ!」
『……及第点だ』
「何それ……わかりやすく褒めてよ!」
『……くだらん……だが、貴様は昨日、七回逃げて八回目で仕留めた。諦めなかった。それだけで十分だ』
凛愛は回復薬をぎゅっと握った。
「……チュンペー、ありがとね」
『……礼を言うな、気持ち悪い』
「ひっど! せっかく感謝してるのに! でも、まあ……そういう素直じゃないの、あたし嫌いじゃないよ……ズルいんだよなぁ、ホントさ」
チュンペーはそっぽを向いたまま、羽根を一回ぶるっと震わせた。
「回復薬、うまぁ〜!」
『!?』
現在のステータス
• 名前: 星凛愛
• 所持金: 金貨1枚、銀貨9枚、銅貨53枚
• 新装備: 魔力感知の指輪、虹蛍石、回復薬×2
• 状態: 装備充実、心も少し充実(M気質的な意味でも)




