第11話:初ドロップと、ギャルの商魂「ショップ出したみが深い」
ウルフが光となって消えた地面に、ぽつんと残された小さな革袋。木から降りた凛愛は、まだガクガク震える膝を必死に押さえながら、その袋を拾い上げた。
「……ねえチュンペー、見て! 倒したらマジでアイテムドロップしたんだけど?コレ普通…なの?」
『……ふん、当然だ。絶命すればその素材や魔力に引き寄せられた品が結晶化して残ることがある……おい、いつまで座り込んでいる。さっさと回収して街へ戻るぞ』
「あ、うん…ここはRPGなんだね……なんでやねん!」
凛愛が袋を開けると、中には透き通った青い石の欠片と、乾燥した葉っぱの束が入っていた。
「……ん? なにこれ?キラキラしてるけど宝石?
ヤーバく見えて安いやつでしょ?どーせ!」
『……それは魔石の欠片と銀糸草だ。魔石は燃料、草は止血剤の原料になる。大した額にはならんな、ミリナに渡せば喜ぶだろう』
「燃料かよ〜…… テン下げなんですけどぉ……でも、なんかこう……『自力で稼いだ』って感じ、悪くないかも……」
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商業区に戻りミリナの店へ着くと、彼女は目を丸くして凛愛を出迎えた。
「えっ、本当にお姉さん、一人で狩ってきたの!? 逃げ帰ってくると思ってたよ!」
「えぇ……あ、これ…ドロップしたやつ、銀糸草?だっけ…」
「すごい! ありがとうお姉さん! はい、これが約束の報酬だよ!銀糸草の分も上乗せするねっ」
ミリナから手渡されたのは、銅貨15枚と、緑色の液体が入った可愛らしい小瓶だった。
「これ、初級ポーション! ウチの特製だよ。お姉さん、傷だらけだし使って!」
「ポーション……!わぁ……ありがとう…!」
凛愛はポーションを光に透かし、うっとりと見惚れた。アイテムが増える感覚に、凛愛の収集癖が火を吹く。
(映えすぎじゃない!? この緑のグラデ、超カワイイ!あぁ、ヤバいわぁ…あたし、絶対!この街で一番カワイイ雑貨屋出す!)
『おいバカ人間。何か良からぬことを考えているな…魔界への準備が先だぞ?』
「分かってるってば! ……あ〜、それよりさぁ、あたしもう限界。マジで疲れたし、汗でベタベタ。お風呂入りたいし着替えたいんですけどぉ……」
泥で汚れた制服とガクガクの足を見て、ミリナが苦笑いした。
「あはは、そうだよね。じゃあ、私の知り合いがやってる宿屋を紹介してあげる。あそこなら安く泊まれるし、お風呂も綺麗だよ!」
「あ、ありがとう……ミリナちゃん、まぢ天使!」
ミリナに紹介状を書いてもらい、凛愛は引きずりそうな足取りで宿へ向かった。
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大通りから少し入った路地裏。蔦の絡まるレンガ造りの建物が、ミリナの言っていた『木漏れ日亭』だった。
扉を開けると、ふくよかで優しそうな女性がカウンターで帳簿を付けていた。
「いらっしゃい。あらあら、ずいぶんと派手に汚れた冒険者さんだねぇ」
「あ……どーもぉ。え、と…ミリナちゃんの紹介できました、凛愛ですぅ……」
凛愛が震える手で紹介状を差し出すと、女将のマーサは眼鏡をずらしてそれを読み、パッと顔をほころばせた。
「リアちゃんね、ミリナの知り合いかい! ああ、あの子にはいつもいい薬草を回してもらって助かってるんだよ。私はマーサ、ミリナの紹介なら一晩、銅貨10枚でいいよ。夕飯は終わっちまったけど…お風呂は今すぐ沸かしてあげるからね!」
「え…マジで….すか!? 安っ! 助かりますぅ……マーサさん、神……」
『……オドオドするな……バカ人間、さっさと風呂に入って休め』
チュンペーが凛愛の耳元で呆れたように囁くが、マーサには「チュンチュン!」と激しく鳴き騒ぐ元気な雀にしか見えていない。
「おや、威勢のいい小鳥さんだねぇ! あんたのことが大好きなんだね!いいよいいよ、うちは使い魔連れさんも歓迎だからね。さあ、二階の一番奥の部屋を使いな。お湯が沸いたら呼んであげるから!」
「あは…こ〜見えて、結構凶暴なんです……ありがとございます、マーサさん」
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「ふぁぁぁあ……お湯、超気持ちいい……チュンペー、あんたも入りなよ。ミリナちゃんも、さっきのマーサさんも、めっちゃ良い感じだよね〜?」
貸し切りの広い風呂で、凛愛は手足を伸ばして極楽気分に浸っていた。脱衣所のカゴの上では、チュンペーが羽を膨らませてそっぽを向いている。
『断る。我は羽根を濡らすのは好かん……さっさと上がって寝ろ。明日は二日目の修行だぞ』
「うわ、鬼だ……鬼雀がおる」
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現在のステータス
名前:星凛愛
状態:清潔感回復、ショップ経営への野望UP




