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第1話:ゆーしょー!とか言ってる場合じゃないんですけどぉ!?

来週の修学旅行に備えて、地元のスーパーでお菓子をパンパンに買い込んだ星凛愛は、重たいスクールバッグを肩にかけ、スマホを弄りながら歩いていた。


(明日、ネイルの予約入れてるんだよね……。久々に新作カラーにしようかな)


スマホの画面には、日課のソシャゲの通知がいくつも溜まっている。


(ログボ、今日も忘れずに回さないと。途切れたら本気で泣く。あと積みゲー、今週こそ崩す……絶対崩す……)


そんな取り留めもないことを考えながら、凛愛は画面をスクロールした。


「……あ、スマホの占い、今日のラッキースポット神社じゃん。マジ? 帰り道だし、一応寄っとく? ガチで神引きしたいし……」


お参りを済ませ、境内のベンチに座って日課のソシャゲを開く。だが、昨夜のゲーム夜更かしで、ウトウトと心地よい眠気が襲ってきた。


「……んぅ……スタミナ……漏れる……」


次に目を覚ました時、凛愛の視界は一変していた。

「……は? え、待って、ここどこ。背景グラ神すぎてヤバ……。っていうか、電波入んないんですけどぉ!? えっ?全アプリ通信エラーとかマジ終わってる……。ログボ! あたしのログボがぁぁぁ!!」


絶望してパニックになりながらスマホを連打する凛愛。そんな彼女の視界に、足元の古びた魔法陣と、見たこともない巨木が立ち並ぶ景色が飛び込んできた。


「……ま、マジ? これってもしかして……あたし、転生しちゃった系!? ゆーしょー! 異世界転生キター!!」


パァァァと表情を輝かせる凛愛。そんな彼女の頭の上に、一羽の鳥がふわりと舞い降りた。


『チチッ! チチチッ!!』


「……え、まって。スズメ……? にしてはデカい? てか、超カワイイんですけどぉ……!」


凛愛が触ろうとする。だが、その雀は愛でられるのを拒むように、凛愛の髪の毛をしつこく引っ張り始めた。そしてまっすぐ、霧の奥を見つめる。羽をひとつ、はっきりとその方向へ向けた。


「……あっちに行けってこと?」


雀は答えない。ただもう一度、霧の奥を見つめ凛愛の頭を突いた。


「ちょっ、痛い痛い! もおー! 分かった分かったってばぁ! カワイイなーもう!」


『チチチッ!!(バカ人間! 浮かれておらんとはよ動け!)』


引っ張るのをやめた雀が、今度は凛愛の顔をじっと見つめた。小さな頭をかくんと傾け、黒い瞳がまるで「どうする」と問いかけているようだった。


「……なに、自己紹介したい感じ? じゃああたしも……って、あんたに名前ないと呼べないじゃん。えーと……チュンチュン鳴くから、チュンペーちゃんね! よろしく、チュンペー!」


『チチッチッ!(名前じゃねー!ダセェし……)』


あまりのネーミングセンスにチュンペーがガックリと項垂れ、思わず小さな足先で凛愛が握っていたスマホの画面を叩いた。


「あ、画面変わった………何これ、ステータス……? っていうか弱っ! なにこの数値、ゴミスペすぎて草も生えないんですけどぉ! 唯一『運』だけ高いの何なの? ネタキャラかよッ!」


自分の数値をボロクソに言っていると、足元にキラリと光るものがあった。


「……あ、金貨? 嘘、ガチで三枚も落ちてる。……え、もしかしてこれ、『運10』仕事しちゃった? ……マジ? 異世界ゲー勝ち組〜!」


偶然にしては出来すぎた幸運にテンションを爆上げしつつ、凛愛は金貨をスクールバッグにねじ込んだ。チュンペーが頭の上でぴょこりと羽を広げ、くちばしで凛愛の額をこつんと突いた。


「いたっ!……何、急かしてる? 早く行けってこと?」

雀は返事の代わりに、もう一度こつん。


「痛いって!……はいはい、りょ! カワイイのに凶暴だなぁ〜」


チュンペーを乗せたまま、霧の先に見える巨大な城郭を目指して歩き出す凛愛。そこは、大陸最大級の交易拠点――大交易都市アヴェントリア。


「……うーわ、ガチのRPGじゃん。マジで来ちゃったんだ、異世界転生。よーし、まずはギルドとか行っちゃう?」


高い城壁を見上げ、凛愛はゲーム脳特有のワクワクを抑えきれない。チュンペーがもう一度、こつん。


「いたっ! ちょっと、心の準備させてよ〜!」

モジモジしながらも、凛愛はぼそっと呟いた。


「……つーか、あたし、初期装備スクールバッグって、さすがに萎えるんですけど……」

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

転生した!ゆーしょー!と浮かれる間もなく、ステータスがゴミで頭を抱える凛愛をお楽しみいただけましたか。

次回、いきなり冒険者ギルドで洗礼を受けます。お楽しみに!

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