人の夢
夢を見る
そのたびに世界が生まれ、消えていく
目覚めたばかりの今はかすかに覚えている
どんな人が登場して
どんな表情をしていたか
その世界を知っているのは俺だけだ
これまでもたくさんの夢を見てきた
鮮やかな山野
暗い街角
アニメ調だと思えば
実写調にもなったり
友人がいて
見知らぬ人もいて
モンスターを剣で退治し
グロテスクな虫にたかられて
最初は冒険をしていたはずが
いつの間にか家の中で過ごしたり
すべて、俺が寝ている間にペンをとって描いた物語
その世界は確かに息づいていた
でも今でははるか遠い彼方
俺が描いたはずの物語は
切れ切れのページとなって飛んでいった
断片をかき集めても
けっしてもう一度読むことは出来ない
人の夢
これが儚いということなのか




