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野原望海のくだらない野望  作者: ポルポ
第一章 人数足りなくても実績あれば廃部にゃならない
4/4

第二話 ユートピアエヴァー・オンライン

 部活勧誘から数日が経った。

 今日から新入生を含めた本格的な部活動が開始される。

 それなのに風斗は家に帰ってきてしまっていた。


「さてと……トイレも済ませたしさっそく部活動を始めますか」


 机の上に置いてあったVRヘッドギア【DIVE】を被り、ベッドで横になる。

 ヘッドギアのバイザーを下げ、目を閉じる。


『レッツダイブ』


 その瞬間、風斗の意識はゆっくりと落ちていく。


『ヨウコソ、DIVEノ世界ヘ』


 そんな機械音声と共に彼の意識は覚醒する。

 真っ白な空間にいくつものシャボン玉のようなものにゲームアイコンが入っているのを確認する。

 風斗はその中から昨日部長に言われたゲームをアイコンの入ったシャボン玉に触れる。


『ユートピアエヴァー・オンライン、カセット認証。プレイ可能』


 音声が終わると同時にシャボン玉は破裂し、再び風斗の意識は落ちていく。


 ◆ ◆ ◆


 ユートピアエヴァー・オンライン。

 去年の年末に発売された神ゲーである。


 ゲームのあらすじ

 かつて【楽園】と呼ばれた巨大な王国があったが一夜にして滅んでしまった。それから数百年後、その王国の一部である遺跡が発見される。

 選ばれし者がその遺跡にある石盤に触れると経験に応じて力が増すというもの不思議なものだった。

 選ばれし者であるプレイヤーは滅んだ王国の謎を解くために世界を旅する。


 このゲームの魅力は現実に近いグラフィックとあまりにも自由度が高すぎるということだ。

 現実に近いグラフィックかつ、それに匹敵する高性能な物理エンジン、そして全100種類以上ある素性と職業、割り振り方によって人それぞれの戦闘スタイルで遊ぶことができるのだ。


「……よし、ログインできたな」


 目を開けるとそこはこのゲームで訪れることのできる最初の町、エストンエッジであった。

 風斗はマップを確認するためにメニューを開く。


「えっと確か部長との待ち合わせがこの街の宿屋だったよな……」


 宿屋を探し、マップとにらめっこしている風斗の背後に何者かが近寄ってくる。


「やぁぜかまし! 早かったね」


 彼のプレイヤーネームである【ぜかまし】と呼び背中をたたく。そこに現れたのは銀髪の少女だった。頭の上には【Nono】と書かれていた。彼女こそこのゲーム内での望海である。


「来たか。早く部長を探そうぜ」


「私宿屋の場所わかんないよ」


「ベッドのマークがあるだろ? それ探して……」


「普通にメッセしたほうが早くない?」


 そういうと望海ことノノは連携しているメッセージアプリを開き、柚子にどこへいるか連絡する。返信はすぐに来た。


「南のほうにある宿に来いだと。プレイヤーネームは【Key】で紙袋を被った魔法使いだってさ」


「こっちでも紙袋被ってんだねあの人」


「ね」


 そんな雑談をしながら二人は指定された場所へ向かった。



 ◆ ◆ ◆



 宿屋につくと頭上にプレイヤーネームの書かれた者がそこそこの人数いた。


「到着到着! さてと部長は~と」


 あたりを見渡すとひときわ異彩を放つプレイヤーがお店の角に座っているのが見えた。

 紙袋を被った魔女のようなローブを羽織った女性か男性かわからないプレイヤー。


「ぶちょ……じゃなくてKeyさん!」


 危うく現実の呼び方を呼びそうになったが、ノノはプレイヤーネームで柚子のところへ向かう。


「あ、よかった。二人ともこれたんだね」


 そういうと彼女は安堵のため息をついた。


「えっと、keyさんとりあえず個室にいきましょうか」


「え、でもそんなお金ないよ」


「安心してください、訳あってこいつお金持ちなんで」


 ぜかましがそう言いノノを指さすと彼女はどや顔をする。


「……わかった。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」


 柚子ことkeyは席を立ち、カウンターへ向かう。


「ヘイ、大将! 個室(小)一部屋とそこにケーキワンホール持ってきてくれ!」


 ノノは大量の金貨の入った袋をカウンターに置いた。


「十二番使いな」


 金貨を受け取るとNPCのおっさんは鍵を渡す。


「十二番だってさ」


 三人は十二と書かれた個室に向かった。



 ◆ ◆ ◆



「えっとじゃあまずは私から。ゲーム部部長のkeyです」


「ドーモ、key部長=サン。Nonoデス」


「なぜ忍殺? えっとこの場合部員のぜかましです。あってます?」


「たぶん・・・」


 自己紹介を終えたと同時に先ほどノノが頼んだケーキワンホールが届く。


「これ全部食べるの?」


「スキルの影響で空腹ゲージマックスにしときたいんだよね」


 そういうと机の机の上に置かれたワンホールを食べ始める。


「さてと、さっそくだけど二人の戦闘スタイルを教えてください。場合によっては私、ステ振り直すので」


「じゃあまず俺から」


 ぜかましは自信のウィンドウを開き、そこのステータスと書かれた所をタッチする。表示されたウィンドウを対面で座るキーが見やすいように反転させる。


 プレイヤーネーム:ぜかまし Lv.87

 素性:実験体(VIT、AGI、DEXにプラス補正がかかるがLUKとHPにマイナス補正がかかる)

 職業:考古学者(古代兵装のアイテムの効果を一定値上昇させる)

 ステータス

 HP  90

 MP  55

 STR 35

 VIT 87

 INT 35

 DEX 62

 AGI 119

 LUK 13


「防御俊敏特化のアタッカーです」


「う~ん。職業が考古学者ってことは古代兵装がメインアームだよね?」


「うっす。古龍ノ顎っていう銃と短剣になる古代兵装ですね」


「ちょっと待って、それって古代兵装の中でも超レアな奴だよね?」


 ぜかましのメインアーム【古龍ノ顎】はこのゲームの中でもトップ10に入る超レアアイテムである。


「その理由はこいつのステ振り見ればわかりますよ」


「じゃあ私のステを見てください!」


 プレイヤーネーム:Nono Lv.91

 素性:宣教師(HPとLUCにプラス補正がかかるがSTRとDEXにマイナス補正)

 職業:道化師(すべての武器を条件無視で装備することができるが、武器スキルを獲得しずらくなる)

 ステータス

 HP  1375

 MP  50

 STR 12

 VIT 35

 INT 20

 DEX 9

 AGI 20

 LUK 165


「体力幸運特化のサポーターです」


「二人でどうやってここまで攻略したの⁉」


 キーはつい大きな声を出してしまった。


 二人の変態構築に彼女は頭を抱える。本来であれば二人に合わせて足りないのを補うようにステータスと職業を振りなおそうと思っていたが、正直どうすればいいのかさっぱりわからない。


「部長」


「なに?」


 ノノは得意げに言う。


「私たち二人ともエヴォルブ持ってます」


「あ~だからか」


 この変態構築で二人がやっていけた理由を彼女は理解する。


 このユートピアエヴァー・オンラインには多種多様なスキルが存在する。スキルはプレイヤーの行動やステータス、専用のクエストなどを攻略することで獲得することができる。そして一部のスキルには超高難易度の条件を満たすことで高性能なスキルに進化する。それをエヴォルブスキルと言い、持っているプレイヤーは全プレイヤーの半分以下とされている。


「ちなみにどんなスキル? あ、言いたくないなら言わなくてもいいし、特に何から派生したかは絶対に言わないでね。怖いから」


 エヴォルブスキルはすべてのスキルではなく限られた一部のスキルが何かしらの高難易度条件をクリアすることで獲得することができる。エヴォルブスキルはどれも強力であり、派生元の情報だけで数万円の価値があるとされている。


「俺のは少し特殊なんであとで話します」


「私のエヴォルブは幸運値を大幅に強化したりできます」


「なるほど。」


「そうですね。例えば……」


 そういうとノノはいくつかのアイテムを取り出す。


「エリアボスのレアドロップあるじゃないですか? それを通常ドロップとほぼ同じ確率で出すことができます」


「えぇ……」


 キーは机に置かれたアイテムを見てドン引きする。机に置かれたアイテムはすべてエリアボスのレアドロップ。なかには超低確率とされるアイテムが複数個ある。


「俺の古代兵装の大半はこいつが引き当てたやつです」


 ぜかましはそう言うとアイテムボックスを開き、持っている古代兵装を並べる。しかも取り出したアイテムの多くはプレイヤーショップにはほとんど並ぶことのない激レアアイテムばっかりであった。


「あ、一応アイテムをもらう際の条件としていきたいクエストの優先権は常にノノが握っているという感じです」


「もういい。おなかいっぱい。これ以上聞いてると頭痛くなる」


 キーは今装備しているローブを手に入れるために周回したクエストのことを思い出す。そのクエスト限定のボスエネミーが超低確率で落とす装備であり、彼女はこの装備を手に入れるために春休みこのゲームに籠り続けていたのだ。


「さて、話は聞けたしちょっと難易度高いクエストに行こうか」


「はい」


「うっす」


 三人は席を立ちあがり、店を出る。ちなみにノノが頼んでいたホールケーキはスポンジのカス一つないほどきれいに平らげていた。


「あとここでは二人ともプレイヤーネームで呼んでね」


「わかりました部……キーさん」


「了解で~す!」


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