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野原望海のくだらない野望  作者: ポルポ
第一章 人数足りなくても実績あれば廃部にゃならない
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第一話 入学式の練習っていらなくない?

 ふと風斗はそう思った。


「ねぇ風斗、なんで入学式の練習ってあったんだろうね?」


「お前も同じこと思ったか」


 なぜ練習がいるのかというというと動きを確認するためだろう。ぶっつけ本番より前もって動き方とかを知っておいたほうが本番にグダることもなくなるからだろう。


「結局同じクラスだったな」


「いいじゃん。知らない人だけよりは知っている人がいたほうがいいだろうしさ」


「まぁそりゃそうだけどさ」


 二人の出会いは中学一年のときの最初の席替え。隣の席になった二人は同じゲームをプレイしていたという理由で意気投合。

 そこから偶然にも三年間同じクラスであり、放課後はほとんど毎日一緒にゲームをしていた。

 高校に進学しても運のいいことにクラスは一緒。席も近かった。


「よーし席に座れ」


 昨日の入学式で紹介されていた担任と思われる先生が教室に入ってくる。先生の言葉を聞き、全員が席に着く。


「んじゃ連絡事項があるからよく聞け」


 数枚のプリントを渡し、先生はそこに書かれた内容をおおざっぱに説明する。


「――じゃあ最後に、この学校は基本的には部活動には入ってもらうということになっている。今日の午後から部活動勧誘会があるからどこに入るか考えておくように。何か質問はあるか?」


 手を挙げる者は誰もいない。


「そうか。じゃあ休憩時間にする。このあと自己紹介をしてもらうからな」


 そういい残し、先生は教室を出る。

 休み時間になり、トイレに行くために教室を出る者話し相手ががいなくてスマホをいじる者、前後左右の生徒に話しかける者がいる。

 風斗は渡されたプリントに目を通していると不機嫌そうな望海がこちらに来る。


「おい風斗、どういうことだ!」


「どうした?」


「どうしたもこうしたも、部活強制入部なんて聞いてないぞ」


「聞かれてないからな」


「私の野望を叶えるために割く時間が減るではないか」


「なら被害の少ないところに入ればいいだろ?」


「被害が少ない……活動日が少ないものってことか?」


「そうだけど、見た感じどこも最低でも週3はあるな。あと入部した部活をサボりすぎると推薦に響くと書いてあるな」


「まじかよ……ちょっと貸して」


 風斗からプリントを奪い、部活に目を通す。


「運動部は全部削除するとして……活動がだるそうなのは除外っと」


 プリントに書かれた部活に次々と斜線を引いていく望海。


「人のプリントに勝手に書くなよ」


「あとで私のあげるから……そして残ったのは」


 プリントを見るとすべて斜線で消えていた。


「ダメじゃん」


「まぁどうせ午後になれば決めないとだめだし後で考えればいいや」


「楽観的だな……」


「それより今日の放課後、欲しい素材あるから取りに行くぞ」


「へいよ。あとお前のプリントよこせ」


 風斗は望海のプリントを受け取ると綺麗に折り、クリアファイルの中にしまった。



 ◆ ◆ ◆



 お昼ご飯を食べ、今から部活動勧誘会が始まる。

 この学校には格技棟があり、一部の部活以外はそこに部室があるそうだ。

 風斗と望海は最も楽そうな部活を探し彷徨う。


「そこの君たち、ダンスに興味はないかい?」


「演劇部絶賛募集中です」


「ラグビー部!」


 声のでかい運動部のせいで一部文芸部の勧誘の声が聞こえない。それどころか話し声が多く何を言っているのか聞き取ることができない。


「なんかどこの部活も活動日数多すぎ」


「まぁ活動記録のない部活は廃部になるんだと」


「なんでだろね」


「多分だけど形骸化して帰宅部化するのを避けているからだと思うぞ」


「なるほど」


 特に入りたい部活が見つからないまま、格技棟の一番端までたどり着いてしまった。


「あ、ここ部室だ」


「何部?」


 扉を見るとそこにはゲーム部と書かれていた。


「ゲーム部なんてあったっけ?」


「書いてあるんだからあるでしょ」


 望海は部室の扉に手をかけ、扉を開ける。


「ノックしてもしもーしって誰もいない」


 部室には誰もいなかった。だが机には入部届の紙と数枚の手書きのプリントが置いてあった。


「活動は……してるっぽいな」


「ふぅさっぱりってえ、」


 二人の背後に突如として一人の女子生徒が現れる。


「あ、新入生ですか?」


「あ、はい」


「そうですか……ではゲーム部の説明をしますからちょっと待ってくださいね」


 女子生徒は狭い部室をかき分け、ホワイトボードの置いてある奥に向かう。そしてその女子生徒はどこからともなく取り出した紙袋を被る。


「あ、じゃあ始めますね」


 どこからツッコめばいいかわからないが二人はとりあえずこの女子生徒の話を聞くことにする。


「えっと……ようこそゲーム部へ。私はここの部長の鍵谷柚子です。ここゲーム部では、DIVEを使ったVRゲームの大会に出て、優勝することを目的とする部活です。

 活動日は月水金のうちの二日間です。ですがここでやることは出る大会ややるゲームを決めるだけなので基本的には自宅でそのゲームをプレイしてもらうって感じです」


「はい」


 望海が勢い良く手を挙げる。


「えっと、やるゲームってそっちで決めるんですか?」


「いえ。公式大会があればどんなゲームでもいいです。例えば【ギルムン】や【スタファイ】、【CGCO】あとは【UE】とかもありです」


「じゃあ入部します」


「え、いいんですか?」


「ユートピアエヴァー・オンラインなら私も彼もやっていますから」


「え? 俺も入るの?」


「私の野望叶えられる部活なんだよここは」


「わかったよ。じゃあ僕も入りますね」


「ありがとうございます。ですがこれだけは言わせてください」


 そういうと柚子は紙袋を取る。


「今年中に成績を残さないとこの部活、廃部になっちゃいます」


 笑顔のようなそうじゃないような複雑そうな顔でそう言った。


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