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死か降伏か  作者: 手塚エマ
第七章 LOSE一LOSE
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第八話 お花畑

 事実、御所に到着した壬生組に朝廷があてがう役目は何もない。


 事態の異常に気づいた長州藩が隊形を組んで堺町御門に集結するも、華々しく対峙したのは京都守護を仰せつかった会津藩の藩士ではなく、国内最大の軍事力を誇る薩摩藩兵だったのだ。

 

 いきり立つ壬生組に、幕府の公使がもったいぶって文書を開き、「追って御沙汰あらせられるまで屯所へ引き下がるべき候」と、殊更声高に朗じてみせる。

 文字通りの門前払いに、猛者揃いの隊士らが殺気立った時だった。


「御沙汰はあった! だから参内したのだ」


 激昂する近藤や土方たちの背後から、旗印を掲げた一頭の早馬が土埃をあげて馳せてくる。


「御沙汰にございまする。薩摩藩士高崎左太郎公より壬生浪士組への御沙汰にございまする!」

 

 丸に十字の紋羽織を着た若い藩士は、巻物を振りかざしながら下馬すると、近藤の前に進み出た。

 

「壬生浪士組はこれより後方警護のかなめとして御花畑御門おはなばたけごもんの固めに当たらたし候」


 息せき切って読み上げた藩士が、花印入りの通達書を隊士に向けて掲げて見せる。一方で、下知された方の壬生組は藪から棒の通達に毒気を抜かれ、波が引くように静まった。

 隊士等は互いに顔を見合わせなて、しきりに首を捻っている。

 

「御花畑?」

 

 近藤は土方に、知っているかと目顔で訊ねる。


「御花畑?」

 

 土方は隣の沖田に同様に告げた。

 しかも、なぜそれが会津ではなく薩摩藩士のめいなのか。


「そもそも、どうして薩摩は急に会津と手を組むなんて言い出したんだ」


 ぞろぞろと御花畑の御門前まで移動した土方は、憤然ふんぜんとして腕を組む。


 藩主の島津斉彬しまづなりあきら養女篤姫ようじょあつひめを、十三代将軍徳川家定に嫁がせて、薩摩は幕府内での発言権も強めている。

 幕府と朝廷の関係回復を画策する公武合体派ではあるものの、徳川幕府擁護の姿勢は見せていない。


 むしろ、長州のように自分達が日本の政権を掌握しょうあくせしめんとする討幕派である。

 少なくとも土方自身はそう思っている。


「あんたは何か聞いていないのか?」

 

 暑気で蒸された烏帽子を外す近藤に問い質した。

 事態が全く掴めない焦りと暑さで土方は気が立っている。


「さあ。俺は何も聞いていない」

 

 近藤は汗が滝のように顔を手拭でざっと拭き、気のない声であしらった。

 それでも土方の追及は治まらない。


「薩摩は去年、島津公の行列を下馬もせずに横切った咎で英国人を三人斬った。その報復で国元まで艦隊に攻め込まれ、城も町も壊滅したと言われている。それがつい前月の話だろう? 復興で莫大な金が入用いりようの上、賠償金まで請求されたそうじゃないか。今の薩摩に、こんなところで油を売ってる暇も金も無いはずなんだが」

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