第弐話 ポセイディア勤務
職場に着くと、既に前職場時代からの同僚が何人も仕事を始めていた。
仕事より先に社長がいる部屋に赴く。ポセイディアを牛耳る機関の所属になれて、内心うれしかった。
扉を開けると、革張りの豪華な椅子に鎮座する知事がいた。自分より何十歳も年上であろう男はこう言った。
「君が新人くんかね?」
カレンは、はい、と頷いた。
「話は聞いてるよ。この場所でも、思いっきり頑張ってくれよ。」
サングラスをかけ煙草を咥えた威圧感ある見た目に反し、性格が明るくて優しかった知事は、私に証明書を渡した。証明書があれば、地方公務員が立ち入れない王宮に立ち入る事が出来るようになる他、街中で特典を得られたり、一部の交通機関が無料で使えたり、有料の公衆トイレが無料で使えたりと様々だ。
キーカードを片手に陽気になっていると、上司がこういった。
「君ほどの腕前なら、皇帝陛下に謁見出来るかもしれない」…と
急行シャトルに乗り込んで家路を急ぐ。西日が差し込んでいた街には、幼い子供たちが元気に戯れていた。
家へ着くと、時計は既に"19"を指していた。そして、肩に大岩が乗っかった様な感触がした。寝間着に着替える力も湧かず、結局シッティングのソファーに寝っ転がった。疲れた腕でリモコンに手を伸ばす。
ふぁぁぁぁ~
子どもの様な大あくびをしてしまった。いや、外見は子供だからいいのか?
暫くゲームをしていると、ドアホンを連打している爆音が家中に響いた。ゲームをセーブし、玄関へ向かうと、そこには、職場で久しぶりに出会ったマナミがいた。しかしいつもと少し様子が違う。お腹を押さえて足踏みをしていて、手にはクリアファイルとそれに入った数枚ほどの書類、クリアファイルに入った赤いボールペンがあった。
「カレン…これ…知事さんから…」
マナミからクリアファイルを受け取るが、顔に冷や汗を浮かべて、息が上がっていたマナミに、カレンは
「どうしたの?」
と問い掛ける。すると、
「お昼ご飯の具材が…腐ってたみたいで…お腹壊しちゃった…みたい…トイレ貸して…くれる?」
そう言っていると、グギュルルルルル…という腹痛と思わしき音が話を遮断した。
「いいけど…」
マナミはその言葉を聞くや否や、慌ててサンダルを脱いでトイレへ直行した。よほど苦しかったのだろう。水便の音が自室まで聞こえる。
数時間すると、すっかり魂の抜けたマナミが、トイレから出てきた。
「ごめんねカレン…こんな事して…」
「いいのいいの。今日はここで休んでいく?」
ぼっち・The・ライフになるところだった為、お客さん一人でも十分にうれしい。
お腹にお湯をいれたペットボトルを当てて、二人でゲームをしたあとに寝て、今日は終わった。
結局夕食は、CVSで買った少し大きめの米むすびと、インスタント味噌汁だけだった。
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