女神ディアの永遠の愛と共に
全てはこの日のためにの序章というべきお話
描けなかった女神ディアとエルミエへ続くお話です。
ジークフリード死去の知らせは皇后とディアに思い衝撃を与え、涙に暮れる日を過ごす。
その遺体を捜索するも泉にジークフリードの死体は発見できなかった。
皇帝と皇太子は一抹の不安を抱えるも、ディアの寡婦という身分になったことがそれを上回った。
この日を境に皇帝は新しく貴妃という身分を後宮に作り、皇太子は皇帝亡きあと、愛人にするつもりでしばらくは静かにしていた。皇帝をそのうち暗殺する計画を密かに立てていたからだ。
ディアは誰とも会わず、一人部屋で涙する。
ただジークフリードの死体を発見できない事実も確かだった。
もしかして生きているかもその望みをかけて深夜女神の力を使い、ジークフリードの遺体があると言われた泉に舞い降りた。
遠方の瞬間移動は女神といえどマナを大量に消耗するため度々は使用出来ない。いままでもジークフリードの元に行きたかったが人として宮廷生活を送らないといけない為に行動出来ないでいた。
静寂の森の夜。
泉は湖面に波も立た闇夜に暗く星を映していた。
ジークフリードが沈んでいる?
ディアは泉の創造主だ。
その湖底に彼がいないのはすぐにわかった。
瞳を閉じて意識を集中すると、泉の傍の大きな月桂樹の葉がディアの髪に絡んだ。
上を見上げるとその月桂樹の幹に血が滴り落ちている。ふと見上げると太い幹にディアの知る愛しい人の姿があった。
空を飛んでその枝に飛び乗る。
ジークフリードの身体はしなだれかろうじて枝に縄で括りつけて落ちるのを防いでいた。
ディアはほとんど意識のないジークフリードの身体を抱きしめる。
やや弱い息のジークフリードの瞳が開き、ディアをじっと見ている。
わずかに唇を動かそうとするものの言葉にならない。
ディアはもはや命の尽きようとするジークフリードをどうすることも出来ない。
ジークフリードは愛しそうに優しく微笑んでいる。
ディアの手に炎の神が宿る。
炎の神はわずかにその灯を通じて太陽神に交信する。
今は夜の支配する時間の為に太陽神の創造した炎を通じて太陽神に告げた。
ディアは最後の願いを太陽神に問う。
自分の命と引き換えにしてジークフリードを助けてほしいと。
太陽神は炎を通じて、ディアに答えた。
人を創造したのはディアであるが、ディア自身にも太陽神にもその命を助ける事は出来ない。
創造と破壊は同じであり、万物の輪であり、それを変える事は出来ないと。
ディアは他の方法を太陽神に問う。
太陽神はディアが女神ではなく人としての輪廻を繰り返すなら、ジークフリードの精神と心は永遠に受け継ごうと約束した。
ディアはこれを受け入れる。
ジークフリードはディアの手の中で力尽きた。
これによりディアと太陽神の契約は成立し、その証にディアの生まれ変わりの人には胸元に太陽神の印を持ち生まれるという。
ディアは白い光になり、その場から姿を消しそこにはジークフリードの遺体だけが残った。
白い光はこの森に住む神殿の神官の夫人の腹に消えていった。
ディアの炎の神と氷山の神はアフェルキア帝国の北部の山脈に隠れた。
太陽神と大地神もアレクサンジェロヴィチ城に隠れた。
禁制地はこうして誕生した。
ここは神の領域だ。
ジークフリードの遺体は太陽神が天へと誘う。
大きな津波が押し寄せて大陸を飲み込んだ。
しばらくして再び大陸が浮上してエルディア大陸が復活した。
ジークフリードの遺体は七分割され埋葬された七か所に新たな人が誕生し、最初の国家を築いた。
すなわち七か国家の成立である。
エルディア大陸の歴史はこうして誕生した。
人々は女神ディアを信仰しこれを讃えた。
ディアは豊穣、生産、慈悲、愛の女神と七か国で信仰された。
女神ディアのお話
本編 全てはこの日のためだけに 皇后の愛と復讐とそれは…の番外編
本編では書けなかった物語
氷山と炎の神の怒りの理由が明かされます。
ご愛読ありがとうございました。