ディアとジークフリードの婚礼と別れ
アフェルキア帝国はエルディア大陸の全てを支配していた。
唯一の人間界の支配者であった。
今日はその第二皇子の婚礼が行なわれている。
荘厳の極まれた宮殿で太陽神殿でその婚礼は行われた。
皇帝・皇后・皇太子夫妻・皇族達と貴族達が招待された神殿での婚礼は荘厳にしてかつ欲望に満ちていた。
皇帝は想像以上の美しい義理の娘の顔をまじまじ見惚れている。
人ではない女神である。美しいのは当然である。
その官能的な姿に見とれて鼻の下を伸ばしていずれは自分の妃にととんでもない考えが頭をよぎる。
その皇帝の欲望を見て不安そうな面持ちでいる皇后は気が気ではない。
自分よりも美しい花嫁を娶った弟に激しい怒りを隠さない皇太子とそれを不満そうに嫉妬深く見ている皇太子妃。
その姿を貴族達は眺めている。
宮廷内でしばらく皇子の妃のうわさでもちきりになるだろう。
ディアは式典の間緊張と不安で押しつぶされそうであったがなんとか乗り切れた。
隣のジークフリードが優しくフォローしてくれたからだ。
優しい方。
ディアはこの美しい人間に惹かれ幸せをかみしめる。
皇子は披露宴の間もかいがいしく世話を焼いて新妻ディアを気つかう。
ディアはこの幸せが永遠に続く事を信じて疑わなかった。
事件が起こるまで。
まず動いたのは皇帝だった。
皇子に異民族の内紛が続く地方への遠征を命じたからだ。
婚礼の六か月後に新妻を置いて遠征に出てしまう。
ディアは涙にくれながら見送った。
宮殿に残ったディアをまっていたのは皇帝の必要以上の干渉と誘惑だった。
ある夜などは侍女を買収して夜中に寝室へ侵入してディアを襲おうとした。
その時は夜間で女神の神力で宙に飛んで逃げのびた。
皇太子などは昼日中に堂々と誘惑し口説き始める。
ディアは心穏やかでなく、緊張感のある宮廷生活を送っている。
皇帝はそのうち段々ディアが憎くて仕方なくなる。思い通りにならないディアへの横恋慕についに息子への憎悪に方向が変化する。
皇太子はその事を知って親子でジークフリードへその矢を放つ。
ある世に女神ディアの手にする氷山の神が囁いた。
オンディーヌの森に帰ろうディア。
ディアは首を横に振る。
ジークフリードはかえってくるわ。
そういって。