第5.5話「必ず帰って来て、と君があの日言ったから」
初の少数話数です。超短編です。
「あの男」の物話です。
ではどうぞ。
追記:2024/9/19 改稿
「はぁ~~っ……。クッソ、痛ぇ……」
まだ追って来ているだろうか。
断ち斬った両腕が再生している。痛みまで無くなるにはいつまでかかるだろう。
あんなヤツ見たことない。未確認の超進化恐竜だろうが、並大抵の強さじゃない。ものの数分でアイツ1頭に何十人も殺された。
「流石に十災か……姿不明のが2種いたよな……?」
巨大草本の林と密林の境界。まさかこんな場所に十災がいるとは。
【ドォーーン……】
「っ……」
樹が倒れる音が響く。保護色で見づらいが、すぐそこにヤツは潜んでいやがる。クソ……。
姿勢を低く、そっとその場から逃げる。
だが気を配らないと、アイツに気付かれたら今度こそ殺される。
【ガシュッ!! ミシッ……バキッ、パキッ……】
捕らえられた植物喰超進化恐竜の外硬殻が喰い割られる轟音が響く。まぁ十災のうち植物喰超進化恐竜は1種だけだからあっさり喰われるのは当然といえば当然だ。
外硬殻を喰い割るとは……計り知れない。特殊能力の影響だろう。これでいて非持弱点、あまりに神に優遇されている。
同じ系統の特殊能力といえど、俺とは大違いだな。
しきりに周りを観察している。俺を探しているのだろう。上手く逃げられるか?
そっと、そっと。音一つ立てず、ゆっくりとその場を離れる。
……ある程度間合いはとれた。これで襲ってきても、避けて怯ませる程度の反撃をする用意がある。
【クルルルル…… シュババババ……】
……俺を見失ってくれたのは嬉しいが、空を翔んでどこかに消え去った。
「空も翔べるのかよ……。本当にチート生物だな……」
だがこんなところにいつまでも居られない。早く集落に戻らねば。
……恐らく生還できる者は非常に少ないだろう。数百人行っても指で数えるまでもない人数になる。それは初めから分かりきっていた。だが起こってしまった。できないことを前提にでもアイツを止めるべきだった。
死んでいった彼らには家族がいる。最早聞くまでもない生死を、それでも知りたい者も多いはず。
「こんな手紙遺そうとしやがって……」
彼らが懐に仕舞っていた手紙には、大切な人に別れを告げるものが多くあった。生きて戻る気など初めから抱けなかったのだろう。
彼らを貶すなら、俺が護ってやればいいものを。
俺にできたことはまだまだあったのに。自責の念が徐々に、確実に蝕んでいく。
せめて遺骨だけでもと思ったんだけどな……。一部しか成し得なかった。
……だが、俺は還らないと。
約束したんだ、必ず還ってくるって。
あいつは待ってくれているんだ。
涙が流れてしまう。
「……俺だって会いたいよ……」
他人には見せないけどさ、あいつは意外と可愛く笑うんだ。
あいつ自身は気にしてたけど、あの白い髪も綺麗だ。また優しく撫でてやりたい。はにかみを隠そうとしているあの顔も好きだ。
優しさだろうか、俺には何も言ってくれなかったけど、きっと何かを隠してた。聞かないけどな……。
「今頃何して待ってるんだろうか……」
「ラズ……」
彼女が死んで、数日経った頃の話である。
十災3種目。男と合わせて、正体と能力の予想をどうぞ。……まぁ超進化恐竜側に関しては流石に無理があるので超難問です。当てられたら毎日投稿します。
……ウソです、脳の過労で死にます。
さて、流羽達がわちゃわちゃしていた間に、男性サイドに何が起こっていたのか。
男性サイドの物語も時々出ると予想。
ではまた次回、流羽サイドで。
ズーマ