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カノトキ巣食うは超進化恐竜  作者: ズーマ
第1章『血塗れの丸鋸』 第1編『芽生える殺意』
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第1話「似て非なるモノ」

2024/7/30 改稿

「誰だよ転生先の異世界が幻想的だって決めた奴……」

 姿は生前と変わらない。なら厳密には転生とは別……なのか? まぁ完全に八つ当たりなのは承知の上でも不平を零さずにはいられない。

 変わった髪色の美少女もいない。中世ヨーロッパ風の街並みも無い。原始的な文明すら無い。人どころか動物の気配すら無い。

「ここが……カノトキ……」

 正直、俺の中のテンプレに無い状況なだけに絶望している。

 現在地は、暑い空気が包み込む背の高いスギと青々としたシダの茂る森林。水の音すらしない。さっき体感したから分かる。この暑さは9月中旬のそれでは無い。初夏の暑さだ。高い湿度も相まって、不快感が半端ない。

「とりあえず……水源を探さないと」

 暑さも相まって消耗も激しいだろう。水の次は火。資源と安全を確保できる拠点も確保しないといけない。何の事前説明も無しに異世界サバイバルに陥ってしまった。

「喰えそうな動物いっかな……? 返り討ちにされなきゃ良いけど……」

 少なくともアイツはいる。俺を殺した妖恐竜。最悪の場合、ソイツだけって可能性もゼロじゃない。上限突破の危険性なのだから。

「いつまでもダラダラしてられないな……」

 何が、いつ、どこで、どう襲ってくるか分からない。見えないからといっていないとは限らない。自然という名の障害物があるからといって防げるとは限らない。用心に越したことはない。全て死ぬ間際に学んだことだ。

 少しでも身を守るものがあれば。そんな淡い期待を抱いて初期装備のリュックを岩に下ろした。勿論ここに来る前には持っていなかった。同じく記憶の中でも。

 参考までに現在の装備は……。特に特殊効果の無い、通気性と動きやすさに長けたシンプルな半袖長ズボン。加えて上着。ブランド物でもなく、そこら辺のスポーツ用品店で安く買える品だ。センス無いことは重々承知している。

 そして着替えが無い。これはマズい。

「ワンチャン入ってないかなー……」

 その期待は無残にも砕け散った。着替えらしきものは入っていないものの、代わりに気になるものが2つ入っていた。まぁ正しくは3つだが。

 まず1つ目。リュックに入るはずもないサイズの立派な日本刀が入っていた。確か日本だと刃渡り6cm以上の刃物が銃刀法でアウトだから現行犯逮捕ですね。だがここはカノトキ。無法地帯だろう。そうであってくれよ?

「スゲぇ……」

 錆も()(こぼ)れも無い綺麗で真っ直ぐな銀色の刀身。赤、青、黒の3種類の糸で飾られた(つか)。これといって特徴のない純黒の(さや)(つば)の装飾も丁寧で美しい。

 恐らくこれが例の武器だと思うが……もし( な)(まく)だ(ら )ったら荷物に……なるかは分からないが、持ってても意味がないだろう。

 過去に爺ちゃんから剣術を(しご)かれたことがある。まさか死んでから需要があるとは。

 竹は無い様なので、杉の低木をセレクトした。高さは3mほどで太さも大差ない。

「切り捨て御免!」

 遠距離に斬撃が飛ぶこともなく、ごくごく普通に低木は断ち切れた。中身の詰まった低木が断ち切れるのが普通なのかは置いといて。

 とにかく、偽物じゃないことは把握した。

 そして2つ目。そもそもこのリュックが物理的に狂ってる。1mはある日本刀がすっぽり収まるのはまずおかしい。勿論そこまでの大きさはない。マジック的な何かにせよ、何かあるはずだ。

「嘘だろオイ……バグってる……」

 こんなこと有り得ない。さっき切った低木を試しにリュックに詰め込んだ……。

 そう、2m近くの低木が収まったのだ。怖いのでしないが、俺すら入るかもしれない。

「…………」

 至って真面目にジャッジした結果、放っておくことにした。何、決して真面目に考察するのがダルいワケではない。誤解しない様に。

 最後、3つ目。これが一番気になっていた。

「スマホ……じゃないのか?」

 見た目は完全にスマホのそれ。だがどこにもリンゴが無い。かと言って他の機種でもない。

 そもそも、これがスマホだとは決まっていない。ただの精巧な偽物説は十分に有り得る。

「……まぁガラクタなワケねぇわな……」

 定石通り電源ボタンらしき箇所を長押しで反応した。何のロゴが表示されることもなく電源が入ったスマホ亜種のごく普通の初期設定を一通り済ませた。これで自由に弄れる。

 そう、自由に。操作は普通のスマホと何ら変わらないのだ。Wi-Fi環境すらも必要とせずに。ただ、普通のスマホではあまり見ない様な機能が初期状態であるのも事実。

 違う点をざっと挙げれば以下の通り。


[スキャン]

 ……撮影したモノの情報を得ることができる。ただし、全ての情報が初めから開示されることはなく、開示に値する段階に至るまで詳細は不明瞭である。

[記録図鑑]

 ……過去にスキャンした全ての情報を見ることができる。スキャンで開示されなかった情報はここに追加されていく。


 あとは普通のスマホと変わらない設定、マップ、コンパス、翻訳、メモ、カレンダー、時計、カメラ、写真……。まぁそんな感じ。まさかの検索エンジンとストア、天気予報が無い。かろうじて検索エンジンの機能があるのは……スキャンのみ。

「あらゆる情報、ねぇ……」

 気になるものはいくらでもある。特に日本刀とリュックが。明らかに異質なこの2つが。


[吸血鬼]

……世界に5種しか存在し得ない特殊武器の1つ、妖刀。 以下詳細不明瞭

W(ウエイト)レスバッグ]

……中に入った物体の重量を100分の1にし、中の重量で最大20kgまで入れることができる。物体の体積は無視して詰め込むことができる。


 リュックの性能は全て開示された様だが、日本刀、もとい吸血鬼に関しては情報がほとんど無いに等しい。

 見てくれはただの日本刀。正体は妖刀……ねぇ。

「……流石に移動するか……」

 マップを開いて近くの水場を確認……できないじゃねぇか。どうやら既に来た場所しか示さない、RPGにありがちな地図の様だ。てかカノトキに衛星があるのか? じゃなきゃどうやって現在位置が分かるんだ。目視で確認できるはずもないから空を見上げても意味は無いのだが。

 仕方ない。行き当たりばったり作戦を決行しよう。

 ただでさえ地球のアマゾンにもアナコンダだのワニだの、カンディルだのジャガーだの、名立たる強豪達が彷徨(うろつ)いているのだ。アマゾンの様な熱帯雨林と断定はできないが、カノトキがどうかは言わなくても分かるだろう。

「死にませんよーにっ!」


 ……模範的なフラグを建築したものの、あれから何にも出くわさず、道中は軽傷だけで済んだ。……仕方ないだろ、道が整備されているはずがないんだし。だが代わりに非常に有益なモノを発見できた。

 さて、今俺は湖畔に来ている。歩いた距離は……およそ3km。道中は森林や丘陵ばかりだったのでかなり時間を食った。時計を見ると既に午後3時を回っていた。

「腹減ったなぁ……」

 そう言えば俺、空腹の最中に死んだんだっけ。

「……おっ! 植物喰恐竜、発見っ!」

 湖の向こう岸。大体200mぐらいか。詳しくはないが、某恐竜映画に出ていたからなんとなく分かる。名前言ってたっけ?

「スキャンは……できないか」

 ズームしても認識してくれない。流石にスキャンできる距離には限界があるのか。

 ここに来る道中に発見したのは獣道だ。と言っても爬虫類のソレ。四足動物のもあれば二足動物のもあった。

 それに加えてここに生えてる植物の背の高さが統一されている。アフリカのサバンナの映像はテレビでもよく見かけるが、そこでも高さは整っている。様々な種類の植物喰動物が常日頃喰べることで自然と高さが統一されるのだ。それと同じ様な現象が起こっている。

「カノトキの水って汚染されてないかな……」

 スキャンすれば水質を確認できるだろうか……


  世界が、闇に染まった。


「な……!!」

【ザバッッ!!!!】

 水の音。何か、大きな物体が水中から出てきた音が耳に入った。視界に映らない「ソレ」を、反射的に回避した。ギリギリ避けれた様だ。

「うっわ眩しっ……」

 今度は視界が戻った。まさに一瞬の出来事。全てが見えた。水辺から飛び出してきたソレも。

「何だよ……アイツ……」

 妖恐竜……だと思う。ハッキリしない。まず地球に存在しなかったフォルムだし、かと言って俺はコイツを知っているワケでもない。俺を殺した妖恐竜とは別の生物だ。四足歩行の肉喰獣の様な体勢。

「って、今使うべきじゃねぇか!」

 隙がある。スキャンできる。


[サーモノプス]

○特殊能力……濁流昇泳(ブラインドストリーム)

→非持弱点。自分の眉間を中心に、半径5m以内の生物に盲目(ブラインド)状態を付与し、高速で突進する。身体能力に優れた人間が避けれるギリギリの速度。

○体長・体重……5m・1t

○生息域……淡水湖

○食性……魚及び肉喰。ハンター

○種族……準 超進化恐竜(エヴォサウラ)。バリオニクス亜科に近い姿の半魚半竜

○性別……オス

○繁殖……雌雄交配

○危険度……中型であり、生息域が限定的であること、避けれる攻撃が多いことから星6

○身体的特徴……バリオニクス亜科に近い見た目をしているが、収斂進化だと考えられている。頭の皮膚を強固な不透明外硬殻で覆っていることや、歯牙と断定できる構造が無いこと、しかし肺呼吸であることから恐竜とダンクルオステウスの中間的な存在だと考えられている。


「なるほどねぇ……」

 通りで視界が暗転したワケだ。

 にしても超進化恐竜ってのは……きっと妖恐竜の正式名称だろう。そして弱点無しの特殊能力。

「バグってんなぁ……」

 相手はまだ距離を置いている。暗転するのは半径5m以内に入ってから。攻撃を避けれるかどうかは正直自信無い。

 相手と視線を逸らすことなく、ゆっくりとリュックを下ろす。中に納めている吸血鬼を取り出す。

 重くて腰に挿せない大太刀。背中に掛けるにしても道具が無いのでリュックに入れていた。

 銀色の刃が、敵を捉えた。

【バオゥッッ!!!!】

 獅子の如く、敵は吠えた。何がサーモンだよ。れっきとしたモンスターじゃねぇか。

「やるなら居合い……だな」

 刹那、高速の超進化恐竜が突進してくるのが見えた。

 闇に飲まれた瞬間、体勢を低くして腹の下を通り抜けた。否、通り抜ける寸前で腹を斬り開こうとした……のだが、

「え……」

 思わず声が漏れた。絶対に吸血鬼はヤツに当たった。だが弾かれた。

(硬すぎるだろ、コイツの皮膚……って、まさか!!)

【ピコン♪】


外硬(がいこう)(かく)

……全ての超進化恐竜、及び準超進化恐竜の全身の皮膚を上から覆う、透明な外部構造。外側からの攻撃に強く、内側からの衝撃に弱い。内側からの柔軟性と弾性に非常に長けており、すぐに元の形状に戻る。最低硬度は鉄に匹敵する。計5種類存在し、外硬殻、不透明外硬殻、 以下詳細不明瞭


 今の状況を踏まえてハッキリと言おう、詰んだ。背後には越えられない岩が、前は高速移動できる超進化恐竜が塞いでいる。例え横に避けようとも、それは逃げるだけ。根本的解決には至らない。水中戦は論外。地上にいてもいずれ体力が尽きて殺られるだろう。俺の攻撃は一切通用しない。吸血鬼以外の武器は無い。むやみに攻撃したら、先に吸血鬼の刃が欠けるだろう。

「クソが……バグってる……」

 例えここで逃げられたとしても、いずれアイツを殺さないといけない。外硬殻を持ち、確実にコイツより強いあの超進化恐竜を。失敗は許されない。

 ひとまず、避け続けるしかない。

【ザッザッ……】

 地面を掻き、ゆっくりと後退するサーモノプス。突進してくる合図。

「はぁ~っ……」

 深く息を吐き、体勢を低くする。

【ビュンッッ……!!】

 ホント速ぇな。既に慣れた動きをする。

「がっ……!!」

 マズい、脚を狙われた。避けた瞬間に尻尾で払われた。3度目の回避行為。流石に相手もバカじゃなかったか。ワンパターンは通用しない。

(ヤベぇ……。マジで殺される……。クッソ……)

 相手はトラックみたいなモンだ。直撃した左脚は確実に骨折している。次の攻撃が来れば、もう避けられない。

【ビュンッッ……!!】

(あ、マジで終わった……)

 約6時間。短かったなぁ、カノトキ人生……

〘屈んでっ!!!!〙

【パァァァンッッッ!!!!!!】

 脳の処理より早かった出来事。闇の中で聞こえたその言語と発砲音に反射的に屈んだ……のだが。

〘こっちに来て!!〙

「え……?」

 2人の少女ら、見た感じ俺と同世代で日本人ではない……が、離れた茂みから手招きして必死に何か叫んでいる。

(何を言ってるんだ……?)

 そう、彼女らの言語は日本語じゃない。何を言っているのか、微塵も伝わらない。手招きしているから向かえば良いだろうか。吸血鬼を杖に、左脚を引き摺って。

〘ここでじっとしててね〙

 ……やはり何も分からない。まぁ下手なことはできないし、しない様にしよう。

 見ると、サーモノプスは誰かと交戦していた。白髪交じりの少女。これまた俺と同年代。手には刃渡り20cmほどの短剣が握られている。スゴい技術(テクニック)だ。

(戦える人間がいるのか……)

 見ず知らずの異邦人を助けるために、無謀な戦いに挑む意味は無い。少なくとも賭した命に見合わなそうな相手の場合は特に。

(見えてないんだよな……?)

 終始サーモノプスの劣勢だ。闇の中であそこまで動けるのはかなりスゴい。一般のJKが成せる動きじゃない。明らかに戦闘慣れしている。

 だが、リーチで(まさ)っているサーモノプスが相手と距離を置き始めている。接触以上、5m以内。視覚と触覚の死ぬこの距離感が一番危険なことは身をもって学んだ。

(短剣じゃ分が悪いんじゃ……?)

 それとも何か策があるのか。サーモノプスと距離を置き、視界が戻ったらしい彼女はこちらを一瞥して、

〘拘束を頼む!〙

 と叫んだ。するとそばにいた黒髪の少女が、提げていたカバンから丸い物体を取り出し、手を握った。

 するとどういう原理か、握られた彼女の手から太いツタが生え、まるで意思を持った縄の様に自然と編みながら、サーモノプスの脚元まで成長し、ヤツの身体を締め上げた。ちなみにメチャクチャ早かった。目で追うのがやっとだ。

 まるで操れるアナコンダみたいだ。きっと特殊能力だ。

 白髪交じりの少女は再び、

〘その刀を貸せ!!〙

 何か叫んだ。すると黒髪の少女が、俺から吸血鬼を奪って彼女に投げた。放物線を描いた吸血鬼を彼女は難なくキャッチした。短剣をしまい、鞘を払って構える。

〘コレはまさか……〙

「けど……」

【バオゥッッ!!!!】

 サーモノプスがツタを喰い千切り、突進する。だが外硬殻は……

「斬れない……」

 ……否、ヤツは喉から出血した。吸血鬼がすれ違いざまに喉を斬ったのだ。間違いなく外硬殻は全身を覆っている。それなのに。

「どうして……?」

 持ち主が違えばそんな芸当も可能なのか。一応言っとくが、主人は俺だぞ?

 喉が裂けたサーモノプスに彼女はしがみつく。出血は治まるどころか寧ろ加速度的に増えている。無知蒙昧な俺でも、何故かは学んだ。

「あれが彼女の特殊能力……」

 他に有り得ない。彼女が触れてから見るからに出血は酷くなっている。傷口には直接触れていないのに。

「何の能力だ……?」

 俺をカウントすれば2頭の3人目の能力者。遠距離斬撃、暗転突進、ツタ、出血、謎。出血させる能力は勿論強いが、どうにもサーモノプスの非持弱点ってのが気になる。特殊能力に弱点ってのは明確にあるのだろうか。

『――だから権能を行使するのには条件がある。権能によって影響を受ける者の過半数に同意を得られなければ発動しない』

 特殊能力とはまた違う、ゴーストの『権能』はそうだった。

【ドスンッ……】

 サーモノプスが倒された。最期まで触れていた彼女は(おもむろ)に立ち上がり、短刀で腹の皮膚を裂き始めた。

「何してんだ……?」

〘行くよ。付いてきて〙

 2人とも死骸に向かったので俺もそうする……が、具体的に何をするのかは分からない。そして左脚折れてるので肩を貸してください、お願いします。

 ちなみにサーモノプスの肉の見た目は当然ながらサーモンそのものだ。血抜きされてまだ新鮮なのでこの場で喰えそうだ。いや、流石に生喰はしないけど。

 どうやら彼女らは解体作業をしているらしい。魚類というより恐竜の骨に近い太い骨を切り出している。まさに化石になりそうな骨格だ。

(手伝い……って、吸血鬼は預けたままか)

 現在進行形で太い骨の切り出しに使っている。

【コンコンッ】

 マジで外硬殻硬い。自動車叩いてるみたいだ。これに激突されたのか、俺の左脚。まぁそれを紙みたいに斬ってるんだから、原理が分からない。まぁ地球の物理が通用しない可能性もあるワケだし。

 骨を2本切り出すと、彼女はそれを担いだ。残りは放置するらしい。

(行く宛て無いし……俺も付いて行って良いかな……?)

 夕暮れが近いし、不安が残っている。安全確保のためにも一緒にいたい。それよか吸血鬼返してほしい。……が。

(言語が伝わってないっぽいんだよなー)

 観戦中、独り言を何度か呟いたが、ノーリアクションだった。無視ではない。ただ首を傾げていた。

 俺が分からないのと同様に、彼女らも日本語が分からない。どう言えば良いのか分からない。

(そういえば翻訳あった……よな?)

 スマホ亜種を取り出してアプリを開こうとした。

〘恥を知れ、弱者〙

(意味分かんねぇーーっ!!!!)

 今から聞こうと思ったのに。喉元に吸血鬼の切っ先があるのは何でだチクショウ。その斬れ味は散々見せられた。それに加えて出血の能力。下手に抗えば死ぬ。

 完全に敵意を見せて、声色を低くして、俺を睨んでくる。主に白髪交じりの彼女が。あとの黒髪の少女と金髪の少女は後ろで苦笑いしている。いや、助けて?

〘まずは褒めよう。お前の運動能力、かなり良かった。だがそれを打ち消すほどに、苛立たせてくれるな。戦場から逃走した挙句、こんな雑魚相手に苦戦だと? 仲間達はどうした〙

 何ですか、日本語でお願いしますよ。キレてるのはヒシヒシと伝わるけれども。

〘答えろ。それともなんだ、斬り捨てた方が良いか?〙

 とりあえず降参の意味を込めて、両手を挙げた。

〘ラズ。彼は私達の言葉を理解してない。初めから違う言語を話してる。服装も挙動も変だし、異邦人ってことも……〙

〘バカ言うな、クラン。私達の理解が及ばない場所からの異邦人が、ここまで無傷で辿り着いたと?〙

「でもさー。確かにラズの言った通り、ここまで来たのはおかしいと思うよ? 怪我したのだってついさっきの出来事だし。でも事情知っててこの態度できる肝の据わった彼が、超進化恐竜相手に逃げ出すかなー? 実際、ラズが今切っ先向けてるのに冷静だし」

 そうだな。

「ひとまず保留、ってことにして。連れて帰るってのはどうかしら?」

 ぜひそうして欲しい。

「……代替案が無いのに反論するのもどうかと思うが、後が面倒だろ? 誰だって彼らの話を聞こうとする。だがコイツは何一つ知らない」

 そ。俺はこの会話からしか情報を得られない。翻訳自体はさっきからできている。

「だよねー……。どうしようかー……」

「話をするのが一番手っ取り早いけど……」

「じゃあ話をすれば良いんだよ」

『!!!?』

 一同がこっちを見た。突然同じ言語で話せばそりゃ驚くわな。

「貴様ぁ! やっぱり話せるのか!」

「ちょっ、ラズ! 落ち着いて! 早まっちゃダメッ!」

「止めるなジューン! コイツはずっと分かって黙ってたんだ!」

「今なら話ができる。ひとまず、吸血鬼を返して」

「吸血鬼って……この妖刀のこと?」

「そう。これと同じ気配がしたから……」

 そう言うと、金髪の少女は背中に掛けている純白のスナイパーライフルを指した。これも特殊武器らしい。さっきの発砲音はコレか。

「話をしよう。俺は碧月流羽、日本人」

 そして手を差し出した。交渉は握手からだ。

「……ラズ。カノトキ人」

 俺達は握手を交わし、吸血鬼を返却してもらった。敵意が無いのは伝わった様だ。

「私はクラン。よろしくね」

 金髪のスナイパー、クラン。

「ジューンだよー。よろしく、流羽君」

 黒髪のツタ使い、ジューン。

 それぞれと握手を交わした。サーモノプスの血が手に付いたことを気にしてはいけない。

「そう言えば……」

【ズゥゥン……】

「なっ! 地震か!?」

「いや、これは……」

 地響きがした。だが地震と言うより、寧ろ巨大な「何か」が大地に降り立った様な衝撃だ。湖の水面が揺れている。無風だが、その波紋は向こう岸から。

(まさかな……)

「ラズ、ジューン。耳を貸して頂戴」

 地響きが起こってからスコープで向こう岸を見ていたクランが、2人に耳打ちした。

「……事情ができた。急ぐが吉だ。それで碧月流羽、さっき何か言いかけたな。どうかしたのか?」

「……時間が無いなら良いよ」

「……本当に良いのか? そこまで余裕が無い訳じゃないぞ」

「……サーモノプスってカットして持ち帰れるか?」

「カット自体はできるんじゃないかしら。数日は日持ちするし、問題は運ぶ方法よ」

「コレに詰め込めば良い。1tなら入るから」

「……じゃあやるか。動物性の栄養は貴重だし」

 まさか了承してもらえるとは。



 思いがけないカノトキでの生活が始まった。

お待たせしました。し過ぎました。

言い訳させて下さい。この第1話のデータ、計4回消えてます。

①上書き保存→白紙に

②未保存で終了→白紙に

③同上

④同上

萎えてました。これはもう筆者がバグってる。


さて、自分は5回目の第1話ですが、我ながら表現下手くそだな〜って思います。戦闘描写は好きなのに下手くそだから推敲して自分でムカつきます。もっと磨かなければ。序盤とか5回書いてるのに。そこまで後先考えず書いているので矛盾が一番怖いです。

あ、カノトキ人の名前のモデルはベリーの類で統一してます。それでも名前の意味を持っているのは未登場のごく一部だけです。碧月には無いですが流羽はちゃんと意味があります。ご自由に解釈どうぞ。

いつかはそういった解説用の新規小説書く……かな?キリが良ければ書こうかな?

てか、第1話なのに純粋な超進化恐竜を流羽は見ていないんですね。流羽自身の能力も不明ですし。流石に次話には出ますが。


では今度はその次話で。今度からはできるだけ早く、高クオリティを、一発で仕上げられる様に頑張ります!


ズーマ

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