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55.不器用な人(レベッカ・メイアン視点)

 ここ最近、月初に騎士団を訪れては我々の訓練を見て下さる教官殿から、その訓練もなしに突然呼び出される。なんでもエルグランツ周辺で起きている行方不明事件の調査任務に私とミーティアを同行させたいそうだ。


 教官殿は女性なのだから、数少ない女性騎士である私たちが選ばれるのはごくごく自然な流れだろう。私だって逆の立場ならそうするに違いない。


 ――ただ唯一問題なのは、ミーティアが相変わらず彼女を嫌っているということ。


 殿下を好きになるのはわかる、素晴らしいお方だから何もおかしくない。


 身分を気にして身を引くのも、私はしないけどわからないでもない。


 しかし、それでいて殿下に近づく女性にはしっかり嫉妬するのは如何なものか。


 しかも私の見立てでは近づいているのは教官殿ではなく殿下の方だ。とばっちりを受けているだけの教官殿には少し同情してしまう。


 そうミーティアに指摘したところでムキになるだけで面倒なので、最近はこの話題になると聞き流すようになってしまっている。私としては任務の邪魔にさえならなければ一先ずどうでも良かったから。




 調査を開始し、担当の南門から南西のエリアを見て回る。南の街道は人通りが多いので、行き交う人々に何か目撃していないか尋ねたり、被害者の貧民繋がりで街の南西区画で話を聞いたりしてみたものの、めぼしい情報は得られなかった。


 その代わりというのも変だけれど、人気の少ない森に直接赴いて歩き回った末、地面に直径三メートル近くはある穴を複数見つけた。どう見ても人間が掘ったものではないので、今回の事件は地中を住処とする大型の魔物の仕業なのだろう。


 まったくの収穫なしとはならなかったことに私は安堵の息を吐いた。




 さっそく夜に各々の調査結果を報告しあう。しかし私の推測は先に報告したレオナ様のものと違っていた。どういうことだろうと悩みながら自らの報告を済ませると、更に追い打ちをかけるようにミーティアが異なる推測を口にする。私自身、自分の推測には自信があったのでこれには驚いた。


 ただ何も判断材料がない時より幾分ましだったので、私なりに提案をしてみると、教官殿は嫌な顔ひとつせずに真剣に耳を傾けてくれた。しかも最終的に提案を取り入れ、囮と北東エリアの監視を並行して行うことにまでなった。


(屋敷に着いた時の使用人とのやり取りといい、訓練以外でもそこまで恐ろしい人には見えないのよね……)


 騎士同士であれば互いに立場は対等なので問題はないが、任務で他の貴族と会話をする際には、まだ成人して間もない女性騎士である私はどうしても侮られて下に見られがちだ。たとえ口には出さなくても、「小娘が生意気な」という雰囲気が漂ってくる。


 でもこの人からはそういった感情は一切伝わって来ない。それどころか同じ女性だからか、男性騎士にはない気遣いまで感じるほど。さすがにミーティアと一緒にいる時のような気安い雰囲気にこそならないけれど、私としては教官殿と一緒にいることは嫌ではなく、むしろ好きな方だった。




 しかしいくら嫌ではないとはいえ、見張りを一日中行うというのはなかなかに辛い。教官殿は終始真面目に見張りをしていたので気を抜くことすら出来ないのだ。しかもこれだけ頑張ったのに初日は何の成果も無しという残念過ぎる結果になってしまった。


 囮役のミーティアに至っては暇すぎて死にそうだったようで、何か暇を潰せるものが欲しいと教官殿に訴えていた。彼女はそれもやはり抵抗なく受け入れ、刺繍道具が急遽用意されることになった。




 翌朝から一心不乱に刺繍にのめり込んでいるミーティアが少し羨ましい。自分も刺繍をしたいと思えるくらいには、こちらも変わらず退屈だ。


「ミーティア、刺繍上手ねぇ……」


 そんな沈黙の中に何気ない呟きがぽつりと零れた。騎士団以外での彼女を知らない教官殿にはとても意外に映るのだろう。大雑把なようで実際はかなり乙女な子なのだけど。


「部屋に籠るより身体を動かすのが好きとは言いつつ、実は結構手先も器用なんですよ彼女」


「へぇぇ、そうなんだ……。ちなみに私の中ではレベッカは更に上手そうなイメージよ」


 教官殿も退屈なのだろう、相槌だけで済まさず話を振ってくれる。


「私も令嬢の端くれですから、人並み程度には嗜んでいますよ」


「あ~……これは間違いなく上手な人の台詞だわ……」


 母が厳しかっただけあって私自身かなり自信はあるけれど、流石にそれをはっきり口にはしない。それこそ今、目の前にいるこの人がもっと上手な可能性だってあるのだ、要らない恥は掻きたくない。


「そういう教官殿も実はお上手なのでは?」


「残念ながらその期待には沿えないわ。というか前にも思ったけど、こんな所でも『教官殿』はやめてよ……。指南役としてここに居るわけでもないし、レオナで良いわ」


(まぁ確かに今は任務中であって、訓練してるわけじゃないものね……)


「了解しました、レオナ様」


 希望通りにしたのに彼女はまだ不満げだ。


「どうして『様』を付けちゃうかな……」


「訓練ではなくとも私は任務に同行する側、つまり上官は貴女です。騎士同士であれば階級差を気にしないのが通例ですが、貴女まで呼び捨てには出来ません」


 彼女は爵位持ちなので、本来であればクローヴェル卿と呼ぶべきなのだ。「レオナで良い」と言われたから名前に様付けにしたけれど、呼び捨てなど地位が上の者が下に向けてか、余程親しい間柄でなければ普通は許されない。


 年齢や立場でいくらでも呼び方が変わるというのは本当に面倒だと、私も常々思ってはいる。


「一応そういう認識で居てくれてはいるのね」


「どういう意味ですか……?」


 レオナ様はミーティアから視線を外すことなく、眉を下げながら、どこか諦めの入った表情で語り始める。


「私、初対面の時に盛大にやらかしたせいで特務の騎士たちからは嫌われてるからね。そんな奴が爵位を得て、急に指南役だって言ってでかい顔してきたところで誰も歓迎する気なんて起きなかったでしょう?」


(確かに最初はみんな戸惑っていたし、歓迎もしていなかったけど……)


「それでも訓練をこなすうちに私の実力に関してだけは認めてもらえたみたいだけど……それだけだわ。自分のせいだから仕方ないのはわかってる。今回、貴女たちも任務だから嫌々ついてきてくれたんだってわかってる。そんな状況だから、貴女に貴族としての立場を尊重してもらえたことが意外だったのよ」


 ――それは違う、この人は誤解している。我々が普段どのような想いで訓練を受けているのか、自分が騎士団全体にどのような影響を与えているのかをまるで知らないようだ。


 圧倒的に言葉でのやり取りが足りていない。これではいけないと強く思った。


「レオナ様の事情はミーティア経由でウィリアムから聞いています。最初こそ貴女に対して良い感情を持っていなかったのは事実ですが……今はもうそんなことはありません。むしろその実力と民への姿勢を尊敬すらしています! そしてそれは他の皆も同じです、間違いありません」


「え……でも現にミーティアは……」


 本当に意外だったようで、呆然とする彼女から絞り出された声はとても弱々しいものだった。


「あの子はまた別の理由なので……。本来あのような態度を取って良い筈がないのですが、あまりに頑なで止められず……申し訳ございません」


「そっか、そうなんだ……」


 ミーティアの個人的な対応が、その誤解を助長していたことに苛立ちと後悔を覚える。これは適当にあしらっていた私の責任でもあった。とばっちりを同情している場合ではなかったのだ。


 次第にその綺麗な深い赤色の眼には涙が浮かび、それを見せまいと彼女はそっぽを向いた。


「あはは……任務中に何してるんだろ……。ごめん、少しミーティアを見ていてくれる?」


「……はい」


 皆に嫌われていなかったと知り、酷く安堵して涙を流している彼女の姿は、騎士団での勇ましく恐ろしい姿とはまるで似ても似つかない。私たちよりほんの少し年上なだけの、私たちと何も変わらない女性にしか見えなかった。


(その強さや勇ましさばかりを見て、こちらもどこか誤解していたみたいね……)


 その立場を使って強引に我々に迫り、本音で話す機会を作ろうと思えば出来たはずだ。しかし彼女はただ職務を全うし、自分が撒いた種だから嫌われても仕方ないと我慢していた。それでもこうして打ち解けようと、傷つけないよう、恐る恐る私たちと接しようとしている。


(優しくもあるけど、なんて臆病で、そして不器用な人なんだろう……)


 もっと話をしてこの人を知らないといけない。私たちを知ってもらわないといけない。


 ようやくそれに気付けたというのに、眼下ではミーティアに近づいてきている不審者の姿を見つけてしまう。このやり取りを中断せざるを得なくなってしまったことがとても歯痒い。


「あの……レオナ様」


「……うん?」


「ミーティアに何者かが話しかけています……」


「えぇっ!?」


 流石のレオナ様もこんなタイミングで来るとは思ってもみなかったらしい。




◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇




 やはり男は誘拐犯だったので囮作戦は上手くいったといえる。しかしミーティアが殴られて気を失った瞬間は心中穏やかではいられなかった。制止してくれたレオナ様も表情を見るに同様の心境だったように思う。


 ミーティアが縛られ、麻袋に詰められる所を見ていると、胸の奥にじわじわと何ともいえない焦りが湧いてくる。


 このまま奴らを阻止出来なければ彼女は取り返しのつかないことになるという事実。人ひとりの、それも身近な人間の人生が掛かっているという重圧は想像していた以上のものだった。


 それでも私がしっかりしていれば済む話。レオナ様だっている。何か失敗しても互いにフォローし合えるなら彼女の安全は問題なく確保出来るはず。


 忙しなく脈打つ鼓動を落ち着かせようと、そう自分に言い聞かせる。




「レベッカ、あの数だと女王がいるかもしれない。奴らの巣が海の向こうでない限りは殲滅してから戻ってくるから、その間ミーティアを頼めるわね?」


 ――――なのに現実はままならない。重圧はあっけなく私ひとりの肩に重くのしかかってきた。


 レオナ様の判断は間違っていない。これは私がやらないといけないことだ。


「……了解しました。どこに向かったかは後からコレで追跡して下さい」


 囮作戦が決まってから、もしもの為にと用意しておいた魔石だったけれど、まさかこれが生命線になろうとは……。


 不安のどん底にいる私を引き上げてくれる頼みの綱を強く握りしめる。


「わかった。追った先での行動は任せるけど……レベッカ、冷静にね。冷静さを失った瞬間に全てが悪い方に転ぶと肝に銘じておきなさい」


「…………はい」


 覚悟を決めろレベッカ。


 不安に髪を振り乱して嘆くことなど、今の私には許されないのだ。




◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇




 レオナ様が飛び立って独り残された私は大きく息を吸い、吐いた。無理やりにでも心を落ち着かせて目の前の任務に集中しなくては。見失いましたでは済まないのだから。


 奴らに気付かれないよう追跡を開始する。


 南の街道は人通りが多いので、流れに任せるだけでそれなりの形にはなる。なのでレオナ様が後から追ってこられるように、ちゃんと気付けるように魔石の置き方に神経を使うことにする。この出来がこの任務の成否に大きく影響することはもはや疑いようもない。


(どこまで行くのかわからないのだから節約していかないと。どこにも到着しないまま、途中で無くなってしまったら終わりだわ……)


 魔石を等間隔で置くのをやめようと決意してから一時間ほど歩いたところで、奴らが突然街道から外れていく。そのまま森の中に入るようだ。


 わざわざ道を外れる者などそう居ないので周囲を行く人々も怪訝な顔をしているけれど、奴らはそんなものは歯牙にもかけずに堂々と進んでいく。挙動不審でいるよりも、あぁして堂々としている方が案外平気だったりするのだろうか。


 私も奴らを追って森へと入っていく。もう周囲には街道の時のような通行人はいない。隠れ蓑がなくなったので姿を見られれば確実に怪しまれてしまう。


 緊張で鼓動がまた速くなる。


 見失わないように、同時に見つからないように距離を保つのはとても難しい。街道と違い見通しが悪いので魔石を小まめに置くようにしたが、同時に私の不安がその動作に現れているようにも思えた。


 そうして更に三十分近くかけて、遂に奴らのねぐららしき洞穴に到着する。


 ――しかし、私は眼前に広がる光景を前にして、不安が最高潮に達していた。


(そんな……この穴の形は……)


 それは一昨日に森の別の場所で見かけたものに酷似していたのだ。


 魔物が関わってきたところで良いことなど何ひとつない。どう考えても大型で、しかもまだ何の魔物かも判明していないという事実がリスクの増加に拍車をかけていた。何故奴らはここまで馬鹿な真似が出来るのだろうか……本当に理解出来ない。


 しかしここでじっとしているわけにもいかない。誘拐犯や被害者の人数、奴らの行動パターンなど、今後の事を上手く運ぶために更なる情報を得る必要がある。


 私はおそるおそる洞穴へと足を踏み入れていく。入り口から真っすぐ進むと十字路になっていて、正面の通路の奥には明かりが見える。逆に左右の通路には暗闇が広がっていて、今にも何かが飛び出してきそうだ。


 ほんの一瞬だけ魔法で光源を作り、左右の通路の先を確認する。何も居ないことに胸を撫でおろし、右側の通路の脇に身を隠してから聴力強化の魔法を使用する。




「家が金持ってそうなガキ引っ張ってきたじゃねーか」


「産まれたばかりの弟に両親を取られて寂しそうだったもんで、良心が疼いちまいましてね。こいつが頭ぶん殴ったんで一応癒しておいてもらえますかい?」


「まったく、商品は大事にしろって言ってんだろ?」


「へへへ、すいやせん……」


 洞穴の中なので雑音が少なく、声がとても聞こえやすいのはありがたかった。先程の二人組とリーダーらしき男の会話が聞こえてくる。リーダーはやはり魔法を使えるようだ。


「自分で言うのもなんすけど、だいぶ上玉引っ張ってこれたと思うんすよ」


「あぁ。ツラもいいし、背の割にはイイ身体してんじゃねぇか。こりゃ良い値で売れそうだな」


「じゃあ……」


「お前らの勝ちだな、新人組が引っ張ってきた娘で遊んでいいぞ」


「やりぃ! さっすがお頭だぜ!」

「よっしゃー!」


「マジかよ……」

「くそー……」


 新人組という単語も出てきたので、まだあと最低二人は仲間がいるようだ。


 しかしそれよりも、どうしようもなく下衆で許しがたい会話だ。いくら私がこういう荒くれ共の言葉にあまり馴染みがないといっても、今の言葉の意味をはき違えることはないだろう。


「これ以上は面倒見れねぇからな、先に港に送らせた奴らも合わせりゃ儲けとしちゃ十分だろ。明日にはここを出るぞ。いいな?」


『ういーす!』


 港ならばここから南にあるフィデリオ港のことだろう。そこにまだ奴らの仲間と被害者がいるらしい。そして今の会話を聞く限り、この場には誘拐の実行犯が全員揃っていて、リーダーも含めて五人で間違いなさそうだ。


「さぁて、お楽しみタイムだぜー」

「うへへへへ」


「んー! んー!!」


 猿轡をされた女の子の抵抗する声が聞こえる。このままだと『遊び』が始まってしまう……。


 いくら任務のためといっても、こんなもの見て見ぬ振りなんて出来るわけがない。いくら一人魔法が使えるといっても相手はたった五人。奇襲もかけられるなら私ひとりでもいけるはずだ。


(やってやる……!)


 リーダーを生け捕りにし、ミーティアと女の子を救い出すのだ。


『凍てつく氷槍』(アイシクルランス)


 中央の通路からねぐらへと突入すると同時に氷の槍を放つ。私が走るよりも速い速度で、一番手前にいた、女の子を組み伏せようとしていた男二人に氷の槍が命中し、その半身を凍り付かせる。


「ギャアッ!」

「なんだぁ!?」


 そのまま動けない二人をすれ違いざまに斬り捨てる。残り三人。


「敵襲だ! お前らかかれ!」


 私の行く先を塞ぐようにして新たな二人組が襲い掛かって来る。


「オイ、こいつも女だぜ! さっきの上玉に負けず劣らずって感じだな!」

「俺はこっちの方が好みだぜ! 嬢ちゃん、剣なんて捨てて一緒に遊ぼうや!」


 静かな洞窟内に剣戟が鳴り響く。数で勝るせいか調子に乗って話しかけてくる男たち。どこまでいっても下衆な反応に吐き気を覚える。


「うるさい! さっさと死ね!」


 所詮は平民、身体強化を強めれば容易く剣を弾き飛ばせる。そうして一人の首を撥ね、もう一人の手首を切り落とす。


「ぎゃああああああ! 手が! 手がぁぁぁ!」

「くそっ! 強えぇなコイツ……なら……!」


 手を押さえて絶叫する男の向こうで、ミーティアを強引に抱えて奥の通路に逃げようとしている。


「待て、逃げるな!」


 手首を抑えて痛みにもがいている男も斬り捨て、追いかけようとした時――――


「んー!」


 必死に訴える言葉にならない声が耳に入り、はっと我に返る。


 すぐに振り返ると、男たちの血を浴び、転がっている死体を見て明らかに取り乱している女の子の姿が。


「あっ! ごめんなさい! 『洗い流し』(ウォッシュアウト)!」


 すぐに洗浄の魔法で返り血を洗い流し、猿轡と両手両足の縄を解く。


「大丈夫?」


「お、お姉さんは……?」


「私は騎士団の人間よ、レベッカっていうの。あなたは?」


「……エマ」


「ねぇ、エマ。私はまだこれから悪い奴を捕まえて、もう一人の女の子を助けないといけないの。ここは危険だから、それが終わるまで外で待っていてくれる? 絶対に迎えに来るから」


「嫌……お願い、こんな所で独りにしないで……」


 こんな死体が転がっているような非日常の中に取り残されるのは心細いだろう。実際、独りで居させるリスクもゼロではない。


 しかし何の魔物の巣穴かも分かっていないまま一緒に奴を追いかけるのは危険だ。魔物と遭遇した場合、ミーティアだけでなくリーダーの男も殺されないように守らなければならないのだ。そこに彼女まで加わるとなると私の手に余るのは目に見えている。


 今こうしている間にもミーティアとあの男が魔物と遭遇する可能性が高まっている。何とか落ち着かせて先を急がなければ……。


「大丈夫、もうじき世界一強い女の人が来てくれるから。絶対にエマを護ってくれるわ」


「へっ? 世界一?」


「そう、世界一! 美人で強くて優しい凄い人だから何も心配しなくていいわ。だから外で待っててね、いい?」


「……わかった」


 なんとか納得してくれたことに胸を撫でおろし、少しでも安心出来るよう、エマを優しく抱きしめる。


「ありがとう、エマ。じゃあ私は行って来るから」


 せめてもと死体が見えない位置まで一緒に移動してから、私は洞穴の奥へと駆け出した。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 騎士団の人達とレオナさん、お互い遠慮もありなかなか距離が縮まらないことを感じて、レベッカさんは自分がレオナさんのことをもっと知ろうと思ったでしょうね(*'ω'*) そして騎士団の皆の気持ち…
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