54.本音
エルグランツまで戻ってきた私は、少し前まで張り込みをしていた屋根に再び降り立った。当然そこにレベッカの姿はない。
早速彼女の置いていった魔石の魔力を感知するために神経を尖らせる。
南門に近い民家の屋根の上でひとつ見つけると、今度は南門の片隅に置かれていた。そのまま南の街道上に一つ、二つ、三つ。真っすぐ街道を移動しているのだろう、魔石が置かれている間隔が広がっているのは恐らく魔石の節約の為だ。
魔石を見逃さないよう飛ばずに走って追跡し、十分ほど経ったあたりで同じ場所に魔石が三つ、それもただ置かれているのではなく、地面にめり込んで動かないようにしてあるのを発見する。
「魔石同士を結んだ線が指す方角ってことでいいのかしら?」
南向きの状態で右前方、つまり南西を指しているその先には森が広がっている。
(南西の森……あぁもう嫌な予感しかしないわ、バカ誘拐犯が……)
この予感はきっと当たっている、急がなければ――。
森の中には街道と違ってこまめに魔石が置いてあったので迷いはしなかった。そしてしばらくして森の中の小さな岩山に、どう見ても自然に出来たものではない洞穴を発見する。
「さて、何の魔物が作った穴なんでしょうね……」
やはりバカ誘拐犯共は魔物の掘った穴をねぐらにしていた。すぐに魔物に殺されなかったのは運が良いのか悪いのか。ここに攫われてこられる側の迷惑を考えろと言いたい。自分たちだけさっさと殺されてしまえば良かったものを……。
心の中で悪態を吐きつつも洞穴に入ろうとすると、足音と共に中から気配を感じて咄嗟に身構える。
しかしその気配の主はなかなか姿を現さない。
それでもじっと待っていると、見知らぬ少女が恐る恐るといった様子で洞穴から顔を覗かせた。こんな場所にいる少女なんて他に誘拐されてきた被害者しかいないだろう。
「あなた、大丈夫!?」
「……ッ! うわあああああああん!」
私の存在に気付いた少女はすぐにその顔を歪めて、大きな声で泣き出した。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
私は少女が泣き止むまで待ち、落ち着いたのを見計らってから話を聞くことにした。
「――つまり、あなたを助けた女性はさっき攫われてきた女性を盾にして逃げた誘拐犯のリーダーを追って洞穴の奥に進んでいったのね?」
「うん……。あたしを助ける時に他の悪い奴らは全部倒してくれたの。リーダーを追いかける前にあたしに外へ逃げろって……」
「なるほどね。私は誘拐犯を捕えにきた彼女たちの仲間よ、無事で良かったわ」
「よかった……。じゃあお姉さんが世界一の人なのね」
「へっ?」
彼女は安心したようにそう言って安堵の息を吐くが、私は突然飛び出した単語につい変な声が出てしまう。世界一の人って何だろうか……。
「助けてくれたお姉さんが言ってたの。もうじき美人で強くて優しい凄い人が来るからって」
「あはは……レベッカったら……」
この子を落ち着かせるために誇張したのだろうけど、まさかそんな風に言ってくれていたとは。
「ここにはもう他の被害者はいないの?」
「売るためにもう別の場所に連れていかれたみたい。やつらが言ってた」
「そう……。その場所を聞き出すためにもリーダーを捕まえないといけないんだけど、ちょっとお願いがあるの」
「お願い?」
「えぇ。この洞穴ね、魔物の掘った穴なのよ。やつらもこれまで運良く襲われていなかったみたいだけど、奥に進んで行ったのなら遭遇してしまっている可能性があるの。で、私はそこに援護に向かいたいんだけど、あなたを独りにするわけにもいかない。だからあなたにも一緒についてきて欲しいの」
「えぇ……」
予想通り女の子は難色を示している。折角逃げて来たのに、また危険な場所に戻らないといけないのだから不安になるのはよくわかる。
「大丈夫! 世界一強い私が絶対守るから!」
そんな彼女を安心させるために少しオーバーに振舞ってみせると、女の子は小さく笑った。
「うん、わかった。絶対守ってね? 世界一のお姉さん」
「任せなさーい! しっかり掴まっててね!」
彼女をおんぶする。成人が近い年頃の女の子であっても身体強化を使えば何ら問題はない。
私は気を引き締めて洞窟の中へと足を踏み入れた。
洞穴に入るといきなり十字路に出くわした。正面の道の奥の空間には明かりが見えるので、恐らくねぐらとして使われていた場所なのだろう。
問題はそこからどこへ向かったかだ。
「最初はどっちに向かったかわかる?」
「あの部屋の左奥にも通路があるの! そっちから逃げてった!」
「ありがと!」
気持ち的には全速力で駆けたいところだが、通路内は狭くて真っ暗闇なので走れない。仕方なく魔法で光源を作って慎重に進んでいく。
その間も地下から魔力の反応を感じる。時折その反応が強まっているので戦っているようだ。
ジリジリと焦りが募っていく……。しかし戦っているのならまだ生きているということでもある。まだ助けられる、焦ってはいけない。
そう自分に言い聞かせて歩を進める。魔力の反応を頼りに、下へ下へと――。
ついに道しるべの魔石もなくなってしまったが、その頃には戦闘の音が大きく通路に響いてくるようになってきていた。ギチギチと何かが蠢いている音の中に時折、金属の弾かれる音や風が吹き荒れる低い音が混じっている。
するとある地点で急にそれらの音が真下から鮮明に聞こえてきて、思わず足を止める。通路はまだ前方に続いているのにと不思議に思いながらも足元を確認すると、ぽっかりと穴が空いていた。
覗き込んでみれば下には大きな空間が広がっており、火球がひとつ輝きを放ちながら宙に浮いていた。その明かりに照らされていたものは、鈍い鉛色の光を放つ巨大な蟻が五体と、それから距離を取りながら戦う一人の人影。少し離れた場所に二人分の人影もかすかに見える。
こんな場所にいる人影などもはや間違えようもない。
「レベッカ!!!!」
「……ッ!! レオナ様!!!!」
戦っているであろう人影の名前を叫ぶとハッキリと返事が返ってきた。その瞬間、心が一気に沸き立ったのを感じる。尋常でない硬度の外殻を持つA級の強力な魔物であるアーマーアントの猛攻を、この暗闇の中で、二人を守りながらという圧倒的に不利な状況のなか凌いでいたレベッカは本当に凄い……。
その見事な功績に感動し、少し泣きそうになってしまう。
でも泣くのは二人を助けてからだ。彼女たちの努力に報いなくては。
「両手を使うから、足も使ってしっかり掴まっていて!」
「うん!」
そう女の子に指示して、すぐさま足元の空間へ飛び降りる。
落下しながら両手を組み、強く握り込んで稲妻の魔力を作り出して両腕を一気に広げれば、巨大な青白い稲妻の塊がその場の空中に浮かび、この空間を青白く照らし出す。
私の存在に気付いた蟻たちが自分たちのテリトリーである暗闇を暴く雷光を見上げている。そんな間抜けどもを睨み返しながら右手を握り直し、大きく身体を捻って振りかぶる。
「レベッカに――触れるなぁぁぁ!!!!」
『雷神の鉄槌』
右手で宙を殴りつけるように全身を使って腕を振り抜くと、その動きと連動して上空に浮かぶ青白い稲妻の塊が形をひしゃげながら眼下の蟻たち目掛け高速で落下を始める。
危険を察知した蟻たちは避けようと動き出すが――もう遅い。
『ズドオォォン!』
稲妻の塊は一瞬のうちに蟻たちに覆いかぶさり、そして押し潰した。
『ギイィィィィィィ!!!!』
蟻たちの身体を稲妻が駆け巡るバチバチという音と、苦悶の声らしき金属音が鳴り響く。『伝播する稲妻』の比ではない殺意に満ちた電撃で、筋繊維や内臓のすべてを焼き切ってしまう魔法だ。喰らったら最期、強靭な外殻を持っていたところでどうすることも出来ないだろう。
現に着地する頃には、蟻たちはピクリとも動かなくなっていた。
「レベッカ!」
背負っていた女の子を地面に降ろして、気が抜けてへたり込んでいたレベッカに駆け寄り、抱きしめる。身体にまともに力が入らないのだろう、同時にずしりとした重みがのしかかってくる。……でもそれでいい、私で良ければいくらでも受け止めてあげたい。
「凄いわ、よく頑張ったわね……」
「ふふふ……来てくれるって信じてましたから……」
これまで聞いた中で最も穏やかな声だった。それだけ緊迫した状況が続いていて、それから解放されたことに安堵しているのだろう。
うんうんと頷きながら、同じ体勢のまま背中をぽんぽんと叩いたり、さすって頑張った彼女を労う。こんな状況ではこのくらいしかしてあげられないことが申し訳ないくらいだ。
「なんでよ!」
するとそこに腹の奥から絞り出したような叫び声が響いた。
――ミーティアだ。
レベッカが「もう大丈夫です」というので一緒に立ち上がり、ミーティアと項垂れている誘拐犯のリーダーの元へと移動する。
「なんで今になって来るのよ! 今まで何処に行ってたのよ!! なんでレベッカだけ独りでこんなに危ない目に遭わないといけないのよ!!! レベッカはなんで笑っていられるのよ!!!!」
両手足を縛られ、恐らく薬の効果で身体も満足に動かせない状態にありながらも、必死に首を振り回して泣いて訴えるミーティア。その目は怒りに満ち、真っすぐに私へと向けられている。
「またドラゴンの時みたいにピンチに駆けつける演出なの!? そんなに自分を良く見せたいの!? 私が、レベッカが、一体どんな気持ちで居たかわかってんの!!?」
一歩間違えば抵抗も出来ないまま死んでいたかもしれない。ただでさえ囮役として殴られたり、薬を盛られたり、縛り上げられたりと散々な目に遭っているのだ、彼女の怒りは至極当然だろう。
「ごめんなさ――」
「いい加減にして!」
『パァン!』
なのにミーティアの手足の縄を解き終わったレベッカが、こちらの言葉を遮って、なんとミーティアの頬を叩いてしまったではないか。
渇いた音がこの地下深くの空間に響き渡る。
普段のレベッカのイメージからかけ離れた行動に、私も最初は何が起こったのかわからなかった。実際に叩かれたミーティアも言葉を失っている。
「こっちだって事情があったのよ! ちゃんと理由があって別行動していたの! 私だってそれを承知の上でここまで来ていたのよ! それぞれの責務を全うしていただけよ!」
ミーティアはレベッカの剣幕に呆然としている。レベッカを想って言っていたつもりなのに、その本人から怒られているのだから無理もない。
「それなのに何でレオナ様だけが責められないといけないの!? レオナ様も己の責務を全うしただけなのに! 私がもっと強ければ危険なんてなかったのに! レオナ様だって出来ることなら全部自分ひとりでやりたいわよ! でも出来ないから、身体はひとつしかないから私たちを頼ってくれたんでしょう!?」
最初はまくしたてていたレベッカも、次第に勢いが落ち、遂には顔を手で覆い蹲ってしまう。
「もう言ってること滅茶苦茶じゃない……いい加減嫉妬の目で見るのをやめようよ……。もっと真っすぐに彼女のことを見てあげてよミーティア……」
そしてそのまま静かに泣き出してしまった。私がはっきり反論しないせいで、年下のこの子に庇われてしまっている。
……なんて情けない状況だろうか。
「あの……」
私たちが言葉を失って動くことが出来ない中、それまで静かに横で聞いていた女の子が恐る恐る口を開いた。
「このお姉ちゃん、ずっと二人を助けなきゃって必死だったよ……。あたしを一人で置いておけないから着いてきてってお願いまでして、迷路みたいな道を進みながらずっと二人を心配してたんだよ……」
「うっ……うわああああああああん!!!!」
彼女の言葉を聞いた直後、ミーティアは大きな声を上げて泣きだした。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
エルグランツに帰還した私たちは誘拐犯をウェスター騎士団へ引き渡し、少女を孤児院へ送り届けてから屋敷へと戻ってきた。
それぞれの部屋で休息を取り、やがて夕食の時間を迎える。しかし食堂にミーティアがやってくる気配はない。
「申し訳ございません、彼女にはもう少し時間をください……」
「えぇ、落ち着くまでここでゆっくりしてくれたらいいわ。王都への報告なんていつでも出来るんだから」
「ありがとうございます……」
レベッカは申し訳なさそうにしているけれど、私は不快に思ったりなんてしない。短い間に色々あったし、考える時間が必要だと思う。強引に顔を合わせたところで落ち着いて話なんて出来ないだろう。
結局最後までミーティアは現れず、夕食は部屋に運んでもらって後はそっとしておくことにした。
それに私も少し時間が欲しい。私は私で彼女らを危険に晒してしまったことを反省し、次はどうすればより良く出来るか考えないといけないから。
『コンコン』
夜も更け、お風呂にも入って後は寝るだけとなったところで寝室のドアをノックする音が聞こえてきた。
「お嬢様、ミーティア様が話がしたいと仰っていますが、いかがなさいますか?」
誰かと思えばアンナだった。ようやく気持ちの整理がついたということだろうか。
「わかったわ。すぐ準備するから応接室に案内して差し上げて。それとお茶の準備をお願いね」
「かしこまりました」
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
「お待たせ」
応接室に入ると、寝間着で髪を下ろしたミーティアがソファーに座っていて、そこにアンナがお茶を出しているところだった。私も向かいに座ってアンナにこちらの分も淹れてもらう。
「ありがと」
アンナがお辞儀をして退室し、二人だけが残される。しかしミーティアは俯いたまま何も喋らない。
ただただ夜の応接室に沈黙が流れている。
「急かす気はないから、ゆっくりと頭の中で整理してからでいいわ」
話をしたいと言い出したのは向こうなのだから、彼女の中で何かしらの結論は出ているはずだ。それでも言葉が出てこないのであれば、私はそれが出てくるまで待とうと思う。
ミーティアも頷いた。
「あの……」
そして五分ほどの沈黙の後、遂にミーティアが口を開いた。
「あれからレベッカから状況を詳しく聞きました。気を失った後、私の追跡と魔物の対処を同時にしないといけなくなったって」
「えぇ、私もあまりのタイミングの悪さに驚いたわ……」
いくらなんでもそれはないだろうと言いたくなるくらい、本当に酷いタイミングだった。これが違っていれば一体どれだけ楽だったことか……。
「それなのに自分勝手に捲し立ててしまい、本当に申し訳ございませんでした……」
ミーティアは謝罪の言葉と共に深く頭を下げた。
「仕方なかったとはいえ、貴女たちを危ない目に遭わせたのは事実だもの。命の危機が迫った時に、あぁいう思考になったって別におかしくないわ」
それは私が同じ女性だからという理由で彼女たち二人しか連れて来なかったせいだ。あれからずっと考えていたけれど、他の男性騎士たちにも他に何人か来てもらうのがベストだったと思う。それなら私と離れていても互いをフォローし合いながら上手くやれたはずだ。囮を提案したことといい、私の選択で彼女たちを危険に晒したという事実は揺るがない。
しかしそれでも目を伏せてゆっくりと首を振るミーティア。
「死の恐怖は確かにありましたが……それを加味したとしてもあんなもの、ただの難癖でしかないです。とにかく私は勝手な思い込みから貴女を侮辱したことを謝罪しなければなりません」
「そう……。謝罪の意思があるなら教えてくれる? レベッカが言っていた『嫉妬の目で見る』っていうのはどういう意味かしら? それがあったから思い込んでしまったわけでしょう?」
「…………」
とても言いづらいことだろうとは思う。嫉妬なんて言葉は良い意味ではまず使われないのだから。
しかし一口に嫉妬といっても何に嫉妬するのかで様々な種類がある。本人の気の持ちよう以外にどうしようもないものもあれば、単なる誤解から生まれているものもあるはずだ。まずはそこを知らないことには私も納得がしづらい。
また長い沈黙が流れる。
「ミーティアは殿下のことが好きなんですよ」
「レベッカ!?」
私も黙って彼女の言葉を待っていると、そこに突然レベッカの声と共に扉が開いた。反射的にそちらを向くと、寝間着姿のレベッカが佇んでいた。
ミーティアは明らかに狼狽えている。私もレベッカが突然入って来たことと、その発言内容とでの二重の驚きで思考がまとまらない……。
「突然申し訳ございません。侍女からこちらだと聞きましたので」
レベッカの後ろではアンナが申し訳なさそうにしている。案内したのはいいものの、自分がノックをする前にドアを開けられてしまったといったところだろうか。
「あぁ、うん。どうぞ座って……」
レベッカもミーティアの隣に座る。
「……で、え? ミーティアは殿下のことが好きなの!? いつから!? きっかけは!?」
レベッカが登場した驚きが落ち着いて、まさかの降って湧いた恋バナに浮かれる私。そんな私を見てガックリ肩を落とすミーティアと、それ見たことかと言いたげなレベッカ。
「ほらね? レオナ様にそんな気はないって言ったでしょ」
「うん……」
二人の反応に訝し気な顔をしているであろう私にレベッカが説明してくれる。
「この子、レオナ様と殿下が仲良さそうに話をしているところを見て、大好きな殿下がレオナ様に取られるんじゃないかって嫉妬してたんですよ。しかも自分は告白する気もない癖に」
「あぁ~……」
それを聞いてすぐに以前のユノさんを思い出し、額を押さえてソファの背もたれに倒れ込んだ。
あの時のユノさんは落ち込んでいたけれど、ユノさんに比べてミーティアは勝ち気な子だから反発されていたのか……物凄く腑に落ちた。
でもそれなら誤解を解くのは簡単だ。実際に私は殿下に好意と呼べるほどの感情を抱いてはいないのだから、はっきりとそれを彼女に伝えれば良いだけの話じゃないか。
「あのね、ミーティア。確かに殿下はそこいらの下品な視線しか送ってこない碌でもない男たちと違って真面目で話しやすい人だし、こうやって以前の使用人とまた一緒に暮らすきっかけを与えてくれた恩人でもあるけれど、私は殿下に恋愛感情を持ったことはないのよ」
「そうみたいですね……さっきの反応を見ればわかります。本当に……申し訳ございませんでした……」
「じゃあ誤解は解けたんだから、これからは私とも仲良くしてくれる?」
縮こまっていたミーティアは弾かれたように顔を上げて驚愕の表情を浮かべ、そして隣のレベッカを見た。一方のレベッカはニコニコ顔だ。先程の発言も予想されていたようだし、レベッカにはもうだいぶ私という人間を把握されているような気がする。
ミーティアは驚いているけれど、私としてはこれから仲良くなれるのなら、この程度のことは割とどうでも良かった。もちろん身近な人を意図的に傷つけるとか、そういうことをする相手であれば関わりを持つ気なんてないし全力で排除する。……でも今回はそうじゃない。
「はい……よ、喜んで……」
顔を赤くして受け入れてくれるミーティアのなんと可愛いことか。可愛すぎてつい顔が緩んでしまう。
「よ~し、じゃあ殿下のどこが好きなのか、いつから好きなのか、根掘り葉掘り聞かせてもらおうかしら!」
「わ~!」
レベッカもノリノリで拍手してくれる。ミーティアはもう耳まで真っ赤だ。
結局それから彼女たちとは恋バナ以外にも色んな話をして一夜を過ごした。途中からお酒も飲んだりして、憧れていたお泊り会みたいなものを実現出来て私としては大満足だ。
翌朝の二人の表情は晴れ晴れとしていて、たくさん話をしただけあって、ぐっと心の距離が縮まったように思う。
私にもこんなに可愛い友達が出来たのだ、これからは騎士団でもこれまでよりもずっと楽しく過ごしていけるだろう。




