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最終話 撫子の秘密
撫子は雪うさぎであった私に優しく微笑みかけ、そしてそんな彼女が私の傍にいるのが幸せでならなかった。
彼女は知らない、自分の秘密を──
『雪姫』と呼ばれる雪の神の加護を持つ少女は、雪に願いを込めるとその雪に命を宿すことができる。
私は彼女の『母に会いたい』という気持ちから生まれた雪の式神。
だが、私は彼女の願いを叶えてあげられない。
彼女の母はすでに亡くなっており、そんな願いを叶えられない式神はやがて命尽きる。
それは数十年後かもしれない、数年後かもしれない。
いや、明日かもしれない。
雪姫のいなくなった彼女の実家は没落した。
撫子を危険に晒す人間はもう近くにはいない。
あとは、この命が尽きる時まで撫子を愛したい。
そしてできることなら、少しでも傍にいたい。
そんなささやかな願いを彼女の笑顔を見るたびに思ってしまう──
ちょっぴり切なげでそして不思議な物語でした。
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読んでいただきましてありがとうございました。