第2話 淡雪の願い
私を拾ってくださった日から毎日「撫子は優しいね」と言いながら髪を梳いてくれます。
自分でしますと言ってもいつも湯あみ後の髪を梳いてくださるのです。
ある日、月を見ながら旦那様である蒼也様は私にこう言いました。
「撫子、月にうさぎはいると思うかい?」
「え?」
「古来より月にはうさぎがいると信じられているが、誰もみたことはない。だから誰も知らないんだ」
「そうですね、うさぎさんがお月様にいるのか私も知りたくなりました」
「ふふ、いつか私が調べてきてあげよう」
そう言いながらお酒を一口飲んで私の膝に頭を乗せてくるのです。
「撫子の膝は温かいね」
「ふふ、あの日蒼也様が助けてくださったおかげです」
「そういえば、どうして私を助けてくださったのですか?」
「撫子が好きだからだよ」
「でも、私はあなたのことを知らない」
「……一年前の雪の日にあなたは私に命を与えてくれた」
「あ……」
蒼也様の赤い目を見て、私は一年前のあの日の記憶を思い出したのです。
──雪の降っていた一年前。
私は寒くて凍えそうな手をさすりながらも、納屋の窓に積もった雪を触っていました。
形を作り、納屋の窓から届くところに生えていた赤い実と葉を取って、その雪にくっつけました。
「できた」
出来上がった雪うさぎは数日でなくなったけれど、その雪うさぎと目の前にいる蒼也様が重なります。
「あの時の雪うさぎさんですか?」
「はい、やっと会えた。あなたの手からあなたの優しさがずっと伝わっていた」
「どうして人間に……」
「雪の神に命を授けられたのです。だからあなたと二人でこうして過ごせるようになった」
「それは雪の神様に感謝しなければなりませんね」
私はその晩雪の神様に感謝の気持ちを伝えました──
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