続きは店の外で
持ち帰り用の箱を持ったルドが用事を終えてこちらに来る。
三人はとても驚いていた。
何故ここにいるのか不思議なのだろう。
あたしとデートなのよ、えっへん。
王族の護衛騎士をしていたルドは知名度が高い。
見目の良さもあるが、公の場に出ることも多かったので騎士達からの信頼も厚く王宮を離れた今でも根強い人気を誇る。
今でも要人の護衛に呼ばれるくらいの腕前だし。
スフォリア邸ではからかわれる対象だが、ライカもまぁまぁの人気だ。
「あまり仲良くない知り合いです」
「なっ?!」
三人が何か言う前にきっぱりと言った。
ルドと話されるの嫌だもん。
「ならば話すことはありませんね…すぐ出ましょう。チェルシー、こちらお願いしてもいいですか?」
お土産の箱を一つ渡される。
「これは?」
「あなたへのお土産です。実家から戻ったら一緒に食べましょう」
「お待ち下さい、ルド様」
リーダー格の女が話しかける。
えとベムだっけ?ベラだっけ?
「会計は済ませてきたのですぐ出れますよ。食べたばかりですしあまり歩きたくないでしょうから、もう馬車に乗りましょうね。こちらは俺が持ちますので」
全くもって応じることなく帰り支度をする。
進んで重い荷物を持ってくれたりと気遣いは嬉しいな。
三人もの人を視界にすら入れないなんて器用。
あらあら無視されてるから顔を赤くしてるわ。
重い荷物を持った手で器用にお土産の入った紙袋も持つ。
開いた手はチェルシーを立たせる為に差し伸べられた。
「行きましょう」
「ルド様!」
無視されたのに、まだ呼ぶなんて凄い根性。
羞恥心ないのかしら、不愉快だわ。
「あたし達帰るんで、ゆっくりどうぞ」
「どこのどちら様かは知りませんが、気安く話しかけないで下さい」
あたしとルドは拒絶の言葉を投げかけた。
この店をいい思い出のままにしたいから放っておいて欲しいんですけど。
「ひどいことを仰らないでください。私達はとある令嬢の侍女ですの。そちらのチェルシーと仲が良いようなので、ルド様が心配になったのですわ。その子の本性知ってますか?」
話しかけるなって言ってるのに食い下がるなんて大した根性よね。
ルドもため息をついて、諦めた。
「言いたいことがあるなら、外でしましょう。お店に迷惑ですから」
外へ出るよう促し、先に出たのを見てからルドはチェルシーの手を優しく繋いで立たせて上げる。
「あなたとの時間を多く持ちたかったのに、すみません」
「ルドは悪くないですよ、あいつらが悪いんですから」
絡んで来たほうが悪い!
「ありがとうございます、念の為荷物仕舞っておきますね」
ルドは収納魔法でポーチに荷物を入れた。
中では時間が止まるらしく、食品を入れておいても悪くならないらしい。
「お騒がせしてすみません」
カウンターにて店主にと幾ばくかのお金を置いていく。
「いえいえ、受け取れませんよ」
誰がどう見ても悪いのは絡んだあっちなのにルドは生真面目だ。
それ…あたしの給料の二倍くらいあるわ。
「それはお店にとって悪いです。足りなければ、スフォリア家侍従のルド=カリオスまで請求書を送ってください。後日改めて謝罪に訪れますから」
丁寧に礼をして、ルドはあたしの手を引いて出ていった。
ドアを通り切るまでに店長さんを見ると、顔を青くしてたわ。
赤髪のルドなんて、この辺りでも有名な騎士だもの。
時折街の警らもしてるから、見たことはあるはず。
今はオフだから雰囲気が変わっててすぐには気づかなかったみたいだ。
絡まれるのってイヤですね。
しょっちゅう知らない人に声を掛けられるので、いつか髪の毛を赤とか黄色にしてみたいです。




