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番外編:再び目隠し

なかなかトイレから出られず、困ってしまった。


別にお腹が痛いわけではない。






「おい、さっきの悲鳴はなんだ!」


「何だ、お前。ギルはどうした?!人質の女はどこだ?!」


「答える義理はありません」


「おい、これ…てめぇ、殺りやがったな!」



ドアの外から、怒号と悲鳴と何かが壁にぶつかる音がする。



あたしは恐怖と驚きで耳を塞ぎ、目を閉じて時間が経つのを待っていた。


ルドが負けるわけはないし、大丈夫だと思うけど…。


何かが燃える匂いや血の匂いに吐き気を催す。





懸命に耐えているといつの間にか静かになった。





ただ、ドアの外に出ていいかわからない。



ノックの音がして、びくりと体が反応する。

「ひぃっ?!」

思わず声も出てしまった。


「チェルシー、大丈夫ですか?驚かせてしまい、すみません」

ルドの声だ。


安心でため息が出ちゃう。


「あたしは大丈夫よ。ルドは?」


「俺は大丈夫です。ただ、ちょっとチェルシーに見せられないくらい、部屋を汚してしまいましたね」


どういったものかはわからないが、掃除しようとは思わない類の汚れだろう。


うん、見たくない。




「開けてもいいですか?」

「大丈夫だけど…」


正直惨状は見たいとは思わない。

こんな修羅場になんて慣れてないのだから、どうしようと思ってしまった。


ゆっくりと少しだけドアが開かれる。


「これで目隠しをしてもらっていいですか?」

ルドから渡されたのは彼のハンカチだ。


「チェルシーには見せられないです。なので、これをしたら教えてくださいね」

ルドの優しさに感謝する。


あたしもスプラッタを見なくて済んで本当に助かった。


ルドの匂いがするハンカチに心が安らいだ。

同じ洗剤を使っているのに、どうしてこうもルドは良い匂いなのだろうか。


外れないようしっかり巻いて、目も瞑ってドアを開けた。


血の匂いと焦げた匂いに鼻を押さえてしまう。


「すみません。不快ですよね」


何も答えられない。


あたしは何も見えない、何も知らない。


部屋の状況は何も知りませんので。




きっと床は血の海何だろうなぁ、やだなぁとか思いながら、歩こうとルドの声がした方に手を伸ばした。


手を引いて歩いてくれると思ったからだ。


ルドがその手を握ってくれる。


大きくてゴツゴツした手だが、あたしはこの手が大好きだ。




「外に出るまでですから」

繋いだ手をぐいっと引かれ、顔と顔が近づく気配を感じる。


「なになになにっ?!」

急な接近に体中の血が沸騰するかと思った。


と、次の瞬間には浮遊感に襲われる。


「きゃあっ!」


まだ可愛い声だろう。



お姫様抱っこされたのが感覚でわかった。


「うっかり踏むと汚いですから。しっかり掴まっていてくださいね」


そう言うとルドは歩き出す。


いや、夫婦といえど恥ずかしいんですけど。


足元に何があるかなんて、聞きたくないけど、ここまでしてくれるとは。


「ごめんね、ルド。重たいでしょ?」


「…少しだけ。でも大丈夫です、外までは運べます」


軽いとかは言わないのが、さすがルド。


…正直者過ぎて、張り倒したくなってきたわ。








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