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番外編:我慢の限界

由々しき事態だ。



チェルシーは考えた。

静かな室内、鳴り響くは自分のお腹の音。


空腹は正直我慢できる。






しかし、こちらの生理現象は無理だ。


我慢してもすぐに限界が来る。




トイレに行きたい。





どれくらいで行かせてもらえるかわからないし、早めに訴えておいた方がいい。


「んー!んー!」

懸命に声を出して訴える。


室内にいなくても、外にはいるだろうと思ったのだ。


一応大事な人質のはずだ。


まだ生かされているのならば、見張りくらいいるだろう。


鍵を外す音とドアを開ける音。


「うるせぇなぁ」

さっきとは違う男の声だ。

内心でホッとする。




いきなり刃物らしきものを押し付けるような男なんて、もう会いたくない。


「むーむー!」

何とか訴えて、猿轡を取ってもらう。


「トイレいきたいの!」

間髪入れずあたしは訴えた。


余計な会話はいらない。


一回トイレについて考えたら、その事しかもう頭にないのだから。


「トイレって、もう少し我慢したらどうだ?」

「無理!」


面倒くさそうに男が足の縄を外す。


目隠しと手の縄は外してもらえないようだ。





「ついてこい」


手の縄を引かれ、歩き出す。


転ばないかと心配になるほど早足で歩かせられる。


「ちょっと、もう少しゆっくり歩いてよ!」

「文句ばっかり言うんじゃねえ!」


躓きかけたところ、体を支えられる感触がした。


「?」


妙な感じだ。


だって縄を引く男しかいないはずなのに、支えた手は横から感じた。


しかし、気配は感じられない。


「ついたぞ」

そう言って目隠しを外される。



あまり綺麗ではないところだ。


なんか小さい黒い蜘蛛とかいるし、普通なら絶対に使わない。


背に腹は代えられないが…。




「ドアは閉めさせてよ、あとこの手の縄を解いて」

「ダメだ。人質に逃げられては困るからな」


にやにやと笑う男に寒気が走る。


「出来るわけないじゃない。とっとと外しなさいよ」


「人質の癖に偉そうな女だな」


渋々といった様子で男が手を伸ばしてきた。


縄を解いてくれるのかと期待したが、違う。


伸ばした手はあたしのスカートにかかる。


「手伝ってやるから、さっさと終わらせろ」

「やだやだ!変態!触るな!」


あたしは手が使えないながら、頑張ってスカートを押える。

でも縛られてるし、男の力に敵うわけないので太腿まで上げられてしまった。


「やだ、やめて!」

涙が滲む。

怖い、悔しい、嫌だ!





途端男の姿が吹き飛ぶ。


「目を閉じて」

優しい声、あたしは目を閉じた。


「な、なんだ?!」


男の言葉は途中から断末魔へと変わった。



あたしは言われたとおりに目を閉じて待っていた。


重いものが落ちるような音。

鼻につくは血の匂い。


衣擦れの音がいくつか聞こえる。




「もういいですよ、目を開けて…」

恐る恐る目を開けると、目の前にいたのはルドだ。


「遅くなってすみません、怖い思いをさせてしまって」


「怖かった~!」

出た涙は引っ込まない。


すぐさま手の縄を解いてもらったあたしは、そのままルドにしがみついた。


背の高いルドは優しくあたしを包み込んで、よしよしと頭を撫でてくれる。


「本当にすみません…もう大丈夫ですから」

「…全然大丈夫じゃない」


やっと涙が落ち着いて絞り出した声にルドが動揺する。


「えっ、まさか何かされましたか?!」

驚きの声と、殺気が漏れる。


「トイレ、もう限界…」

あたしの意図を察したのか、後ろを振り向いた。




「見張っていますから、きちんとドアを閉めて」

促され、トイレに入る。


騒がしくしたからか、先程までトイレ内にいた黒い蜘蛛が一匹もいなくなっていたので、安心した。


トイレに入る前に見えた、盛り上がった布の山と血だまりは見なかったこととする。









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