帰ってきたら家のドアがなかった件について【6】
「イリーザ解散か…」
『ただイリーザはもう継続不可能、その事を頭に置いてください』
病室を出てやっと念願の外に出れたというのに、俺はスッキリしたような感覚は一切なかった。
それどころか俺の頭の中には、カノンさんから言われた言葉がずっと響いてる、風を引いた時みたいだ、気分が悪い。
もしかして単純に風邪なのか、さっきまで雨降ってたし、可能性はあるな、多分気分が悪いのは風邪だ、別にカノンさんの言葉が刺さったとかそんなんじゃないし。
「へっしゅん、寒い…なんで雨止んだんのにこんなに寒いんだよ」
【カー カー カー】
「イリーザってギルドチーム知ってるか」
どこからがそんな噂話が聞こえ、俺は咄嗟に顔を隠して、裏道に隠れた。
なんで俺は隠れてるんだ、別に悪いことしてないんだし堂々としてればいいのに、とは言え…噂話は気になる。
このまま壁にへばりついて聞いておこう。
「アレだろ、国1番のギルドチーム、リーダーは…エックスだったか?無敗で無敵の男だ」
「そうそう行方不明らしいぜ」
「だけどよ確かイリーザって、問題児が集まってるんじゃなかったか」
問題児って…そう思われてるのかよ。
…俺は違うよな、ボルフェスとスペアのことだよな。
「その問題児を自立できるまでの力をつけさせるのが、エックスの目的だろ、そのエックスが消えたって事は…」
「そう!!その話がしたかったんだよ、もうイリーザってよ継続不可能じゃねえかて話だ」
またか、またその話かよ。
継続不可能、そんな話リーダーが消えたことからずっと聞いてた、だけど目を逸らしてきた、俺の居場所が無くなるのが怖かった。
だから俺は残そうと頑張った、だが…それも無駄な努力だったのかもな。
「ノルマンは既に【マグバッサー】に移動済みだとよ、リブットのクソアマは親の元に帰ったとか」
「あいつが貴族街に居てくれるなら、俺達は楽しくやれるな」
「ああ、あいつ高飛車で偉そうなんだよ、そのくせ強いから、逆らえない、それが貴族街で大人しくしてくれるなら、嬉しいな」
「そうそう、で…なんだったか、ライオットとか言う奴はどうしたんだ?」
「【レベリオン】に行く予定だとよ」
「ハハハ!!そいつはいいで、マックスの奴は…」
酒場の酔っ払い達はイリーザに所属している、メンバーが他のギルドに行く事で話しながら酒のつまみを食べる。
聞く限り、主力メンバーの殆どが離れてる、もう俺が頑張っても無駄だろう…いやなにを言ってるんだ俺は、まだやれるイリーザは終わってない。
「ハハハ!!終わったろもう」
「好きだったんだがなぁ、内部争いが起こってる時点で終わりだ」
「「ははははははは!!」」
…もう、聞かなくていいか、まず聞いたくない、帰ろ。
〈〈自宅付近〉〉
朝に出たはずなのに、もう日が沈もうとしていた、無駄に人気が少ない道を選んで帰ったからだな。
「…なんで俺はこんな事してんだ、まるで犯罪者じゃないか」
1週間も拘束された挙句これだからな、本当に犯罪者みたいだ。
もうとっとと家に帰………
「は?待て、待って待って待って、ドアがないんだけど……」
帰ってきたら家のドアがなかった件について。
いや、なんで?
なんで家のドアが無くなってんの、いやよく見たら窓も割れてるんだけど、俺が居ない1週間の間に何があった。
こんなスラム街にある家みたくなってるじゃねか、なにがあった。
「…いや、待て、ナツノメ、ナツノメに何かあったのか」
俺は嫌な予感がし、靴を脱ぐのを忘れて家の中に入った。
家の中は酷く荒れており、最初はまるで自分の家とは思えなかった、だが構造は同じでオブジェも同じで、間違いなく自分の家だ。
夢でも幻でもない、それならどれほど嬉しいことだろうか。
「ナツノメ ナツノメ!!」
俺はそんな家でナツノメの名前を叫ぶ、だが誰も声を返してくれない。
ナツノメに何かあったのか、俺の家でなにが起きた。
「おい、どこだ居るなら返事しろ」
「………あ…」
「ナツノメ!!」
食卓から声が聞こえ、俺は食卓のドアノブに触れる。
「ここに…」
なんだ、この感覚は、なんで俺の手は震えている、なんで息遣いが自然と早くなる、まるでナツノメに何かあったみたいじゃないか。
いや、ナツノメは無事だ、そうに決まってる。
「スゥハァ、スゥハァ、ハァハァハァハァ」
俺は緊張や恐怖をほぐすために一呼吸して、ドアを開けた、だが開けた俺は一瞬で蒼ざめ自然と体が震えた。
汚れすらない白かった壁は、喫煙者の肺のようにドス黒く、天井は星空が見えるほどの大きな穴が空いていた。
そして、そんな部屋の隅に小さく縮こまる人影があった、そうナツノメだ。
「よかった無事……」
無事を確認した俺だったか、そのナツノメは血だらけで、右腕がなく、まるで死体のようだった。
「おい!しっかりしろ」
俺はそんなナツノメを抱え込み、持ち上げる、気のせいかとても軽く、目には正気がなかった。
だが脈は感じられる、まだ生きている、しかし、俺の家で何があった、何が起こった。
「あ…る……じ…さま…」
「おいしっかりしろ、流石に今のお前は殴れないぞ」
「な…に……それ」
戦場での死因の1つに救助されて死んだ、と言うのがある、原因としては死にかけた状態で助かると緊張が逸れ、死んでしまうと言う。
だから緊張を途切れさせないように、まずは蹴ったり殴ったりして、緊張状態を続けさせるらしい。
だがこんな傷だらけのナツノメを殴る気分にはなれない。
「しっかりしろ、今病院に連れて行くからな」
「…………手…」
ナツノメは小さな声でそう呟く、俺はその手を強く握りながら、周りの目を気にしず、病院までの最適ルートを全力で走る。
なにがあったのか、誰がこんな事をしたのか、そんなのに今は興味が湧かなかった、とにかくナツノメを救わないと。
第6話となります
皆様知っているでしょうか、昨日11月23日の祝日、実は今年で最後だそうです、まさかの12月祝日1日もなし!!
残念ですね、僕は学生で冬休みがあるけれども、来年から社会人で無いと考えると……地獄、拷問ラストマインド、まず来年小説を書けるかどうかですね。
もう学生の間に200話ぐらい書き溜めしときましょうか、そんなに書けるかの問題ですけど。
後【カー カー カー】って小説に出てましたがカラスですよ。