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嫌な退院【5】


【ザー ザー ザー ザー】



「……雨とかけまして、そばとときます


             ダダン!!


その心は梅雨(つゆ)によく会うでしょう


…………暇だ」


 病院に来てからかれこれ6日が経過しました。


 その間特に誰も来ることがなく、体も動かせないため、ベッドの上で本を読むしかやることがない。


 謎かけをしてみても、暇というか、なんというか、新しい魔法も作ったし、もうやることがない


 気が狂いそうだ、もう日課の楽しみが食事しかない、もはや囚人のそれだ、囚人になった事ないけど。


「…そう言えばナツノメ大丈夫かな、本人曰く6歳らしいしな、自炊とはまだできないだろ」


 本当に暇でやることがない、看護師さんからトランプ貰ったけど、1人でできることなんてポーカーしかできない。


 しかも毎回相手が勝つからつまらない、なんで俺がツーペアで相手がロイヤルなんだよ。


「………なんで俺は1人でポーカーしてるんだ、ポーカーって2人以上で遊ぶゲームだったよな

やっぱりやるならダウトだな」


「そんなに暇なら私とやりましょうか」


 ドアが唐突に開き、重そうなバッグを持ったカノンさんが入ってきた。


 聞いてたなら、もう少し早く入ってきて欲しかった、独り言をこっそり聞かれるほど恥ずかしい物はない。


 と言うか恥ずかしい。


「カノンさんが来てくれるなんて、珍しい事もあるもんだ、もしかしてこの拘束が終わる事を知らせに来たのか?」


「そうですよ」


「…………え?当たったの」


「はい、今日限りで退院で帰れますよ」


 まじか、この地獄から解放されんの!!


「よっしゃあああッッ」


「そ、そこまで喜ぶ」


「1人ポーカーするほどだ、暇に決まってる、本だって一言一句間違えずに音読できるぐらいまで読んだ」


「そうですか、じゃあ…この『狙われすぎた街』の41ページは」


「『ば、ばかな、我々以外にも侵略者がいたとでも言うのか』でここから侵略者と侵略者の話し合いが始まって戦争になる」


「…え?本当」


 そう言いながら、本棚の3段目の横から5つ目にある『狙われすぎた街』を手に取り、41ページをめくった。


「ほ、本当だ、あってる」


「ほらな、で、なんでいきなり退院…と言うか隔離が解除された」


「理由が気になりますか」


 そりゃそうだ、良くても2週間はここに居ると聞かされたのに、1週間だ気になるに決まってる。


「看護師が言うには状況が落ち着くまでの隔離のはず、まずこんな数日で状況が落ち着くのか」


「…はい、その予定です」


「予定?」


「未明の刻、ボルフェス暗殺計画が実行されます」


「………え?」


 なんて…言ったんだ、今


 ボルフェスの暗殺計画だと、確かにそう聞こえた、いや…そんな馬鹿な、確かに殺人未遂は引き起こした、と言うか殺されかけた。


 だけど暗殺まで行くほどか、殺人未遂なんて牢獄に収監される程度だろ、それなのに暗殺なんて。


「やりすぎじゃないか、まずなんで死刑じゃない」


「やっぱり、知らないんですね」


「何が」


「ボルフェス・マーガは悪魔の契約者です」


 あいつが悪魔の契約者。


 そんな話聞いたこともないし、そんな素振りすらなかった、まさかリーダーはこの事を知ってたのか。


「今回彼が動いた理由は監視者のエックスさんの行方不明になったからだと思われます」


 エックスはリーダーのもう1つの名前、いわゆるコードネームって奴だ、まずリーダーの本名は誰も知らないから、みんなエックスと呼んでる。


 そんなリーダーが監視役。


「……なぁボルフェスが殺したって事はないよな」


「エックスさんが倒されるとは考えづらいですが、代償を使用すればどんな願いでも叶えられる

そのため彼が殺した可能性は十分にあり得ます」


 ボルフェスがリーダーを…


 いや…そ、そんなわけ無いだろ、ボルフェスはリーダーを慕っていたし、リーダーもそう簡単に殺される奴でもない。


「あ、あいつがギルドに入ってから騒ぎは起こしてない」


「…それは監視役が居たからでは」


「だとしても、あいつは強さを求めてるだけで……」


「殺されかけましたよね」


「それは…」


「忘れないでくださいね、普通なら死んでたんですよ、こうやって話せているのも奇跡なんです」


「……………」


「監視役が消えた時点で、こうなると決まっていました、数年の付き合いで庇いたくなる気持ちもわかりますが

これは決定事項です、そして私がその暗殺者として引き金を引くことを」


「え?何言ってんの」


「実は私ですね、本当の仕事は受付嬢ではなく、暗殺者なんです、そう言う噂知りません」


「まさか、ギルドキラー」


 噂には聞いたことがある、国が不必要だと判断した人間を秘密裏に殺す人間が居ると、まさかカノンさんがそのギルドキラーなんて。


 ……ギルドキラーって名前のセンス全然ないな、もうちょっと有ったろ。


「ボルフェス暗殺の実行犯は私の予定、だけど私にはできない」


「な、なんで、もしかしてボルフェスの事が」


「情が移ったわけじゃないの…」


 そう言いながら胸元のリボンを外し、後ろを向いて突然服を脱ぎ始めた。


「何をしてるんです!!」


 俺は腕を目の前に出して視界を遮りながら、目を瞑る。


「ちゃんと見て欲しい」


「……そう言うなら」


 俺は腕を元の位置に戻し、少しずつ目を開ける。


「な!?」


 カノンさんの細身でスレンダーな体が見えると同時に、背中にある酷い傷が嫌にでも目に入った。


「なんだその傷」


「1ヶ月前に暗殺を行なった際に負った傷です、暗殺と言っても途中で気づかれたので、暗殺でもないんですけど」


「大丈夫なのか」


「大丈夫じゃないですよ、この傷のせいで私は十分の力を出しきれない、そんな状態で悪魔と戦うのは少し辛い所があります」


「だったら断れば…」


「断れると思います、国の政治家達の前で」


「それは…」


 俺が下向くとカノンさんは正面を向き、服を着直した。


 別に脱ぐ必要なかったんじゃないか、背中に傷があると言えよかったのに、もしかして露出癖があったりするのかな。


「まあ、そんなわけでして、今回の暗殺は難しいの、ですからあなたに手伝って貰いたいなと」


「俺に?」


 カノンさんは重そうなバッグを持ち上げ、それをベッドの上に置くと、バッグの中を見せてきた。


 そのバッグには夜に溶け込めそうなほど黒い服とL型の武器とナイフが入っていた。


「前々から思っていました、あなたは魔物退治よりも人間の方が合っていると

別に今回こうなったから誘ったわけではなく、いつかはスカウトしようとは思っていました」


「スカウトって…な、なんだよ、俺は人殺しの方が割にあってるて言いたいのか」


「…嫌ならいいです、ですけど忘れてください、だけどボルフェス・マーガは悪魔であり、エックスさんを殺した可能性がある」


「可能性の話だろ、リーダーは生きてる、それにスカウトって事は、この話を受けた後はカノンさんと同じ組織に入るんだろ」


「はい、そうなりますね」


「だったらやだな」


「別に法を犯すわけじゃないですよ、国からの命令で殺すんですから、合法ですし公務員と同じようにお金だって」


「そうじゃない、この誘いに乗ったら、俺はイリーザを抜ける事になるんだろ」


「そうですけど」


「抜けれるわけ無いだろ、俺の居場所はイリーザにしかないんだ」


「それは…昔の話ですよね」


「は?」


「今はどうです、創設者のエックスさんは行方不明、内部争いで3名が重症に加えて2名が辞めた

そしてリーダー候補の1人は悪魔だった、そんな状態のイリーザで何ができるんです」


「それは…」


「辛い事を言いますが、イリーザはエックスさんが消えた時点で、終わったような物です

既にギルド管理官ではイリーザ所属のメンバーを別のギルドに移動させる話が進んで…」


「…帰っていいか」


 俺は進む話を断ち切るように、声を発しベッドから出て立ち上がる。


「ちょっとまだ話は」


「隔離は終わって退院なんだろ、だったら帰らせてくれ、こんな話は聞きたくないししたくない

リーダーは生きてるし、イリーザは終わってない、終わるわけがない」


 負け惜しみのセリフにしか聞こえない、自分でもそう思った、だが今は負け惜しみだとかどうでもいい。


 何も考えたくない。


「帰る、待ってる者があるんでな」


「まぁ、無理にとは言いませんよ、ただイリーザはもう継続不可能、その事を頭に置いてください」


「…………帰る」


 俺は下を向き捻り出したような声でそう言い、ドアを開け病室を出た。


 情けねぇ…だがリーダーが帰って来るまで、イリーザを潰すわけにはいかないんだ。

第5話です、1日目で5話投稿しましたが、流石に毎日はできなそうです、書き溜めが17話ぐらいしかないので、明日からは2話ずつの投稿になりそうです。


他の人を見ると、1日目で10話投稿していたりしますが、僕は5話投稿が限界です、後鼻水がひどい、ひどすぎて鼻に詰めたティッシュが一瞬でふやける。


皆さんも体調管理だけは気をつけてください、地獄をみますよ。

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