根掘り葉掘り汚い字【4】
「体痛む所はありますか」
「全身が酷い筋肉痛みたいに痛い、後は…目の奥が痛いです」
「なるほど」
数時間ぐらい待ってやっと病室に来た看護師は、俺の体の状態を根掘り葉掘り聞いては、手に持つカルテに記入する。
なんだろう、別になんて事はないんだが…ああ言うカルテって何が書いてあるのか気になるよな。
さっきから気になってしょうがない、けどみたらみで専門用語ばっかりでわからなそう。
「そう言えば、今どんな感じになってるんだ、気づいたら病院に居て、自分でも状況がわかってないんだけど」
「私はただの看護師ですから、詳しいことは何も、ただ…すごい話し合いが行われてる見たいですよ
その話し合いが終わり次第、カノンさんがまた来るとか」
「カノンさんが?」
「はい、そう聞かされてます」
カノンさんが来るのか、あの人…管理局の受付の仕事があるのに、俺なんかに構ってて良いのか?
普段から仕事してる所見るけど、結構忙しそうに見えるけど…
「それとハイこれを」
「何これ?」
看護師は1枚の紙とペンを机の上に置いた、目が悪くなったのかな、紙に書いてる文字がここからの距離じゃわからない。
もっと近づけよう…
「……見えない」
「個人情報の記入をお願いします、ルールですので」
「なるほどね、住所は社宅?それとも自宅?」
「念のために2つとも書いておいてください」
「わかりました」
俺は紙のシワを伸ばしながら、ペンを握り紙に個人情報を記入する、最初は綺麗に書けていたが、途中から腕が疲れて来て、最終的に適当な字になってしまった。
まぁ消せる物ないし、疲れたし、読める字だからいいか。
「はい、書きました」
俺は中途半端に個人情報が書かれた紙を看護師に渡した。
「では確認を……(うわぁ、最後らへん字汚くて読めない、これ念のために確認してこう)」
「なんか変なところありました」
「いえ特にないですよ、えっと…所属ギルドはイリーザですね」
「まぁ…はい、この街1番のギルドとか言われてるイリーザです」
「ええ知ってますよ」
と、言ってもリーダーは不在、次のリーダーの座の争いでまともに依頼はこなせてないし、俺は殺されかけるしな。
街1番のギルドが見る影もない、ワロス
「……さんって言うんですね」
「え?まぁそうですね」
「能力が、忘却?ですかね」
「生物の記憶を消せるんですよ、まぁ触れた相手限定ですけどね、一応消す過程で記憶を見たり、心を読んだりできますよ」
「珍しい能力ですね、私なんて視力が上がるだけで、なんの取り柄もないですから」
「俺も実戦向けじゃないですからね」
「あぁ、だから魔術を鍛えたんですね、電気系以外は使えると書いてありますし」
「そうそう大体使えるよ」
なんだろう、さっきからなんでこんな根掘り葉掘り聞かれてるんだ、全部さっきの紙に書いたことだよな。
…もしかして字が汚いから、こうやって聞いてるのか。
いや、それは俺の考えすぎか。
「ご両親の名前が書かれてないみたいですけど…」
「深く覚えてないと言うか、多分捨てられましたね」
「なるほど、すみません辛い話をさせてしまって」
「覚えてないから良いですよ」
「で、今一緒に住んでる方の所に、ナツノメと書いてかりますが、どんな人なんです」
「人?人か…」
ナツノメについては俺も詳しく知らないが、多分アレは人じゃないだろ。
「その…なんと言いますか、ナツノメは珍しい種族で、龍と人の姿を自在に操れるんです」
「龍ですか、どう言う関係で」
「俺も詳しく知らないんですよ、なんか久しぶりに社宅じゃなくて家に帰ってきたら、野良猫みたいに自宅に住み着いてて
どこも行く所がないから、ここに居させてくれなのだ、って仕方なく」
「居候ですか羨ましい」
「そう言う事は言うなよ」
そう言えば、あいつこうしている間にも、まだ家で待ってるのかな、一応食べ物はそれなりにあったけど…大丈夫かな。
勝手に住み着いたとはいえ、子供だしな地味に心配だな…
「あの、いつまでに退院できますかね」
「怪我に関してはある程度治っているので退院はできますよ」
「え、マジで」
崖から落ちたのに、もうある程度治ってるのかよ、すごいな俺とこの病院の医療技術…治療費いくらしたんだろう。
それなりに持ってるからいいんだけど、できれば安めがいいな。
「はい、深い後遺症もないですし、ただ…あなたの場合は状況が違うと言うか」
「状況?」
「私も詳しく知らないですよ、ただ…生きているとボルフェス?って人が知ったら、何をしてくるかわからない為
状況が落ち着くまで、数日間の隔離をしているとか」
「まじっすか、隔離ってどれぐらい」
「短くても2週間ですかね」
「その間…お見舞いとかは」
「ないぽいですよ」
つまり、俺はこれから1週間以上、1人でこの病室に居るの、マジで言ってんの…
「地獄かよ…あの看護師さんは来てくれますよね」
「私も仕事がありますので」
「マジで、じゃあ俺ずっと1人2週間も」
「はい、大丈夫ですよご飯はありますし、ほらトランプあげますので」
そう言いながら胸ポケットにしまってあったトランプを取り出し、机の上に置いた。
「1人でできる遊びってあったか?」
「さあ、あるんじゃないんですかブラックジャックとか」
「うんわかった、タワーを作るか」