身に覚えがない走馬灯【2】
『…必ず……さん達に認められるような人物になって、私の故郷に戻ってくると』
どこか懐かしいような記憶が頭を巡る、これは夢なのだろうか、だが俺は崖から突き落とされたはずだ。
『だからお願いします、荷物や責任とか関係なく、私を仲間に入れてください』
そうか、これが走馬灯か、始めてみる、しかし…走馬灯と言うのは、全く見たことない人が浮かぶんだな。
『主人様?どうしたのだ』
今度はちゃんと見覚えがある顔だ、同居人のナツノメだ、同居人…と言っても、俺が家に帰ってきたら、その家に勝手に住み着いていた龍人。
なぜか知らないが俺の事を主人様と呼ぶ、しかし…崖から落とされて、死にかけてる中での走馬灯がこれか……
『や、やめろ』
『安心しろ、お前の全てを消してやるよ』
しかし、さっきから身に覚えのない走馬灯ばかり、それに一向に死ぬ気配がない、これは…
「…さん……さん」
なんだこの声も走馬灯なのか。
「…さん……さん起きてください!!」
違うこの声は
「ハッ!!」
俺はカノンさんの声に目を覚まし、勢いよく飛び起きた。
「はぁ、はぁ、はぁ…なんだ夢か」
変な夢だ、走馬灯のような、そうじゃないような。
「……って、ここは…」
俺は当たりを見渡すと、ここはどこか懐かしい場所のような気がした……いやそんなドラマチックなもんじゃないな、ここ病院だ
数年前ぐらいに入院したことがある、多分それで懐かしい感じがあるんだろう。
「やっと目を覚ましましたか、大丈夫ですか」
カノンさんそう言いながら、俺に顔を近づけた。
「私の事覚えてます?」
「カノン、カノン・ピグ・ホップホップ、全てのギルドを管理するギルド管理官所属で、ギルド管理局の受付嬢」
「正解です、しかし…逆にここまで知っていると、ひきますね」
「そう…」
どうやら俺は夢を見ていたようだ、とても気味の悪い夢だ、ボルフェスと崖の上で戦って、崖から突き落とされるなんて。
俺がボルフェスに負ける、そんな事あるわけが………
「な、なんだこれ」
俺はふと自分の体を見ると、そこには大きな傷痕があった、まるで崖から落ちたような傷が…
は?マジでなんだ、この傷、俺こんな傷痕なんてあったか、それに傷痕だけじゃない、体を動かそうとすると、あちこちが痺れるように痛い。
「いててて全身筋肉痛」
「まだ動かない方がいいですよ、何せ崖から落ちたんですから」
「崖から落ちた!!」
マジか、崖から落ちたって事はやっぱり、ボルフェスとの死闘は夢じゃないのか。
夢であって欲しかった。
「全く、危なかったんですよ、凄い音が聞こえたと、他のギルドさんがその音を探してたら
血塗れの状態のあなたが、海に浮いてたそうです、緊急治療でなんとかなったものの、下手したら死んでました」
「そ、そうですか」
あの崖から落ちたのに俺は生きてたのかよ、どんだけ頑丈にできてんだ俺の体は、自分でも怖くなって来た。
「いてて」
「まだ治療は終わってませから、大人しくしてください」
「そうするよ」
俺は痛みを刺激しないように、ゆっくりとベッドに横たわる。
「一体なにがあったんですか、その反応を見ると自殺では無さそうですし、そこまでの傷を負うなんて、あそこらへん強い魔物は出ませんよね」
「いや狼がいた、群れに逸れたな」
「狼に負けたて、崖に落とされたんですか」
なんかやだなそれ。
「ボルフェスに襲われた」
「え?…そ、そうですか」
カノンさんは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。
地味にカノンさんが驚く顔は初めて見るような気がする、それほど普段はニコニコしてると言うか、笑顔以外の表情がないと言うか。
「なにがあったんです」
「気に入ってる崖があるんだが、そこにボルフェスが…」
「なるほど、落とされた訳ですか」
「ああ」
本当は戦いの最中に足を滑らせたんだが…それだとダサいし恥ずかしいから、ボルフェスに落とされた事にしておこう。
実際原因使ったのあいつだし。
しかし、ボルフェスがまさか殺しに来るなんてな、そこまでリーダーの座が欲しかったのか、そんな物のために、俺は殺されかけたのか。
「…やはりそうきましたか」
「え?なにが」
「ボルフェスさんがリーダーの座を狙う事です、まさか命まで狙ってくるとは」
「俺もそこまでされるとは思わなかった、だが生きているだけも御の字、奇跡みたいなもんだ」
「ほんと奇跡ですよ」
カノンさんはそう言うと立ち上がった。
「…どこに」
「少し上に報告してきます、あなたはここで待っていてください、30分後ぐらいに医者がきますので」
「あ〜その医者って…血抜きで有名な人じゃないよね、ほら最近の医者って血を抜きたがるじゃん
恋煩いには、患者が心不全を引き起こすまで血を抜け、とか言う輩も…」
「安心してください、ちゃんとした医者ですよ、私も瀉血は信じてないですから」
「それは安心だ………薬物治療でもないよな、マリファナとかスピードとか勧められない?」
「ないですよ、ちゃんとしたお医者様です」
「それは良かった」
瀉血は信用できない、奴ら擦り傷でも瀉血を進めるからな、怖くて眠れない、しかしこの先はどうなるんだろうか
もしかして生きてるのがバレたら、まだ殺されるんじゃ……
「………寝よ」
俺はそんな恐怖を紛らわす様に、布団をかぶって瞳を閉じる。
「では、私は出ますから、ゆっくり眠ってください」
……だが一向に眠れない、眠れる気がしない、子供が好きな事で遊んでる時並みに眠気がない。
「はぁ、なんでこんな事になったんだ」
あの時俺は辞退する、とか言えばこんな事にはならなかったのかな。
いや、それよりムカついてきた、あの野郎俺を突き落としやがって、いつ襲ってくるかと言う恐怖より、イラつきの方が優ったきた。
次会ったら顔の骨が変わるまで殴ってやる。
と言っても今はどうにもならないか、大人しく医者を待とう。
第2話です
一応、1ヶ月以上休んでいたんですか、その間に他の方が書いた小説を読んで修行?研究?みたいな事を行ったんですが
なにもわからなかったです。
自分の書き方が合ってるのかすらわからなり、もう自分が好きな通りに書こうと思い、この小説を書きました。
うん、やっぱり小説は難しい。
後頭痛い、風邪ひいてる時に投稿するんじゃなかった。