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女王蜂
ダリウスは、D班のオフィスの奥の肌寒い部屋にいた。暗く、電子機器が動く音だけが聞こえる。
D班の技術班で特別主任をしている女王蜂の巣。そこは巣というより監獄だった。
煙草の匂いが強くなったかと思うと、部屋の奥から小柄な老女が現れた。ダリウスを見て、微かだが微笑んだ。
女王蜂。肌は白く、体は折れてしまいそうなほど細い。ストールカーディガンを羽織る姿は病人のようだ。
「新しい仕事?」女王蜂が言いながら、煙草をくわえ、火をつけた。
「いや、違う」
「そう……」重く垂れさがった瞼を上げ、冷たい視線をダリウスに向ける。
沈黙が二人を包む。
「例のリスト、再解析を頼みたい。それと新しい標的の選定」
煙草を持った手で、額を掻くと、「いつまで」
「二週間後まで」
女王蜂は頷き、「次の定例会まで」
女王蜂は薄暗い部屋の奥に消えていった。
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