外部協力者
昼時、ダリウスは、街中の路肩に車を止め、少し離れた古本屋を見つめていた。古本屋は小さく、ほとんど人も入っていない。
「対象、来ました」後ろに座るマーブがノートパソコンを見て、言う。
太った大柄な女性が古本屋へ入っていく。
「凄い腕ですよね、ステゴロやったら負けそうだ」
「腕だけじゃない。頭も切れる、あの人は」ダリウスは微笑み、インターカムを耳に着けた。
「遅れたね」しゃがれた声で女性の声が聞こえた。どこか攻撃的な口調だ。
「時間通りですよ」変声機を使い、ダリウスは言った。
この女性は、ダリウスの外部協力者で、有事に色々と情報を集めてもらうことがある。
「それで、何だったか」
「CIAの秘密作戦の兆候です」
ふん、と女性は鼻を鳴らし、「秘密ねぇ……その秘密にいくら掛かってるんだか……」
相手が何か言いたげだったので、ダリウスは黙って待った。
「昨日も一人、自殺未遂をしたのがいてさ、すまないね」
「いえ、構いません。ご愁傷様です」
「ラングレーの動きは、うちの職業訓練センターでは察知できていない。データはいつもの場所に置いておくよ…だが、目的が帰還兵にあるとも言えないんだろう?」
「可能性がわずかでもあれば、潰すまでです」
「なるほど、雇われ特殊部隊の面目躍如ってとこか」
「仕事ですので」
「生体データを収集して、安い金で治療してやる代わりに、生体データを売りさばく仕事かい?」
マーブが声を出さず、言うねぇ、と呟く。
「そうです」ダリウスは口の中に苦いものが広がるのを感じた。
「そういえば、最近始まった生体データと連動したフィルターシステムだっけか、ありゃあ儲かるだろうね。生体データと行動履歴から、その人に合った人生選択をするだとか、最新のエージェントAIだとか言うけどね、金を積んだ企業の広告が表示され、検索結果では上に来る。ホログラムは金がある企業しかまだ作れない。結局、企業側の良いように操って搾れるだけ搾り取るわけだ」
「報酬はいつも通りの口座に振り込んであります。では」
「あんたがどんな顔をしているか知らないが、私はあんただけが嫌いなわけじゃない。あんたを含め、戦争商売屋ども全員が嫌いなんだ」
ダリウスはインカムを取り、マーブを見た。戦友はただ眉を吊り上げ、皮肉っぽく口を曲げただけだった。
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