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プロローグ 〜煉獄〜
ここは、地獄と天国の狭間はざま『煉獄れんごく』―――
亡者の魂が清廉せいれんであれば天国へ、罪を重ねた魂であれば地獄へ送られるがほとんどの人間は善人とも悪人とも言えぬので、大体は煉獄へ送られる。
煉獄では、地獄ほどではないが魂に苦罰を与えることで罪を洗い流し、天国へ導くのだ。
そして、魂が持つ罪を見透し、行き先を天国、地獄、煉獄へ仕分けすることを仕事とする死後の世界において絶対的な役割を持ち、恐れられている者が、かの閻魔えんま大王である。
地獄ほどおどろおどろしくなく、かといって天国ほど澄んでいない雨雲のような煉獄の中で、閻魔は顔を上げて呟いた。
「今日も今日とて暇じゃのう……」
閻魔は煉獄で一人、退屈そうに佇たたずんでいた―――