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覚醒、そして肉体の異変

今回は能力確認回です。



☆☆☆


 どれほど時間が経っただろう。


「う、うぅぅ……」


 リクは広い体育場のような場所で目を覚ました。

 床も壁も天井も真っ白で、天井の高さと部屋の奥行きはプロ野球の試合場並みにありそうな……ちょうど立方体のような形状をした広い空間のちょうど中心に、リクは横たわっていたのだ。


「くそォ……なんだっつうんだよぉ……」


 目まぐるしく変わる状況に、リクの頭の中はパンク寸前だった。


「……ん?」


 そこでリクは、自分の腕に銀色のグローブが装着されていることに気が付いた。


 グローブだけではない。

 着ている服は着馴れたブレザーの学生服から胴体や間接部に装甲が付けられている銀色の繋ぎのような服に代わっており、両足にはグローブと同色のブーツを履いている。


 腰にはTVの特撮ヒーローが着けているような大きなバックルのベルトが巻かれ、ベルトの左脇には日本刀を思わせる反りのある片刃の剣がぶら下がっているときた。


 その上、首にはリクの腰まで届く程長い純白のマフラーが巻かれていたのだ。


 『まるでヒーローみたいな格好だな』とリクは思った。


「……なんで俺、こんな格好を?」


 リクが頭を抱えていると、リクがいる空間に人間の足跡のような音が響き始めた。

 一人~二人の足跡ではない。少なく見積もっても10人以上。それも訓練された兵隊のように秩序だった歩き方だった。


「!?」


 リクが足跡のする方向に顔を向けると、目を丸くした。


「ギギィ!」

「ギギギィ!!」


 そこには、全身タイツのような服を纏い、顔に竜を模した仮面を着けた……なんというか、特撮に出てくる戦闘員その物の姿をした集団がリクを取り囲むように立っていた。


 その数、目測で約30人。

 しかも彼らは1人1人、マシンガンやらバズーカ砲やらといった物騒な武器を装備していた。


「え?あ、な、なんなんだ……?」


 もはやリクの頭は、思考停止寸前まで追い込まれてしまっていた。


「ギィ!」

『ギギィ!』


 そうしている内にも戦闘員達の内、マシンガンで武装したグループがその銃口をリクに向ける。


「!?お、おい!やめ……」

「ギギィ!」


 リクの制止の声を無視して、戦闘員達はマシンガンの引き金を引く。

 鼓膜が破れてしまいそうなけたたましい発砲音ともに何百という銃弾が雨のように発射され、リクの体に命中していく。


「いてて……あれっ?」


 銃声が止んだとき、リクは違和感を感じた。

 確かにマシンガンで撃たれた筈なのに、リクの体は全く傷ついていない。


 着ている服も、穴が開いていないどころか、汚れてすらいない。

 それどころか、感じた痛みもしっぺをされた時のような軽いものだったのだ。


「ギィ!」

『ギギィ!!』


 続いて、バズーカ砲を肩に担いだ三人の戦闘員が前に出て、安全装置を解除してリクに向けてロケット弾を発射してきた。


「う、うわっ!」


 リクは違和感のことも忘れて、ロケット弾を避けようと足に力を込めた。

 するとリクの体は大きく跳び上がり、地面から2~30m程上空に浮かんでロケット弾の直撃を避けられた。


「こ、これは……?」


 リクはそのまま重力に従いながら床に着地したが、何故自分がオリンピック選手以上のジャンプができたのか分からず、頭の上に大量の?マークを浮かべた。


『ギギィ!』


 混乱するリクに構うことなく、今度は材木伐採用の大型チェーンソーを持った戦闘員が前に出てきた。


 エンジンを始動させると、戦闘員の手にしたチェーンソーの刃は轟音を響かせながら回転を初めた。


「ギギギィ!!」


 戦闘員はチェーンソーを自身の頭よりも高く振り上げると、リクの頭に向けて振り下ろした。


「う、うわぁぁ!」


 咄嗟にリクは、ベルトの左脇に吊り下げられている剣を掴んでチェーンソーを防ごうとする。


 次の瞬間、ガキィン!という金属同士がぶつかり合う音がしたかと思うと……


「ぎ、ギギィ!?」


 戦闘員の手にしていたチェーンソーの刀身が半ばから折れて、床にその切っ先が転がっていた。


 一方、リクの剣は刃こぼれ一つ起こしておらず、まるで夜の空に輝く三日月のように煌めいていた。


「……ウソ」


 目の前の光景が信じられず、戦闘員のみならず、リクまでもが目を丸くしていた。


「……ギィ!」


 戦闘員の1人が仲間に向けて合図を送った。

 すると今度は自動車のエンジン音と走行音、排気ガスの匂いが近づいてくるのをリクは感じとった。


「ギギギギィ!!」


 しばらくすると、戦闘員の1人が一台のジープを運転しながら現れた。

 自家用の軽自動車より二周りは大きな屋根の無い真っ黒なジープで、ナンバープレートには数字と地名ではなく、『翼を広げた西洋風の(ドラゴン)』のシンボルマークが刻まれていた。


「ま、まさか……」


 リクの脳内に嫌な予感がよぎる。


「……ギィィィィィ!!」


 その予感は的中した。戦闘員はアクセルを全開に踏み込み、リクに向かって体当たりを敢行したのだ。


「うわぁぁぁぁ!!」


 リクは剣を持っていない左手を前につき出す。この時、リクは目を瞑っていた為に気付かなかったが、リクの左拳は銀色のエネルギーに包まれていた。


 そして次の瞬間……リクは自分に向かって猛スピードで突進してくる大型ジープを、『パンチ一発で』粉砕してしまった。


 リクのパンチを受けたジープのフロントは、まるでコンクリートの壁に激突したかのようにひしゃげ、フロントガラスは粉々に砕け散り、運転していた戦闘員はエアバッグに押し付けられて気を失っていた。


「あ……あはは……」


 常識はずれにも程がある光景の連続に、リクの口からは乾いた笑いが漏れだしていた。


 その時、リクの腰に巻かれたベルトのバックルが『ビービー』というブザーのような音を響かせながら赤く点滅し始めた。


[エネルギー残量:0% 変身強制解除]


 ベルトから電車のアナウンスを連想させる感情のこもっていない音声が流れると、リクの首から下の全身が光に包まれた。


 光が晴れると、リクの服装は先程までのヒーロー的なコスチュームから病院の入院患者が着るような簡素な服に代わり、手にしていた筈の剣も煙のように消えていた。


「……あっ」


 服装が変化したのと前後して、リクは全身の力が一気に抜けるのを感じ、膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。


「はぁ……はぁ……」


 荒い息を漏らしながらリクは床に手をつき、額から滝のように汗を流した。


 一体、自分の体はどうなってしまったのか?リクの頭の中は?マークでいっぱいになっていた。

感想よろしくお願いいたします。

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