大公開!これがサンフェニックスの秘密だ!!
時刻は午前9時40分くらい。
雲一つない青空が広がる日曜日。
日帰りの登山客で賑わう高尾山の登山道入口付近の道路に、
上下が青と赤に分かれた派手なライダースーツを着用し、髪の毛が前後に青と赤に染められた童顔気味な青年の姿があった。
シルバースレイヤーこと氷山リクである。
「……」
リクは相棒兼愛車であるブレイブスターの車体に寄りかかりながら、一冊の本を読んでいた。
表紙カバー上部に『怪傑キリン剣士』というタイトルと『第4巻』の数字がゴシック体で太く書かれ、表紙中央部には麒麟(※動物園にいるアフリカ産の動物の方ではなく、缶ビールに姿が描かれている中国の伝説上の幻獣の方)をモチーフにした鎧を纏った女性剣士が、夕焼け空の下で本物の麒麟(※同文)に跨がりながら勇ましく日本刀を振りかざしている姿が描かれているB6判の漫画単行本だ。
背表紙には『怪傑キリン剣士 4』というタイトルと巻数、『作・枝村賢次』と作者の名前の他、『サタデーブランチコミックス』というレーベル名と『高校社』という出版社名などが記されていた。
ずいぶんと読み古されているのか、表紙カバーはかなりボロボロになっており、紙の外側は茶色く変色していた。
裏表紙にはたどたどしい文字で『ひょうざん りく』と黒のマジックで記入されているのだが、それも所々掠れていて、かろうじて判読可能な状態だった。
「……」
リクが漫画の世界に没入していると……
『リクさ~ん!』
「……ん」
……自分を呼ぶ声に気づいて、パタンッと本を閉じる。
声のする方に顔を向けると、高校生くらいの少年と少女の二人組が鳥を模した空飛ぶバイクに乗りながら、リクに向けて手を振っていた。
「おはようございまーす!」
「まーす!」
つい先日、リク/シルバースレイヤーのサイドキックになった陽光戦士サンフェニックスこと出向井文弥とそのサポーターの蓬つかさだ。
『ピピィ!』
文弥とつかさを乗せた空飛ぶバイク……ライトニングバードも嬉しそうに翼を振っていた。
文弥達を乗せたライトニングバードは、飛行機やドローンよりも猛禽類などの鳥に近い動きでリクとブレイブスターの真横に着陸する。
リクはその様子を眺めながら、つい今しがた読んでいた漫画本をブレイブスターのシート下部にある収納ボックスに仕舞った。
『リクさん、おはようございます!』
ライトニングバードから降りた文弥とつかさは、リクに向かって最敬礼のお辞儀をしながら朝の挨拶をする。
日曜日という事もあって、二人ともブレザーの学生服ではなく私服姿だ。
文弥は赤地に黄色く鳥のエンブレムが描かれたTシャツの上に青いYシャツを前ボタンを留めずに着用し、黒い長ズボンにスニーカーを履いており、右肩から肩掛けカバンを下げていた。
つかさは頭のカチューシャは変わらず、袖がダボっとした白いパーカーを着てローライズのスパッツとスニーカーを履いて健康的な太ももを露出させており、白いポシェットのようなカバンを下げていた。
「よぉ、思ったより早かったじゃないか?」
「そりゃあまぁ、ヒーローとして遅刻するのは良くないですし……」
「……ま、心がけは立派だな」
「えへへ……」
リクから褒められて、文弥は照れ臭そうに頬を赤くしながら頭を掻く。
その横では一部の登山客や外国人観光客が、物珍しそうにライトニングバードをスマホやデジカメで撮影していた。
「……」
それに気づいたリクは、無言のままブレイブスターに跨がって、ヘルメットを被る。
『……』
一方、ブレイブスター車体のモニター画面に映し出されている擬人化ブレイブスターは、何故か両手で口を覆ってだんまりしていた。
「んじゃ、行くか」
『はい!』
リクがブレイブスターを発進させると、文弥達もライトニングバードに乗ってその後を追いかけていった……。
☆☆☆
「……う~し、ここなら良いだろ」
ブレイブスターを走らせ、ライトニングバードがその後を追いかけて30分程……リクと文弥とつかさは登山道から離れた高尾山の奥深い森の中にいた。
鬱蒼と木々が生い茂り、鳥の鳴き声と木々の葉が風で擦れ合う音以外には何も聞こえない静かな場所だ。
『へぇ~……』
『ピピピィ~……』
東京都内とは思えない静けさと自然に、文弥とつかさは思わず感心してしまう。
リクはそんな二人を横目に見ながら、ブレイブスターから降り、同時にヘルメットを脱いだ。
「……ブレイブスター、もう喋って良いぞ」
『……ぷはっ!やっとですかぁ~?』
リクの言葉を受け、ブレイブスター車体のモニター画面に映し出されているブレイブスターの擬人化モデルはわざとらしく感じるような仕草で口を開いた。
『もぉ~……あんまり黙ってたから、息が詰まるかと思いましたよぉ~』
「お前なぁ……バイクが『息する』訳ないだろうが?二酸化炭素と一酸化炭素まみれの排ガスを『垂れ流す』だけだろうが?」
『ものの例えですよマスター!それに、その言い方はバイク差別です!』
「……へいへい、そうですかい。どうもすみませんでしたね」
モニター画面上の擬人化ブレイブスターは子供のように頬を膨らませてプリプリと怒るが、一方のリクは頭をポリポリと掻きながら疲れたようにため息を漏らしたのだった。
「……流石ベテランのヒーローは、マシンの扱いも手慣れてますね」
「いや、『マシンの扱い』の意味が違うだろ」
変な部分に感心する文弥に、リクはまた頭を掻きながらため息を漏らす……と、リクはある事に気がついた。
「……てか、何やってんだよお前?そのスケッチブックは?」
「あぁこれですか?」
ライトニングバードから降りた文弥は、いつの間にやらカバンから小さなスケッチブックを取り出しており、そこにシャーペンで何かしらを書いていたのだ。
「これです」
文弥は少し照れ臭そうにスケッチブックの中身を見せる。
文弥のスケッチブックには、いつの間にかたった今のリクとブレイブスターの会話風景が写生されていたのだった。
「……何勝手に人の事、スケッチしてんだよ?」
「あぁ、すいません。つい……」
一応ツッコミは入れたものの、リクは文弥のスケッチブックに描かれた自分と相棒のイラストを、興味深げにしげしげと眺める。
「ふぅ~ん……」
それは絵心に乏しいリクの目から見ても、綺麗に描かれているイラストだった。
もちろん、プロのイラストレーターの作品と比べれば、稚拙さが滲んでいるような雰囲気は拭えないが……アマチュアレベルで言うならば、かなり高品質なイラストだと感じられる作品だった。
「……お前、結構絵うまいんだな」
「そ、そうですか?あはは」
リクの率直な感想に、文弥は照れ臭そうに頭を掻いた。
「リクさんもそう思います!?」
一方、文弥のサポーターであるつかさは、文弥以上にリクの言葉に食い付いた。
「あぁ。俺は絵の事は良く分かんねぇけど、何て言うか……文弥の気持ちが籠ってるのは分かるぜ」
「でしょでしょ!」
文弥のイラストに対するリクの感想に、つかさはまるで自分の事のように喜んでいた。
「文くん、この間も『パクシブ』にシルバースレイヤー姿のリクさんのイラストを投稿して、週間ランキングで3位取ったんですから!」
「へぇ~、そいつはスゲェーなぁ」
『題材が良いですからね♪』
「いやぁ~それほどでも……」
つかさのみならず、リクとブレイブスターからも感心され、文弥は頬を赤く染めながら照れ笑いを漏らした。
しかし、そこでリクは『あること』に気づいた。
「……ちょっと待て。週間ランキングの『3位』ってことは、2位と1位はどんな絵だったんだ?」
「え~っと……2位は『怪盗ナイトオウル』と『X-サイボーグ』の『X-9th』が対決しているクロスオーバーイラストで、1位はこないだ公開された『劇場版チャンピオン・オブ・モンスターズ:コクリュウVSティアマト』の応援イラストですね」
「…………………俺の人気は怪獣や怪盗やサイボーグ戦士以下かよ…?」
文弥からの告白に、リクは目頭を指で抑えながら苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
『気にする事はありませんよマスター!『X-サイボーグ-見張りを見張る者-』のアクセスPV数は1,240ですが、ヒーローヴァースのアクセスPV数は3,143ですから♪』(2022年3月22日時点)
「……いや、何の話だよ?」
ブレイブスターのメタメタしい発言に、リクは首を傾げるのだった。
「はぁ……まぁ良い。今日の本題は別のことだからな」
リクは頭を振りながら気持ちを切り替えると、改めて文弥に向き直った。
「文弥、今日ここに来たのは他でもない。お前の力……サンフェニックスの能力を見せてもらいたいからだ。お前を鍛えるにしろ、一緒に戦うにしろ……どんな力や武器を持っていて、どういう事が出来るのか分からないと、プランも作戦も立てられないからな」
「はい!分かりました!」
文弥は元気の良い返事をすると、リクやつかさから1m程の距離を取り、変身の準備を始める。
文弥が両手を自身の腰に当てると、黄金色に輝く光の粒子が文弥の腰部に集合して、変身ベルト……『フェニックスドライバー』が文弥の腰部に出現する。
「フェニックス・セットオン!」
文弥はポーズを取りながら変身キーワードを叫ぶと、フェニックスドライバーの脇に備えられているスイッチを押した。
すると、太陽フレアにも似た目映い光と炎がフェニックスドライバーのバックル中央部から放たれ、文弥の体を包み込んだ。
そして光と炎が治まると……そこには不死鳥を思わせる赤・黄色・オレンジで彩られたスーツに仮面、晴れた空のように真っ青な翼を思わせるマントを纏った1人の戦士が立っていた。
それこそ、出向井文弥少年のもう一つの姿……
「……陽光戦士、サンフェニックスぅっ!参上!!」
変身が完了すると同時に、文弥は……いや、サンフェニックスはポーズを決めながら名乗りを挙げる。
「おぉ~♪決まったねぇ、文君♪」
サンフェニックスの名乗りを眺めながら、つかさは嬉しげに拍手をしたが……
「……」
……一方のリクは、全くの真顔だった。
「お前さぁ……『変身ポーズ』はともかくとして、一々『名乗りのポーズ』をする意味ってあんのか?」
「えっ?ダメですか?」
「これ、私達二人で苦心の末に考えたんですけど……」
「いや、ダメっていうか……」
子供のように純粋な目で頭上に?を浮かべて首を傾げるサンフェニックスとつかさの姿に、リクは頭を掻きながらため息をついた。
「……まぁ良い。それで文弥……いや、サンフェニックス。お前の力や技を見せてくれるか?」
「はい!喜んで!」
サンフェニックスは上官に対する新兵のように敬礼をしながら元気よく返事をするが、その姿にリクは苦笑する。
「……返事するならどっちかにしろよ。『はい』と『喜んで』、両方一緒じゃあ、少しくどいぞ?」
「はい!じゃあ、見ててください!!ムンッ!」
元気良く返事をしたサンフェニックスは、まるで腰のフェニックスドライバーに力を込めるかのようにポーズを取る。
すると、フェニックスドライバーのバックル中央部に黄色い光の粒子が集まっていき、剣の柄にも似た棒状の物体がバックル中央部の赤い宝玉部から生えるように出現した。
「ハァァァァッ!トリャアアアッ!!」
サンフェニックスはフェニックスドライバーから出現した棒状の物体を両手で掴むと、まるで畑から大根やゴボウを収穫するように勢い良く引き抜いた。
するとどうだろう。
フェニックスドライバーから引き抜かれた棒状の物体は一旦光の粒子に包まれた後、一本の大剣へと変貌したのだ。
刀身やサンフェニックスの掴む柄も含めて、まるで鳥の羽を連想させる形状をした、サンフェニックスの身長とほぼ同じ長さをした片刃の長剣だ。
「えっと……まずこれが、僕の基本武器『フェザーガンセイバー』です」
「ほぉ~ん?」
サンフェニックスは自身の出現させた羽型の剣……フェザーガンセイバーをおずおずとリクに差し出し、リクも差し出されたフェザーガンセイバーを物珍しそうに見る。
「………」
リクは試しに自分の指をフェザーガンセイバーの刃に当てて、軽くなぞってみた。
「……いたっ!?」
次の瞬間、リクの指先に鈍い痛みが走り、リクは指を引っ込める。
見れば、リクの指の腹には一筋の傷が出来ていた。
それは『刃物による切り傷』というよりは『熱した金属に触れたことによる火傷』に近い傷で、血は流れてはいなかった。
「ふぅ~ん……」
リクは自身の指にできた傷跡を眺めながら、改造人間である自分を傷つけられるフェザーガンセイバーの威力に感心する。
「……それで?そいつでどんな技を出すんだ?」
「あ、はい!え~っと………」
サンフェニックスは周囲をキョロキョロと見渡して、手頃な的の代わりになりそうな物を探す。
「………よ~しっ、とりあえずこれで!」
サンフェニックスは成人男性と同じくらいの大きさがある大岩を見つけると、それを怪人に見立て身構える。
「……ハァァァァッ!!」
サンフェニックスが気合いの籠った掛け声を挙げながらフェザーガンセイバーの刀身を撫でる。
すると、フェザーガンセイバーの刀身に光の粒子が少しずつ集まっていき……フェザーガンセイバーの刀身は、まるでSF映画に出てくる刀身がレーザー光線で出来ている剣のように光始めたのだ。
「フェニックスゥゥゥゥ!クラァァァァッシュッ!!」
技の名前を大きく叫ぶと、サンフェニックスはフェザーガンセイバーを大きく振り回しながら、目の前の大岩に突き刺した。
フェザーガンセイバーの刀身の輝きは注射器の中の薬のように大岩へと流し込まれていき…………
ドオッグアアアアアアアン!!!
……次の瞬間、決めポーズを取るサンフェニックスの背後で、大岩は火花を散らしながら大爆発を起こした。
爆風によってサンフェニックスの青いマントがたなびき、砕け散った岩の破片が粉雪のように周囲に舞った。
『おぉ~!!』
『ピピィ~♪』
「…………」
その様子を眺めながらつかさとブレイブスターは拍手をし、ライトニングバードも嬉しげな鳴き声を挙げたが、リクはまるでサンフェニックスの技を品定めするかのように眺めていた。
「次!」
サンフェニックスはまた別の岩に狙いを定め、フェザーガンセイバーをガチャガチャといじくる。
すると、鳥の羽を思わせる片刃の大剣だったフェザーガンセイバーは、まるでSF映画に出てくるような光線銃へと変形した。
「ハアアアアアッ!!」
サンフェニックスが気合いのこもった叫びを挙げると、ガンモードのフェザーガンセイバーの銃口に光の粒子が集まっていき………
「フェニックスゥゥゥ!!ブラスタァァァァァァ!!!」
………サンフェニックスの叫びと共に、ガンモードのフェザーガンセイバーの銃口から太陽フレアの爆発のようにまばゆく輝く極太のエナジービームが発射され、射線上にある岩を包み込んだ。
ビームの発射が治まると……サンフェニックスと同じくくらいの大きさだった岩は、半ばから真夏の日光に晒されたチョコレートかアイスクリームのように溶けており、表面が赤く焼けながら白い煙を挙げていたのだった。
「………どうですか、リクさん!?僕の必殺技は!?」
「う~ん………」
仮面の下でどや顔でも決めていそうな雰囲気のサンフェニックスに対し、リクは顎に手を当てながら渋い顔をする。
「まぁ、確かに……『大した技』ではあるなぁ」
「でしょでしょ!!」
リクからの評価を聞き、サンフェニックスは嬉しげガッツポーズを行い、つかさも自分が誉められたように嬉しげな笑みを浮かべる。
だが、リクの査定は甘くなかった。
「……大した技ではあるけど、2つとも『武器頼りの技』、だよな?」
「うっ……」
「て、ことは、だ……武器を盗られたり、封じられたりしたら……そのまま『技も破られる』訳だよな?」
「うぅぅ……」
痛い所をツッコマれてしまい、サンフェニックスはぐうの音も出ない。
「……いや!いやいやいやいや!!他にも必殺技はありますよ!!!」
サンフェニックスはすぐに立ち直ると、今度は近くに生えていた太い松の大木に狙いを定める。
「ハアアアアアッ!!」
サンフェニックスが気合いを入れるように叫ぶと、その右足に太陽を思わせる温かく柔らかな光が集まっていく……そして、
「フェニックスゥゥゥゥ!ブレイィィィィィク!!」
サンフェニックスは技の名前を叫びながら空中高く飛び上がり、松の大木の中程辺りにキックをした。
サンフェニックスのキックが松の木に命中すると同時に、サンフェニックスの右足の光が松の木に流し込まれていき………
ドッグアアアアアアアン!!
……次の瞬間、松の大木は閃光と共に大爆発を起こした。
周囲には先ほどフェニックス・クラッシュを受けて爆散した大岩と同じく松の木の細かな破片が粉雪のように舞い、爆風によってサンフェニックスの青いマントがたなびいた。
「そして、最後に…………フンッ!」
サンフェニックスは自身の腰部、正確には腰部に装着されているフェニックスドライバーに力を込めていく。
すると、フェニックスドライバーのバックルに光の粒子が徐々に集まっていく。そして………
「ゴッドストォォォォォン!フラァァァァァッシュ!!」
サンフェニックスが技の名前を叫ぶ。
すると、バックルに集まった光の粒子は………
……プスッ!というエンストした自動車のような音と共に、霧散したのだった。
「………あ」
『…………………』
最後の最後で大ポカをやらかしてしまい………サンフェニックスは呆然と立ち尽くし、すぐ傍でその様子を眺めていたリクやつかさ、ブレイブスターとライトニングバードも唖然となったのだった。
数分後-
「…………」
最後の最後で必殺技が不発となり赤っ恥をかいてしまったサンフェニックスは、リクとブレイブスターから背を向ける形で体育座りとなり、どんよりと落ち込んでいた。
「文君、大丈夫だよ。ヒーローだって失敗はするよ」
『ピピィ~?』
「……………………」
落ち込むサンフェニックスをつかさとライトニングバードが励ますが、サンフェニックスは体育座りの姿勢で体を丸めながらどんよりと落ち込み続けていたのだった。
「う~ん……」
一方、『サンフェニックスの能力や技を一通り確認する』という当初の目的を果たせたリクは、ブレイブスター車体に埋め込まれているモニター画面を覗き込んでいた。
ブレイブスターのモニター画面上では、文弥からサンフェニックスへの変身から始まり、フェニックスドライバーからフェザーガンセイバーを取り出す場面、そして一連の必殺技を放つ映像が再生され、その一つ一つにブレイブスターが分析並びに解析して導きだした細かなデータが表示されていた。
「……どうだ?ブレイブスター?」
『う~ん……そうですね……』
モニター画面上の擬人化ブレイブスターは両手を組んでうんうんと唸りながら、再生されているサンフェニックスの映像とそのデータを解析した円フラグとしばらくにらめっこを続ける。
そして………
電子レンジを思わせるチーン!という音が周囲に響き渡った。
『……分析完了!マスターのスマートフォンにトレーニングメニューを送信します♪︎』
モニター画面上の擬人化ブレイブスターが笑顔で告げると同時に、リクのライダースーツの胸ポケットに入っているスマホがバイブする。
リクはスマホを取り出し、ブレイブスターから送られたサンフェニックスのトレーニングメニューに目を通す。
「……ん、よし。それじゃあ……」
リクはスマホをブレイブスターの車体に置き、未だに体育座りでいじけているサンフェニックスの方を向く。
そして……
「……シルバー・トランスフォーム!」
変身キーワードを叫び、シルバースレイヤーへと変身する。
「ほらっ!ヒーローがいつまでも小さな失敗でメソメソすんな!?」
「あわわわ!?」
シルバースレイヤーはサンフェニックスの首根っこを掴みあげ、サンフェニックスを無理やり立たせる。
サンフェニックスばかりでなく、横で見ていたつかさとライトニングバードも唖然となった。
「……よし、サンフェニックス。これから俺が、お前を一人前のヒーローになれる様、ビシバシ鍛え上げてやるからな!気合い入れろよ?」
「は、はい……」
「返事ははっきり大きい声で!!」
「は、はいっ!」
かくして、シルバースレイヤーによる陽光戦士サンフェニックスへのトレーニング(『しごき』とも言う)が、開始されたのである。
感想よろしくお願いいたします。




